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ハーレムだがノットイージーモードの文芸部!  作者: なしあじ
Chapter-01 出会いとvs.生徒会長
13/39

P.012 ノットイージーな部活ライフを始めよう


〈運命分つ日〉


 部が存続するか否か。それが決まってしまう日がついにやって来た。


 朝から俺は分かりやすく落ち着きが無かった。自分の主観からでもでも定量的に評価できる。


 自分の発言のために文芸部は潰されてしまうかもしれない。そう思うと責任感が生まれて、最初はやる気の起こらなかった部活もやらざるを得ないのだと感じるようになった。そして1ヶ月半経った今、メンバーやあのオフィスなどに愛着を持っている自分が存在している。そうなれば潰すことなどさせない。強い感情が再燃していた。


「篤哉?そんな慌ててどこ行くんだよ?」


「ちょっと部活でな!机に脱ぎ捨てた体操服整理しといてくれ!」


「んな横暴なぁ!」


 4時限目体育からの昼休み。昼休みの時間帯に結果が明らかになるからメンバー一同で確認するということでいち早く結果を知りたいと気が急いている。着替えも早々に済ませ、その後始末も弥に無理矢理に任せて、教室を飛び出る。


 オフィス、あれほどまでに校内の僻地にあることが恨めしい。ただでさえ最上階に1年生フロアがあるというのに、そこから反対の方角にオフィスがあることで学校内であるはずなのに移動に時間がかかってしまう。焦らされるような感覚で、緊張感や歩く速さが増していくのがわかる。



 そうして雑感を覚えている間に、到着。オフィスの扉を強く開け放つ。


「先生?」


「おう南原。」


 日向がロクに当たらず暗がりとなっているオフィスにいたのは同期たちでも、はたまた先輩たちでもなく、寺矢先生(顧問)だった。デスクの上に茶封筒を何通か置いていたようだった。


「結果がもう郵送で来ていたからそこに置いておくわ。みんなで見るといい。」


「はい。」


「それと......お疲れ様。他の部員にもそう伝えろ。」


「それってどういう」


「じゃあ、次の授業遅れんなよ!」


 先生はすれ違いざまに耳元でそう語りかけた。神妙な面持ちの先生が放つ『お疲れ様』の意味するところとは何であるのか。茶封筒の中の結果を見てみないことにはわからない。


 茶封筒は3枚。おそらく散文俳句短歌のセクション別で結果が封入されているのだろう。そして俺以外のメンバーはまだやって来そうにもない。みんなで見るといい、とは言われたが、待ちきれない。3枚とも開けて早く確認したい。そんな幼い子供のような衝動に駆られていた。


 自制するか否かを決める前に、俺の手と足は無意識に動いた。デスクに歩み寄って、封筒を手に取って口を裂く。あまりにも心の余裕が足りなくて、勢いのあまり中身を傷つけそうになる。


「っしょっと......」


 全ての封筒を開いた。雑に開いたために切り口は見るに耐えないが。


 そして、結果の掲載されている資料を取り出す。意外にも、1枚のA4紙に全て載っていた。その1枚の紙を俺は恐れながら丁寧に見渡す。


「これって............」


 俺の見た結果は、信じたいような受け入れたくないような、そんな二律背反の感情を生んだ。



〈再びの直接対峙〉


 昼休み、そして午後の授業も終了し放課後。またしてもオフィスにてミーティングだ。


 さっきとは違って、今度は全員早いうちに集まった。それはー生徒会長・眞名田琳音を迎え撃つためだ。彼女が来るまで、俺たちは意識を共有しながらも、各々の定位置でそのときを静かに待つ。


 俺たちはすでに結果を知っている。あとは、それを会長に叩きつけてやるのみ。


 

 16時半、約束の時刻通りに会長はやって来た。晴れやかとも険しいとも取れない表情を会長は浮かべていた。


「さぁ、結果は出ているのでしょう?早く教えてちょうだい。」


 堂々と歩いてきてはオフィスのソファにわざとらしく座る。会長とはいえどうしてこうも傲慢でいられるのだろうかと、憤りを覚えてしまう。部長以外のメンバーも、物言いたげである。会長は表情は中立でも、それ以外では俺らの負けを確信しているということを暗に示しているというのか。


