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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-02 文芸部員と過ごす夏の日々
14/39

P.013 ツイてないある夏の朝


〈平穏な朝でありたかったと容疑者は〉


 俺は、朝の寝起きというのはそれほど得意ではない。自分の意志に反して決まった時間にベッドから引き剥がされること......とても不愉快で、その晩の睡眠の質によらずご機嫌斜めになる。そんな自信がある。


 おまけに暑い。7月の朝はもう昼と同じくらいに体感温度は上がっているというのに、エアコンは3時間タイマーで切れる設定。これは起床嫌いをしてもおかしくはないだろうッ!


 体勢をあれこれ変えて起床と熱さに反抗していると、妹という特殊部隊が突入してくる。


「起きてー。」


「起きたら負けかなって思ってる......」


「どこのニートですかー。ほーらはーやくー。」


 夕方は全くもって妹の方がだらしなくなってしまうが、朝はこうして、妹の助力を得ないと起き上がれないくらいには俺は要介護者になってしまう。


 床から起き上がってもしばらくは意識が朦朧としたままである。


「あつ......」


「あつはエマのお兄さんだよー。」


「そっちじゃないっての......」


 荏舞もだんだんと楽しくなってくるのか俺の言動に揚げ足を取るようになる。意識がハッキリとしないからそれにおもしろおかしく返すことは叶わないが。


「ほらほら、下行ってご飯にしよ、アツー。」


 荏舞は未だベッドに気が向いている俺を扉の方に回れ右をさせては背中を押して歩行を促そうとする。要介護者というよりは、妹のスネをかじって生きているクズな男と表した方が正しいのかもしれない。というか正しい。


「今日の朝は政哉さん母さんどちらかねぇ......」


「お母さんだよー。残念だったねー。」


「オージーザス......」


 父母ともに、夜の帰りが遅いときはそれなりの頻度であるが、朝の出かけはいつも早い。ほぼ1年365日だ。どんなブラック企業なんだとさすがに身を案じてしまう。


 しかしそんなことよりも大問題なのはッ!作り置いてある朝食が父母どちらの手によって作られたものであるということだ!これによって朝が弱い人間の1日の計が良くも悪くにも左右されるッ!


 そして今朝の食事は母の手によるもの。なんで日だッ!母が作る日など圧倒的に少ないのに!どうして母の料理をそれほどまでに嫌うのか?そんな理由は大体決まっているだろうッ!


「ベッドに戻りまぁす。」


「ダメー。さっ、下に行くー!」


 絶望感からまたも回れ右をしてしまった。が、荏舞はそれを許すはずもなく、摩擦係数大きめに俺を引き止める。


 体格だけを除いたらどちらが年長者か分からないきょうだいの朝は、こうして始まるのである。





「じゃあな荏舞、気をつけろよ。」


「さっきまで危なっかしいのはどっちだったかなー。」


「うっさい......行くからな。」


「はーい、気をつけてー。」


 言い合いもほどほどに、それぞれ別手段逆方向へ。兄は自転車、かたや徒歩といったところだ。


 さすがにもう目は醒めた。だが、やはり暑い。自転車ではもろに太陽光を受けるからなおさらだ。これから学校までの30分程度、お日様とランデブーだ。今朝の食事の後味も相まって、なんだか今日1日は何もかもうまくいきそうには思えない。1日の計が食事にあると考えているが、本当に間違いでないと不特定多数に推していきたい。


 そして、今日の第一赤信号に引っかかる。加えて言うなら、変わらずの赤信号だ。早速ツイてない。変わらずの赤信号と変わらずの日差しでよりイライラは募っていく。


「おはよう篤哉。」


「あぁ?なんだ、光か。おはよう。」


「何よいきなり怒って。私なんかした?」


「いやすまんすまん、あまりにも暑さと飯まずさでイライラしていた。」


「大丈夫?」


「多分な......」


 偶然家を出る時間帯が同じだったようで、信号待ちのところを光と落ち合った。光に心配されてしまうとは、いよいよ俺の症状も末期らしい。というか、何も知らぬ光に八つ当たりしてしまったことが後になって大層悔やまれる。心中で改めて謝罪を。


 そして長い長い信号待ちから解放されたのち、俺と光は他愛もない話をしながら自転車を走らせた。信号待ちまでは1人でいたからじわじわと溜まるイライラを他のエネルギーに変換できず光に暴発させてしまったが、今は会話というエネルギー変換装置である程度落ち着いている。


