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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第六章 獣人達の王

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第94話 迫り来る者達

 アンナ達は、アストリオン王国の王城にて待機していた。もちろん、狼魔団との戦いに備えるためである。


「それで、獣王について、どれくらい知っているの?」


 狼魔団に現れた新たなる将、獣王それに対抗するべく、アンナ達は話し合っていた。

 アンナは、獣王のことを知っているというガルスとツヴァイに対して、そう問いかける。


「正直に言って、俺は噂くらいしか聞いたことがない……だが、その噂ですら底知れぬ強さを持っているとわかる程だ」


 アンナの質問に、ツヴァイはそう答えた。

 やはり、獣王はかなりの実力者であるようだ。


「ガルス、お前はどうだ? 俺以上に知っていることがあるのではないか?」

「……ああ、俺は奴の戦いを、何度か見たことがある」


 ツヴァイの言葉に、ガルスはゆっくりと口を開いた。

 どうやら、ガルスはより詳しく獣王のことを知っているようだ。

 アンナは、詳しく聞いてみることにする。


「その時の獣王は、どんな戦いをしていたの?」

「奴は、どんな攻撃をも受け付けず、その肉体のみで、千にも及ぶ敵を一人で蹴散らしていた……」

「やっぱり、恐ろしい力を持っているんだね……」


 ガルスの言葉からも、獣王の恐ろしさは確認できた。

 そんな相手と、アンナ達は戦わなければならないのだ。





 アンナ達が待機していると、部屋の戸が叩かれる。

 戸を開けてみると、兵士が立っていた。何か、慌てているように見える。


「失礼します、皆さん、狼魔団に動きがありました!」


 兵士は、戸が開くなり、すぐに口を開いた。狼魔団が動き始めたことを、伝えに来たようだ。

 アンナは、気を引き締めながら、兵士に問い掛ける。


「狼魔団に? 一体何が?」

「はい、狼魔団が、北から向かってきているようです!」


 狼魔団は、北からこの王都に向かって来ているらしい。

 いよいよ、狼魔団との戦いが始まるようだ。


「いや、待て……」


 しかし、そこでガルスが声をあげる。


「その集団は、監視できているのか?」

「は、はい! 遠巻きからではありますが、確認できています」

「なら、そこに獣王はいるか?」

「い、いえ、獣王は確認できておりません」


 ガルスの質問は、件の獣王がそこにいるのかという確認であった。

 兵士曰く、獣王はいないようである。


「ガルス、どうしたの?」


 ガルスが顎に手を当て考え始めたため、アンナは問い掛けた。

 だが、アンナもガルスが何を考えているかは、大体わかっていた。

 獣王が、その狼魔団の中にいないというのは、少し違和感のあることだ。恐らく、ガルスはそれを考えているのだろうと、アンナは思った。


「ああ、獣王がどこにいるかを考えていてな……」

「やっぱりそうか……」


 アンナの予想通り、ガルスは獣王がどこにいるかを考えているようだ。


「ガルス、獣王の調査を任せてもいい?」

「何?」

「狼魔団の集団も、放ってはおけない。だけど、獣王のことも気になる。だから、そうするべきだと思ってね」


 アンナは少し考えた結果、そうすることにした。

 どちらも対策するには、それが一番だと思ったのだ。


「……わかった。そちらは、俺に任せておけ」


 ガルスも、その提案を受け入れたため、やるべきことが決まる。

 こうして、アンナ達は動き始めるのだった。





 アンナ達は、王都の北側に構えていた。

 ガルス以外の全員が、とりあえずこちらに来ている。獣王は、動いているかどうかわからなかったため、全力はこちらに集中させることになったのだ。


「狼魔団の動きは?」

「はい、ゆっくりとこちらに向かっているようです!」


 アンナが、周囲にいる兵士に問い掛けてみるとそう言ってくる。

 やはり、狼魔団はこちらに向かってきているようだ。

 ならば、獣王がどこにいるのか、それは気になることである。

 

「勇者様!」


 アンナがそんなことを考えていると、違う兵士が話しかけてきた。

 兵士から話しかけられるということは珍しい。そういう時は、決まって何かあった時である。


「何か、あったんですか?」

「ガルスさんが、獣王を発見したそうです」

「なっ……!」


 兵士の言葉に、アンナは驚いた。

 まさか、こんなにも早く獣王が発見されるとは、思っていなかったのだ。

 アンナは、兵士に向かって問い掛ける。


「獣王は、一体どこに?」

「それが……王都の南、正面から向かってきているようなんです」


 どうやら、獣王は町の正面から向かってきているようだ。元々、隠れるという気はなかったらしい。


「それで、獣王側の兵は?」

「い、いえ、獣王は一人であるそうです」

「一人……?」


 さらに、獣王はたった一人で来ているようだ。

 兵も連れず、単独行動とは、余程自身の実力を信じているのだろう。

 しかし、その実力は色々な情報のよって、保証されている。故に、それも間違いではないのだろう。


「皆!」


 アンナは話を聞き、仲間達に話しかけた。

 ある決断を、伝えるためである。


「皆は獣王の方に向かって欲しい」

「お姉ちゃん!? それって!?」

「こっちは、狼魔将ウォーレンスくらいしか戦力がないはずだ。だから、向こうの方に戦力を集中させたい」

「……なるほど、そういうことか」

「もし、獣王が大したことなかったなら、すぐにこっちに戻ってきてくれたらいい」


 アンナの提案は、皆も納得できるものだった。

 獣王が強かろうが弱かろうが、その提案の方が、効率が良さそうなのだ。


「わかった、お姉ちゃん、無事でね」

「うん、カルーナ。皆も、きっと無事で」


 こうして、アンナ以外の全員が、獣王の元へと向かうことになったのだった。

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