「存続の条件は各部門で最低1名以上入賞、だったね?」


「そうね。それで達成されなかったら、そういうこと。」


「分かっている。それでは、お伝えしよう。」


 傲慢な会長を前にしても、部長はいつものペースを崩していない。普通では手にできない強さだ。


 そして部長は、腹を据えて読み上げを始める。


「まず俳句短歌だが、それぞれ......1名ずつ入賞している。俳句佳作、2年3組、楠見風芽。短歌佳作、1年5組、本荘光。まずはここまでよろしいか。」


「えぇ。問題は次よ。散文入賞は他よりもハードルが高いと聞いているけれど、大丈夫かしら。」


 今にも会長のもとに飛びかかりそうになる。ここに来て調子が上がってきているのか、煽りがより人の神経を逆撫でするものに変化している。


 しかし、俺が飛びかかるまでもない。少し酷なところもあるが......結果が全てを導いてくれているからだ!




「では散文入賞だ。入賞は............5名だ。」


「なっ。」


 会長は驚きのあまり声を出し損ねている。無理はない。あまりにも圧倒的なのだから!


「佳作、2年3組楠見風芽、2年1組椛島咲柚、1年5組石川まりあ、1年5組本荘光。そして、優秀賞、1年1組南原篤哉。以上だ。」


 部長が読み上げを終えると、メンバー一同、最初に結果を知った時のように喜びの感情を露わにした。各部門で入賞者を出せた上、散文入賞が5名というのは会長にダメージを与えるためには十分だろう。一方驚きと動揺で、会長は顔を歪めている。


 もちろん、部長の名前が無いことは信じられないが......


「これで存続の条件は満たしたはずだ。約束通り、解散は無しだ。」


「廃部の書類にサインする気満々だったと思うけど無駄だったね〜」


 その会長に、楠見先輩と椛島先輩が畳み掛ける。1ヶ月半前、2人も会長に散々に言われていた。そのフラストレーションをそっくりそのままの勢いで会長に返したような形だ。2人に見下されている会長も、さすがにたじろいでいる。


 耐えかねたのか、会長は速度をつけて立ち上がった。中立な表情だった会長も、今は負けを突きつけられて狂ったような顔立ちをしている。


「どうやら私の負け、それは認めるわ。でも............部長が入賞できないような部活動なんて、大成しないわ!残念だったわね下級生!部長がとんだ無能で!」


「おめぇなぁ!」


 ついに我慢ならなくなった。会長に飛びかかろうする今の俺は、側から見ればチンピラだ。


「篤哉抑えなさい!」


「篤哉くん!」


 力づくで光やまりあが止めようとする。だが、その力は振り解くことは容易。俺の暴走は止められない。


「南原君。」


 そんな状況を鎮めたのは部長だった。力づくで攻めることもなく、腕を伸ばして俺の正面に添えて、一言かけるのみだった。


 とりあえずの収拾を部長が成功させたのち、会長のもとに歩み寄って、目を合わせ向き合った。


「な、なによ。無能と言われるが気に食わない?だってそうじゃない!」


「私は、別に何を言われようと構わない。君の言う通り能力がないことが証明されているからね。だけれど、今この時間問題にしているのは私のことじゃない。部が存続できるか否かだ。自分が生徒会の長であるに足るという自覚がある者は、今ある問題というものをクリティカルに見ることができる。そうだろう?」


「くっ......」


 あくまで正論を説く部長を前に、会長の勢いは完全に削がれている。何も言い出せなくなって会長は、部長から目を逸らして退室のために歩き出した。その姿はまるで生徒会長ではない。






「まだ部屋を出ないでいただきましょうか眞名田会長。」





 会長をオフィスを出ようとしたその瞬間、入り口から男の声が響く。俺よりも身長が高く、眼鏡姿をした美形の男子。学年カラーから2年生ということは分かる。


 同期たちはその男に対して怪訝なものを見る視線を送る。しかし、なぜか先輩たちは顔色を変えない。


「悠李君、どうしたのかしら?」


「会長、単刀直入に申し上げます。あなたは部活財政改革を利用して、不正な選挙活動を行った。そうですね。」


 男の口から告げられた内容は、とても信じ難いことだった。


 男は間髪入れず発言を続ける。


「部活財政改革によって浮いた予算をあなたと関係の深い部に融通する見返りに、融通を受けた部全体で生徒会選挙におけるあなたへの投票を約束する。いくつかの部活動へヒアリングを行った結果、判明しました。会長、これは選挙の大原則の著しく乱している。こんなことあってはならない。」