「光さんは数学のテスト返ってきたかね?」


「返ってきたわよ。」


「点数までセットだぞ。」


「えぇ......まぁ、平均の半分くらいってことだけ。」


「ほう、ギリギリ赤点回避か。やはり光は断崖絶壁で生きるのが得意だな。」


「潰すわよ?」


「何をだ!」


 一部俺のおふざけと光の恫喝とが混ざりながら、互いの自転車は進んでいく。気づけば最初の時以来赤信号に引っかかっていない。やはり、どのような形であれイライラを別の何かに変換して吐き出すものーつまり話し相手は必要だなと、ある夏の朝、俺は感慨していた。



 暑さと飯まずさで生じた今日に対する不安感がとりあえず拭い去られたころ、学校に着いた。


 自転車を駐輪場に早々にしまい、ようやく直射日光ともおさらばだ。


「まりあ!おはよう!」


「おはようさん。」


 生徒玄関を上がろうとすると、まりあを発見。朝からまりあを発見できるとは幸せ......いや待てよ。


「あっ、2人とも一緒に来てたんだ。おはよう。」


 残念ながら、俺にとってまりあに偶然会えるというのはそれほど幸運ではない。むしろツイてないまであるのではないか......いつかの記憶が一瞬のうちに蘇って、そんなことを考えついた。


 躊躇いにも似た思考を巡らせていると......


「わっ!」


 段差につまづいた。俺たちのもとにまりあも近づいていたから、よろけた俺はまりあに全体重をかけることになってしまいそうでー


「ひゃあ?!」


「ちょっ!......」


 盛大に転んでまたまりあに粗相することは避けられた。だが、その代わり大問題。どうしてこうなったかは分からないが、俺の右手には小ぶりながらもマシュマロのような吸い付くような柔らかさを持つ物体がヒット。







これは............やってしまった南原選手。


「ご、ごめん。」


 ごめんで済んだら警察は要らない。そんな声が聞こえても不思議でない。実際、某賭博漫画のざわ......にも引けを取らない、目撃した多数の生徒ざわめきが耳に入ってくる。オプションで、視線も痛い。



 やっぱり今日は、ツイてないらしい。




「本当にごめん、まりあ......」


「う、ううん。不可抗力だもん、しょうがないよ、うん......」


 まりあは真っ赤に赤面しながらも、あくまで俺の特大粗相を許した。こうも弱々しく許されると、こちらの罪の意識がさらに増大してくる気分だ。


 そんなとき、背後から計り知れぬ負のオーラが。その正体は確認するまでもなく......


「オラァ!」


「あ"ぁ"」


 俺の身体は、光の回し蹴りによっていとも容易く3時の方向に飛ばされた。女の子の防壁を不可抗力だとしても公共の場で触れてしまうことに対する罰とはこのことかと、リアルな痛みを伴って実感させられる。



......痛えよぉ



「アンタ公衆の面前でアレとはいい度胸ねぇ?」


「ですから光さんアレは不慮の事故でして......というかそっちこそ公衆の面前で堂々とケツ踏むのやめてぇ!」


 飛ばされた弾みでうつ伏せになった俺は、光に尻を、力の限り踏まれる。光の表情は見えていないが......おそらくゴミを見るような視線で俺を踏みつけていることだろう。そしてまたもや、不特定多数のざわめきと蔑視が痛い............完全にドM野郎にしか見られていない!



「このど変態!死ね!」


「なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇゴフッ......」


 腹の辺りに強い打撃を感じたのを最後に、俺は意識が無くなったという。ほんと、世界一ランニングが似合う、世界一ツイてない男に弟子入りできそうなほど、今日の俺はツイていないようだった............



 その後3日ぐらいは、俺には大衆で女の子の胸を揉んだ変態&女の子に踏まれて悦ぶどマゾ野郎の二つ名がついていたそうな。いや前者不可抗力であるし後者は悦んでねぇしなぁ!もっと平穏な朝がなぁ!............

手前、女の子の膨らみというものは体感したことがありませんで、本文中のその辺りの記載には責任を負わないでやんす(予防線のようななにか)


ということでぐだぐたな新章開始!引き続きよろしくお願いします!


☆☆お読みいただきありがとうございます。ブックマーク・お気に入り登録よろしくお願いします!☆☆


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