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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-02 文芸部員と過ごす夏の日々
16/39

P.015【悲報】何名か欠席な件


〈悲報:同期たちギブアップ〉


 7月もいよいよ終盤、夏休みも三分の一を使い果たすという今日この頃。俺は電車に揺られて海水浴場最寄りの駅を目指している。


 通勤ラッシュ直後の電車ということもあって、人の姿は疎ら。俺はいとも容易く着席の権利を得た。しかしながら、その人々はほとんどが正装。白のTシャツ、迷彩短パンという俺の装いは明らかに周りから浮いていると言えよう。だからどうと言うことはないのだが。


 そして俺は改めて、今日のイベント–海へ行くということについて考え出した。まず何よりも......圧倒的女子比率に動揺を禁じ得ない。もちろん夏休み前に部長はじめ、部の女性陣からはもれなく快諾をいただいたのだからその比率に動揺するまでも無いと誰かから諭されればそこまで。


 しかしながらだ、文芸部女性陣は南原篤哉という部員が一人の思春期男子高校生であることを念頭に置いているのか。甚だ怪しい。俺の場合、変な気を起こして現実行動に移すという女の子の尊厳を汚すようなバカなマネはしない。俺は童貞だから!エロ本の中の世界じゃあるまいし。最悪でも、勝手に俺の理性がお亡くなりになって思考や行動が停止するだけで済むだろう。俺は童貞だから!


 ただし、俺が他の煩悩にまみれた思春期男子高校生、あるいは一般男性に置き換わったとしたら......海水浴イベントなど、タダでは済まないだろう!もし俺が獣のような男であったら、ということを女性陣は想定しているのか?していないとしたら......俺は大層文芸部女性陣のこれから先が不安である。


 もちろんそれは、俺を信頼しているということの裏返しだから大変喜ばしいことなのだろう。それは良いことだが、やはり彼女たちには気をつけてほしいと忠告したい。この長ったらしい思考回路こそ、童貞であるとか頭の硬い親父などと揶揄されそうであるが、とにかく気をつけてほしい。そう心の中で願うとしよう。




 話は変わって、そもそも論にはなるが、俺は海が苦手である。それは泳ぎが得意ではないからとか、海水浴が終わった後の後始末が面倒臭いからとか、そんな理由ではない。泳ぎは世の高校生の平均程度にはできる上、女の子と違って後始末もそれほど苦になるようなものでもないと思う。


 それでもやはり海が苦手なのは......陽だまりにいるような人間の巣窟だからである。女性比率問題はこの前のミーティングのときに一応解決したとて、こればかりは解決を見せることは無いだろう!そして今は、全国の学生絶賛夏休み中。海岸には集団を形成した学生フレンズや愛情を深め合う学生カップルたちが割拠することだろう。そんなことを思いやると......冷房で適温に保たれているはずの車内が冷凍庫のように感じられてくる。


 あれこれと考えていると、時間はかなり潰すことができるものの、ブドウ糖を使ってかなり疲れる。これから向かうのは海であるというのに、これはいけない。さながら考える人のように足を組んで熟考している姿、まわりに見られていないことを祈りたい。



 姿勢を考える人から通常モードに戻したところ、ポケットから振動が。マナーモード運転中、マイスマホである。何の通知かとスマホを手に取ってみれば、送られてきたのは荏舞からのメッセージだ。


『どやっ』


 その自信にあふれたメッセージとともに、水彩画の映った写真が添付されていた。俺が出かけてから、美術の課題を進めて終わらせたものを誇示しているのだろう。昨日線画を描いていたのは目にしたが、俺が家を出て1時間ほどで色塗りを終わらせたらしい。デジタルで描いているわけでもないのにこの作業の手早さ、さすがに感服だ。


 そして賞賛するべきはその作業の手早さだけに(とど)まらない。送られてきた絵は草原の上で目を瞑って風を感じている少女、という構図を取っている。キャンバスの中心に描かれる少女は、繊細なタッチの線で柔和な表情となっており、風に靡く長い髪も流れるように表現されている。おまけに、草本の風に揺れている様子も丁寧に描かれていて、臨場感を感じさせてくれる。............シスコン認定されても不平は言えないほど、俺はスマホの画面に食いついてしまった。


               『すげぇいいな』


 サムズアップのスタンプを添えて賞賛を荏舞に授ける。本当はこれだけでは俺の賞賛の気持ちは表し切れないが、思ったことを正直に長文で送り返しても『キモい』というレッテルを貼られそうであるから自重する。実の妹にゴミを見るような目では見られたくない。


 俺がメッセージを返信すると、すぐに妹から返信が返ってきた。一仕事終わって、スマホいじりなど薄着でダラけているのが目に見える。腹を冷やさなければいいが。


『そろそろついたー?』


          

            『まだ、そろそろ着く』


『へぇ』

『ひーちゃんのナンパ気をつけてねー』

『アツとひーくんで守るのぞー!』


                   『うぃ』


 荏舞の言うひーくんとは弥のことである。そう、荏舞には幼なじみ3人衆で海に行くと伝えたのである。嘘を伝えるのは良くないだろうが......これこそ妹に言えば本気で引かれてしまいそうで言うことが憚られた。脳内で、嘘を吐きかけた荏舞とだしに使った弥に陳謝。


 そんな最中(さなか)、別の通知が来た。噂の光からだ。


『私、発熱、ダウン、伝達、任せた』


 えっ......