 男は半分呆れた口調で会長を糾弾する。会長はさらに憔悴している。


「なにを、言っているの?星谷君......星谷?!」


 会長はそう唱えると部長の方を見やる。会長から告げられた苗字を耳にして俺も、何か確信を抱いた。


「そう、生徒会副会長、星谷 悠李(ゆうり)は私の弟だ。」


「......姉から仮説を聞いたときにはとても信じられなかったし調べる気にもならなかった。しかし、私も生徒会役員の端くれ。念のために調査してみたが......現実だった。」


 男と部長がきょうだいであるという前提があれば、確かに似ていると見ることもできる。だけれど、さすがに驚きを隠せない。現在進行形で会長を糾弾している副会長が部長の弟で、そのきっかけを作ったのが部長であるということを。


 学校に1年長く在籍していれば部長と副会長の血縁関係も預かり知るところとなる。だから先輩たちは顔色を変えなかったのかと、今更ながら合点がいく。


「会長になるためにあなたがなぜそのような不正を働いたのか。そんなことは今さら問わない。しかし、あなたは一つ見落としをしている。」


 副会長は、まっすぐに会長を見据える。声色も糾弾の色を強める。


「あなたの考えは、部活財政改革で浮いた予算を他の部に上乗せする形で融通するというものでしょう。だが、生徒会細則によれば余剰予算は学校生活に関わる優先事項に充当されるとある。つまり、あなたの考えはハナから破綻しているんですよ。ヒアリングで証言を得られたのも、この事実を各部に伝えたからです。」


「そんな......」


 会長はよろけて、壁に寄りかかる。その口ぶりと表情は、自分の罪を認めたと解釈して良いだろう。


 そんな弱りきった会長に、副会長は飽きもせず冷たく追い討ちをかける。


「先程各委員会の毎月1日の定例会で、あなたの罷免決議を可決しました。明日生徒会本部での罷免決議の結果次第にはなりますが、おそらく、可決されるでしょう。そうすれば会長としてのあなたの地位は無くなる。覚悟してください。」


 副会長の語り口に情感というものは一切ない。ルールを外れた人間を厳しく追及する声だ。顔つきもまた然り。


 会長は一切の言葉を聞いて、壁から再び自立した。足元をふらつかせながら向かったのはー部長のもとだった。


「あなた、弟まで使って、私を貶めたいわけ!?そんなの卑怯よ!」


 今の会長は何を言っても負け惜しみに過ぎない。それは頭では分別がつく。それでも、会長の発言がいちいち癪に触ってならない。


 またキレかかりそうになるほど、激情に襲われた。だけれども、これもー俺が出るまでもなかった。




大気を突き抜けていく平手打ちの音がオフィスに響き渡った。





「卑怯なのはどちらだッ!ルールを外れてまで私たちの感情表現の場を奪おうとした君の方だろうッ!地位を失うなど当然の報いだ!」




 平手打ちに続いたのは、部長の心からの、本気の怒りだった。叫びにも近いその怒りもまた、オフィスに響き渡る。かつてこれほどまでの部長の激情を目にしたことがなかった。俺はもちろん、同期や先輩たちも驚きを隠せない。


 そして部長の怒りを生身で受けた会長といえば............今度こそ本当に言葉を失っていた。部長から怒声を浴びせられるとは思っていなかったのか、魂を抜かれたような様子だ。正直、いい気味で、とても清々しい!


「っ......!」


 全てから放たれる圧に屈したのか、いよいよ会長はオフィスを飛び出していった。その姿はさながら公正の円卓から追放された悪人のようである......


