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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第四章 毒々しき心

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第57話 魔宮の洞窟

 アンナ達は、イルドニア王国軍とともに、魔宮の洞窟に向かっている。

 毒魔将ラミアナの情報により、洞窟内部の構造がわかった。これが、罠の可能性もある。だが、ガルスの知るラミアナから、それは否定できると判断された。

 よって、イルドニア王国は、毒魔将ラミアナの討伐を決定したのだ。


「ねえ、ガルス、参考までに毒魔将ラミアナがどんな戦い方をするか、教えてくれないかな?」


 アンナは、ガルスにそう問いかけた。

 ガルスは、少し考えるような素振りを見せたが、すぐに話し始める。


「ラミアナの最も得意とする技は、蛇の尻尾による拘束攻撃だな」

「拘束攻撃?」

「ああ、尻尾で相手を締め上げてつぶす。その力はかなり強力で、抜け出すのは困難だろうな」

「なるほど、つまりは捕まらない方がいいってことだね」

「そういうことになるな」


 ラミアナは、ラミアとしての体が脅威となるようだ。アンナは、頭の中で戦い方をイメージする。


「さらに、剣の腕も随一だ。魔将の中で、最も剣が得意だからな」

「剣士か……私と同じってことだね」

「そういうことになる……最後に、これは余計なことかもしれんが……」


 そこで、ガルスは一度言葉を濁した。さらに、その表情が少し変わる。アンナが、疑問に思っているとすぐに話が再開された。


「ラミアは、その体質上、体内に強力な毒を蓄えている。その毒も、ラミアナの武器の一つだ」

「毒か……それは、恐ろしいな」

「ただ、ラミアナはこの毒を使うことを嫌っているのだ」

「嫌う? どうして?」

「戦士としての誇りともいうべきか。毒というものを使うことを、卑怯に感じているようだ。相手を苦しめるだけの攻撃だと、昔聞いたことがある」

「なるほどね……」


 ラミアナという魔将は、本当に正々堂々の戦いを望んでいるのだと、アンナは理解する。しかし、窮地に陥れば、人も魔族も何をするかはわからない。そのため、毒も警戒しておこうと、アンナは思うのだった。


「俺が気がかりに感じているのは、むしろ毒を流した犯人の方だ。ラミアナよりも、そいつの方が、何をしてくるかわからんからな……」

「確かに、毒を流すなんて、剛魔団や鎧魔団にだって、そこまで卑劣な者はいなかったからね……」


 二人は、毒を流した魔族のことを考える。

 ラミアナが、しない作戦をしたということは、その者はラミアナでさえ制御できないということだ。

 アンナ達は、引き続き、魔宮の洞窟を目指すのであった。





 魔宮の洞窟内で、毒魔将ラミアナ、ピュリシス、メデュシアの三人は集まっていた。


「ラミアナ様、どういうおつもりですか? 策もなく、イルドニア軍を呼び出すだなんて……」

「どういうつもりか? それは、こちらが聞きたいくらいだ。お前のせいで、この毒魔団の誇りは失われてしまった」


 何も気にしていない様子のメデュシアに対して、ラミアナは剣を向ける。これには、流石のメデュシアも怯んだようだ。


「……怒りを鎮めてください。ラミアナ様……全てはあなたのためなのです」

「私のため? 何が言いたい?」

「このままでは、ラミアナ様がなんの成果も得られないでいることは、まずいと思ったのです。ねえ、ピュリシス」


 そこでメデュシアは、ピュリシスに話を振った。これは、自分への注意を逸らさせるためである。


「ピュリシス、お前もこのことを知りながら、メデュシアを止められなかったそうだな……」

「……はい。申し訳ありません」


 ピュリシスは、頭を下げて謝罪した。その瞬間、ラミアナの表情が少し曇る。


「お前も、この私がこのままイルドニア王国を攻め落とせないと思った訳か……」

「そ、そんなことは……!」


 ピュリシスが否定したが、ラミアナは笑う。


「部下にここまで信頼されていないとは……私も落ちたものだ」

「ラミアナ様……」


 ラミアナは、そこで一度言葉を止める。そして、意を決したようにその表情を変えた。


「これよりここに、勇者及びイルドニア王国軍がやってくる」

「ゆ、勇者……!」

「我ら毒魔団の総力を持って、それを迎え撃つ。お前達も配置につくがいい」

「は、はい!」


 ラミアナの言葉で、ピュリシスとメデュシアは部屋を出る。各々が、相手を迎え撃つ場所に向かうために。





 アンナ達は、魔宮の洞窟の入り口まできていた。


「ここか……」

「見た目は普通の洞窟だね、お姉ちゃん」

「うん、でも、この中からはかなり広いみたいだ……」


 洞窟の見た目は、なんの変哲もないものだ。しかし、ラミアナからの情報では、ここから地下に続いており、かなりの広さらしい。


「入り口は、この一つしかないようだ。何が待ち受けているかわからん。俺が先頭で様子を見るから、後からついて来い」

「わかった、よろしく頼むよ、ガルス」


 ガルスがそう言って、先陣を切ってくれることになった。戦闘経験の豊富なガルスなら、幅広く対応できる。そう思ったアンナは、それに賛同するのだった。


「では、行くぞ……」


 ガルスを先頭に、アンナ、カルーナ、ティリア、そして、イルドニア王国軍が洞窟の中に入る。洞窟の中は、松明の明かりだけで照らされた、薄暗い世界だ。


「敵もいなければ、罠もないようだな……」


 先頭のガルスは辺りを見渡し、そう呟いた。

 アンナは、ラミアナからの情報によって作成された地図を見る。


「ラミアナからの情報によると、この先は三つの道にわかれているみたいだけど」

「ああ、確かに見えるな。だが、わざわざこちらからわかれる必要もないだろう」


 進んで行くと、確かに三つの扉が発見できた。ガルスはそっと扉の一つを開け中の様子を確認する。


「これは……」


 それを見て、ガルスは目を丸くした。


「どうしたの? ガルス」

「この扉は、仕掛け扉のようだ……」

「仕掛け扉……?」

「ああ、この扉それぞれの奥にさらに扉があり、それを開けるためには、それぞれが中で重しの役割をしなければならない」

「つまり、三分割するための仕掛けってことか……」


 この先に進むには、どうやら三つの部隊にわかれなければならないようだ。


「じゃあ、三分割ってことか……」

「だったら、お姉ちゃん、私、ガルスさんは別れた方がいいかもね」

「私は、どうしましょうか?」

「要は、アンナだ。ティリアはアンナについて行った方がいいだろう」

「わ、わかりました……」


 こうして、アンナとティリア、カルーナ、ガルスにそれぞれ数名の兵士がつき、三つの扉の中へと進んでいった。

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