             『ひ、光ィィィィ!』


 まるでゾンビになった直後のように光は単語文を送ってきた。直後には38.5℃を示す体温計の写真も送られてきた。事の深刻さを鑑みて某ヘビの傭兵の意識を確かめるかのごとく光を文面で呼んでみたが、もしかしなくとも光は煙たがったことだろう。


                 『任しとけ』

              『ちゃんと休めよ』


 真面目に自愛を促すメッセージも送っておく。煙たがられたままではよろしくない。


 すると、引き続きメッセージ通知が。今度はまりあからである。こうも通知が続くと嫌な予感が全身に駆け巡る......


『篤哉くんごめんね、私風邪ひいちゃった.....

他のみんなにお休みすること伝えてもらっていいかな?』


                  『マジか』

    『わかった、伝えるからしっかり休んで』


 光とは違い、俺は始めから淡々とメッセージを送った。まりあには確実煙たがられたくないのと、不用意なメッセージを送信してまりあのマゾヒズム溢れるパンドラの箱を開けたくないからだ。もちろん本気で心配しているからでもある、のだが。


 


 さて............いよいよ当初予想していたよりも芳しくない状況になってきた。男1人女子5人の海水浴、世間一般にはとても聞こえが悪いことだろう。それが今、光とまりあの欠席が残念ながら確定してしまったため女子3人ということになる。比率だけ見れば俺の心理的負担は軽減されたと言える。


 だがしかし!光とまりあは俺の同期!その2人が欠席ということは、俺以外に参加するのは先輩たちだけである。そのシチュエーション、5月の先輩たちとの邂逅を思い出す。これはもう、ある意味精神を擦り減らすことになりそうだ......


 人目を気にすることもなく模範解答のようなフォームで頭を抱えようとも、電車はひたすらに走っていく。社会も人も、レ・ミゼラブル......



〈続悲報〉


 頭を抱えているうち、ようやく目的地に到着。さすがに俺が乗った時間帯と比べて乗客は多くなっていた。読み通り、集団の学生や学生カップルなどいくつか見受けられ、胃が痛い。


 しかし胃の痛みの主要因は先輩たちしかいないということだ。ざわつく車両から降り、階段を上がって集合場所の駅の入り口に向かう。そんな間にも胃痛は止まらず、むしろ俺の精神に胃痛というプレッシャーがにじり寄るようである。


「あっ!篤哉く〜ん!」


 予定通り駅の入り口近くに楠見先輩と椛島先輩が立っていた。楠見先輩の方は俺が近づくのに気づくとかなり大きな声で俺を呼びかけた。元気そうでいらっしゃるのは何よりなのだが、人目につくから正直言って控えてほしい。顔を背けたくなる。


「おはようございます。」


 2人のもとにたどり着くと、今度は椛島先輩からの口撃。


「遅いじゃないか南原。」


「遅いって、集合時刻の15分前ですよ?」


「女性を待たせたらいくら間に合っていようと遅刻。覚えておいた方がいいぞ南原。」


「んな理不尽な!?」


 一理あるようなないような、そんな理屈を椛島先輩から聞かせられる。いや自明に一理ないだろう。あまりにも先輩に従順にすぎる場面が多いことで納得しかけた。


「そうだ、さっき光とまりあから連絡があって、2人とも体調不良で休むそうです。」


「あらぁ〜......」


「そいつはとても残念だな......」


 欠席の事実を伝えると、2人は明らかに口惜しそうな様子となった。参加人数が減るのだから当然ではあるが。


「篤哉くん実はね、梨子先輩も休みなのよね〜......」


「ふぁっ?!」


 まるでネット民ようなリアクションになってしまう。目をかっ開いて。


 梨子先輩、つまりは部長だが、彼女も休み。屈指のクセの強さを誇る2年生をひっくるめて、部をまとめる存在が休み。




 これは......控えめに言って詰みではなかろうか?




 燦々と輝く青空の下、魑魅魍魎と言っても過言ではない2年生ズを相手する(される)ということを考えたら、別の意味で汗が止まらなくなってきた。

こんなこと現実にありませんが、わちゃわちゃ感が伝わればいいなと。


☆☆お読みいただきありがとうございます。ブックマーク・評価などよろしくお願いします!☆☆

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