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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第五章 水面に映るもの

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第83話 分身の弱点

 アンナ達は、水魔将フロウと対峙している。

 フロウの水の鏡(アクア・ミラー)によって、アンナ達は自分自身と同じ力を持つ分身と戦うことになっていた。

 自分自身との戦いに翻弄されるカルーナやガルスだったが、アンナだけは違い、分身を圧倒したのだ。


「次は……お前だ」


 アンナは、崩れ落ちた自分の分身に見向きもせず、フロウの本体を守っている分身に歩み寄る。


「……なんという成長速度だ」

「そりゃあ、どうも……」

「拙者の水の鏡(アクア・ミラー)を破ったのは、お前が初めてだ。しかし、いいのか? 仲間の元に行かなくて?」


 近寄ってくるアンナに対して、フロウがそんなことを聞いてきた。

 しかし、アンナはそんなことを気にしてはいない。


「私の仲間なら、なんとかするさ……それより、お前をなんとかしないといけないんだ」

「ほう……?」

「最後の分身が、どの道倒さなければならないからな……」


 アンナは、カルーナやガルスを手伝うより、最後の分身を倒すことを優先することにした。

 どちらかに加勢しても、最後の分身が加勢してくるのは明白だ。そのため、アンナは自ら向かっていくことにしたのだ。その方が、本体にも接近できるため、好都合だった。


「……仕方ないか。少しでも、消耗しているなら、拙者にも勝機があるだろう」

「弱気だな……」


 分身のフロウは、アンナ相手に構えをとる。

 アンナも聖剣を握りしめ、分身フロウに向かっていく。


十字斬り(クロス・スラッシュ)!」

「むう!」


 アンナは、まず牽制として、十字の斬撃を放った。

 分身フロウは、後ろに本体がいることを考慮してか、動かない。

 アンナの斬撃が、分身に当たり、そこから水が噴き出してくる。


「くっ……! なんという……力」

「やはり、そこからは動けないようだな……」

「本体を攻撃される訳には、いかないのでね……」

「なら、これで終わりだ……」


 フロウの返答は、アンナの予想した通りのものだった。

 そのため、アンナは大きく剣を振りかぶり、勝負を決めることにする。


「それはどうかな?」

「何?」


 しかし、そこで分身フロウの口が大きく歪んだ。

 アンナは、何かがくることを直感的に理解する。


「はっ!?」


 その直後、アンナは気づく。先程、分身フロウの体から飛んだ水の形が変化していることに。


「喰らうがいい……水魔奥義!」


 水は、三日月状に変化し、アンナに向かって来る。


三日月の水撃(クレッセント・ブルー)!」

「くっ!」


 アンナは、それを躱そうと体を動かしたが、無数の水は、周囲を全て網羅していた。


「聖なる光よ! 私を守れ!」


 逃げ場のなくなったアンナは、聖剣を変化させ、自身の周囲に張り巡らせる。

 聖なる光に、水の刃がぶつかっていく。


「ふふふ、まだ終わらん」

「くっ……!」


 水の刃は、アンナにどんどんと向かってきていた。

 聖なる光で、なんと防御はできるが、アンナは動くことができない。このままでは、いずれ防御が崩されてしまうだろう。

 アンナは、必死に思考し、打開策を考えるのだった。




◇◇◇




 カルーナとガルスは、引き続き、自身の分身と戦っていた。


「まさか、アンナの分身がやられるとはな……」

「……あんなことができるのは、アンナだけだ……」


 分身ガルスが、ガルスに対して話しかけてくる。

 二人は、同じガルスであるため、アンナのしたことに驚愕しているのだ。それと同時に、アンナのようにガルスができないことも理解していた。


「やっぱり、お姉ちゃんはすごい……」

「うん、敵ながら、そう思うよ……」


 カルーナも分身と話している。

 こちらは、アンナを褒めたたえるような内容になっていた。

 やはり、分身カルーナも、カルーナを同じ思考のようだ。


「さて……」

「何?」


 そこで、カルーナは動いた。

 大きく体を動かし、ガルスの元へと行ったのだ。


「ガルスさん! 交代!」

「む!? わかった!」


 カルーナの声にガルスが応え、二人の位置が入れ替わった。

 分身カルーナが、その意図を見抜いたようで、口を開く。


「なるほど、確かに私では、ガルスさんには勝てないか……」

「……だが、それはお前も同じことだ」


 それを受けて、分身ガルスも続いた。

 カルーナの炎魔法は、ガルスには通用しない。

 そのため、どちらのガルスにも、対抗手段がないのである。


「……それは、違うかな?」


 しかし、カルーナは笑う。

 そして、その手をガルスに向けて、魔法を放つ。


紅蓮の不死鳥ファイア・フェニックス!」


 炎の鳥が、分身ガルスに向かっていた。

 分身ガルスは、身を動かすこともなく、それを受け止める。


「無駄だ……この俺に、炎は効かん……」

「……それは本当のガルスさんの話だよ?」

「俺は、本物と同じ力を持っているのだ……変わりはない」


 分身ガルスは、カルーナの攻撃がまったく効かないと思っているようだ。

 だが、カルーナの予想は違った。


「む……?」


 そこで、分身ガルスの体に変化が起こる。

 体から、煙のようなものが噴き出てきているのだ。


「これは……?」

「……ガルスさんの体は、熱に強い体。だけど、あなたの体はガウスさんと大きく違う点がある」

「何……?」

「あなたは、水によって作られた分身。つまり、あなたの体は熱によって温められ、蒸発した」

「ば、馬鹿な……」


 分身ガルスの体が、どんどんと崩れていく。

 その炎の温度に、水の体が耐えられなかったのだ。

 分身ガルスは、カルーナに目を向けながら、ゆっくりと口を開く。


「み、見事だ……俺すら知らん、弱点を、突くとは……」

「……あなたなら、確実に私の攻撃を受けてくれる。そう思ったから。あなたを相手することにしたの。予想が外れていたら、どうにもできなかったけど……」

「その心意気が……お前を勝たせたのだろうな、誇るがいい……」


 それだけ言って、分身ガルスは水蒸気に変わっていった。


「……なるほど、あれが私の狙いか……」

「……」


 分身カルーナは、分身ガルスが水蒸気となったのを見て、感心しているようだ。

 最早、彼女に勝ち目はほとんどない。


「終わらせよう……」

「終わらせるわけには……いかない!」


 分身カルーナは、向かって来るガルスに対して、魔法を放つ。


紅蓮の不死鳥ファイア・フェニックス!」

「ふん!」


 分身カルーナの魔法を、ガルスは躱さなかった。

 本物のガルスには、炎魔法は効かないのだ。


「くっ!」

竜人拳(リザード・ナックル)!」

「がはっ!」


 ガルスの拳が、分身カルーナの体を貫く。

 その体から、水が噴き出していく。

 ガルスの一撃は完全に入り、分身のカルーナは形を保っていられない。


「やっぱり……駄目か」

「お前と俺の相性が悪かったな」

「そうみたい……ね」


 分身カルーナの体が崩れ、周囲の水へと流れていく。


「カルーナ、見事だったぞ」

「ありがとうございます。でも、それより、お姉ちゃんを……」

「ああ、行くぞ」


 カルーナの機転によって、二人は自らの分身を倒すことができたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「その心意気が……お前を勝たせたのだろうな、誇るがいい……」 [一言] 偽ガルスは少しうかつっぽいけど、ガルス格好良い。
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