 副会長も俺たちに向かって一礼したのち退室する。しかし、姉は呼び止める。


「悠李、私の話を聞いてくれたようだね。救ってくれて、ありがとう。」


 立ち止まった副会長に、部長は持ち前の冷静さを取り戻して礼を告げた。弟に対しても、さほど調子は変わらないらしい。


「勘違いをしないでくれ。俺は不正が許せなくて調べ追及したまで。俺が証拠をあげられなかったりあなた達が会長の示した実績を獲得できていなかったらどんな形であれこの部は終わっていた。」


「分かっているよ。だけど、本当にありがとう。恩に着るよ。」


 その後は部長に答えることもなく、颯爽と副会長は去っていった。その瞬間が、戦いの本当に終末だと感じられた。




「ん〜!梨子せんぱ〜い!」


 最初に無言を打ち破ったのは楠見先輩だった。はじめの日に俺が受けたハグを今日は部長がモロに受けている。


「ありがとう楠見くん。ちょっと苦しいが......まぁいいだろう。」


「部長、本当にかっこよかった。2人もそうだろう?」


「はい!会長にビシッと言えるなんてそうそうできることじゃありませんよ!」


「私もすごいと思います。胸が気持ちよくなる気分でしたよ。」


「はは、そんなに言われると照れてしまうな。」


 続く椛島先輩、光、まりあも感動の弁を述べる。あの瞬間は誰が見ても爽快感を覚えることだろう。無論、俺も例外ではない。


 俺も部長のもとへと近づく。


「まさかあんな展開になるとは思ってもみませんでした。」


「私もだよ。悠李、副会長も言っていたがまさか私の抱いた疑念を陰ながら追及しているとは思わなかったからね。彼にも感謝だ。」


 弟に冷たくあしらわれても心を乱すことなく、むしろ感謝の意を捧げようとする。さすがだな。この感以外には思い浮かぶことがない。


「ただ、やはり私は他人の威光を借りなければ何かを為せないことも分かったがね。それに実績にも貢献することができず、申し訳ない。」

 

 先輩はいつか俺と2人きりだったときのように、またもやしょげてしまう。よほど客観的な結果として示されたことにショックを隠せないのだろう。


 だけれど、絶対的に部長の感情は間違いだ。そんな部長にかけるべき言葉はたった一つ。


「部長、前にも言いましたがこんな結果がなんです。文学は多様性の海なんですよ。今回はたまたま選者のものさしと部長の特徴が合致しなかっただけ。そうでしょう?」


「......あぁ、確かにそうだね。」


「それに、冷静に状況判断したり時局を味方につけて行動したり俺たちをまとめあげたり、その力は間違いなく部長が自力で手にしたものです。他人の威光だなんてことは全くありません。会長にキレかかろうとした俺を止められたのも部長ですし......」


「全く、君は人をおだてるのが上手なことだね。」


「おだてるだなんて、俺は感じたことをそのまま言っただけです。」


 俺はほんの少しだけ、ムキになって答える。全ては部長に明るくなってもらいたいがためだ。


「そうかそうか、ありがとうね。文学は多様性の海、忘れていないさ。」


 部長は冗談まじりで笑って俺をあしらう。おまけに俺のクサイ名言も繰り返しているから恥ずかしい。ただ......狙い通り部長が明るくなっているから許せてしまう。笑顔もいつもとは違う子供のような崩れた笑顔だ。部長の新たな一面を見たような気分だ。


 俺はもしかしたら、この笑顔に弱いのかもしれない。そんな気がした。




「篤哉、前にも言いましたがって、何のことよ?」


「私も私も、文学は多様性の海ってどういうこと篤哉くん?」


「えっ、まぁ、それは別にいいじゃないか。」


「私たちだって部の一員なんだ。教えるんだな!」


「うぐぅ!」


「隠し事はいけないぞ〜篤哉く〜ん!」


「むぐぅ!」


 同期2人の質問サンドイッチや、楠見先輩の豊満なバストと椛島先輩の愛のこもっているような首掴みによる物理的サンドイッチ。文字通り四方を囲まれた。これは............なかなか生き抜くにはイージーモードではないな。


「まぁまぁ、君たちその辺りにしてあげるんだ。とりあえず、祝勝会とまだやっていなかった1年生の歓迎会を兼ねて、プチ宴会といこう!」


「「「「はーい!」」」」


「ぎょいぃ......」


 かくして、俺の文芸部員としての学校生活は本格的に幕を開けた。ハーレムならではの厄介事であったり、その他バリエーション豊かな面倒に巻き込まれるかもしれないことを考えると少し億劫にもなるが......それでも仲間たちと、気楽にやっていこうと思う。


 


 



ーノットイージーな部活ライフを、始めよう。

ただただ部長の見せ場の回、よかったでしょう?


☆☆お読みいただきありがとうございます。ブックマーク・お気に入り登録よろしくお願いします!☆☆

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