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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第四章 毒々しき心

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第58話 三つの戦い

 カルーナは、イルドニア王国国軍の兵士とともに洞窟内を探索していた。


「カルーナさん! この先に気配を感じます。恐らく、毒魔団かと」

「そうですか。皆さん、臨戦態勢でいきましょう」


 カルーナと兵士達は構える。そして、ゆっくりと足を進めていった。


「これは!?」

「よく来たな……」


 進んで行くと、開けた場所に着いた。

 そこには、様々な魔族がおり、その中央にリーダーらしき魔族がいる。


「ハーピィ!?」

「我が名はピュリシス! 毒魔団副団長にして、ラミアナ様の右腕!」


 ピュリシスは翼を広げて、そう言った。それと同時に、周囲に風が巻き起こる。


「風!? ここは、洞窟の中なのに!?」

「私は、風を操ることができる! どれだけ小さな風でも、私の力で底上げできるのだ!」


 カルーナが疑問に思ったことを、ピュリシスがすぐに答えてくれた。毒魔将ラミアナと同じく、正々堂々な人物なのかもしれない。そう思っていたカルーナに、兵士の一人が呼びかけた。


「カルーナさん! ここは自分が!」

「兵士さん!? 駄目!」


 兵士の一人が、ピュリシスに向かっていく。


「はあああ!」


 その手の槍を、ピュリシス目がけて突き刺した。


「遅い!」


 ピュリシスはそれを躱し、飛び上がる。


「その程度で!」

「ぐぎゅっ!?」


 さらに、その鳥のような足で、兵士の頭を掴み取った。


「ふん!」

「がはっ!」


 ピュリシスは体を回転させ、兵士の体を地面に叩きつける。

 その強力な一撃によって、兵士の首は折れてしまったようだ。


「……この程度の力か」

「皆さん! ピュリシスは私が相手します。周囲にいる魔族の相手をお願いします!」

「はっ、はい!」


 イルドニア王国の兵士が、散り散りになっていく。それに合わせて、ピュリシスが従えている魔族も散らばる。


「私の相手はお前のようだな、魔法使いカルーナ」

「……初めからそのつもりだったみたいだね」

「ふ! どうかな?」


 周囲の魔族は、カルーナに目を向けることもなかった。そのことから、カルーナは、最初からピュリシスが一対一の戦いを望んでいたのだと予測する。ピュリシスの口振りからも、それは図星だろう。


「いくぞ!」

「くっ……!」

風の刃(ウィンド・カッター)!」


 ピュリシスは翼を振るうと、風が一点に集中し、それが刃となって打ち出される。


「これは……!?」


 カルーナは身を翻し、風の刃を躱す。

 刃は勢いを殺さぬまま壁に当たり、それを引き裂いた。


「なんて威力……!」

「その壁は、お前の未来だ……」


 カルーナとピュリシスの戦いが始まる。





 ガルスも、イルドニア王国国軍の兵士とともに洞窟内を探索しており、こちらも、カルーナと同じく開けた場所に出ていた。


「ガルスさん、あれは……!?」


 ガルスに対して、兵士が問い掛ける。

 目の前には、数体の魔族。その中心にいるのは、蛇のような体と蛇が髪の毛になっている魔族であった。


「あれは……メデューサ!? 気をつけろ! 全員目を瞑るんだ!」

「え?」


 ガルスの言葉が放たれると同時に、メデューサが笑いだす。


「ふふ、もう遅い……石化の魔眼(ストーン・アイズ)!」


 メデューサの目が、光を放つ。


「ぐあああっ!?」

「ぬあああっ!?」


 ガルスの言葉に従っていなかった兵士達の体が、どんどんと石になっていく。


「……遅かったか!」


 兵士の叫びを聞き、ガルスは後悔する。もっと早く、兵士に警告するべきだったと。


「ふふ、ラミアナ様と違って、私は甘くないわよ。竜魔将……いえ、元竜魔将様と呼ぶべきかしら」

「……なんとでも呼ぶがいい。どうやら、お前が毒を流した犯人のようだな」

「ええ、私は、毒魔団参謀にして、ラミアナ様の左腕……メデュシア! 以後、お見知りおきを……」


 そう言ってメデュシアは不敵に笑う。

 石化の魔眼(ストーン・アイズ)があるため、ガルスとイルドニア王国軍は目を瞑っていなければならない。

 そのため戦況は、メデュシアの絶対的有利である。


「さあ、かかりなさい! 毒魔団の兵士達よ!」

「くっ……!」


 メデュシアの合図で、毒魔団の兵士達が一斉にイルドニア王国軍の兵士達へと襲い掛かってきた。

 ガルスは、大地を踏み、メデュシアの元へと急ぐ。メデュシアを倒さなければ、イルドニア王国軍は思うように動けないからだ。


「ふふ、元竜魔将も目を使えなければ、脅威にはならないわ!」

「どうかな?」


 ガルスとメデュシアの戦いも、始まろうとしていた。





 アンナとティリアも、イルドニア王国国軍の兵士とともに洞窟内を探索していた。


「アンナさん……」

「うん、この先に大きな闘気を感じるよ……」


 アンナの体が震える。それによって、アンナは直感的に理解していた。


「恐らく、毒魔将ラミアナがこの先に待ち構えている……」

「毒魔将が……」


 歩みを進めると、その直感が事実であることが証明される。開けた場所に、数体の魔族が待ち構えており、その中心にその魔族はいた。

 その魔族は、女性の上半身と、蛇の下半身を持っている。それは、国王から聞いた魔族の特徴と一致していた。何より、纏う闘気が、通常の者とは異なっているのだ。


「毒魔将……ラミアナ!」

「赤髪の女勇者……アンナ!」


 勇者と魔将が睨み合う。お互いの敵を見つめて。

 周りの兵士も、周りの魔族が、二人の闘気によって震えあがる。


「来るのだ、勇者。そちらの聖女もいいだろう」


 ラミアナは、ゆっくりと後退しながら、アンナとティリアを誘ってきた。


「アンナさん……」

「ティリア……ついて来てくれる?」

「もちろんです。私の回復が役に立つかはわかりませんが……」


 アンナとティリアは、ラミアナを追いかける。周りの魔族は、誰一人として止める者はいなかった。

 アンナに敵わないことを理解している部分もあるだろうが、何よりラミアナから指示があったのだろう。己の戦いの邪魔をしないようにと。


「ここは……」


 ラミアナを追いかけた先は、またも開けた場所であった。


「さあ、戦うとしようか。勇者よ……」

「望むところだ……」


 互いに剣を構えながら、見つめ合う。


「ティリア、下がっていて!」

「はい!」


 ティリアは後ろに下がり、待機する。さらに、いざという時、アンナに回復魔法をかけられるように、身構えておく。


「いくぞ! 勇者!」

「来い! ラミアナ!」


 聖剣とラミアナの剣がぶつかり合い、大きな衝撃が起こる。

 勇者と魔将の戦いも、今始まった。

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