表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第三章 鎧に隠された真実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/160

第49話 半人半魔の力

 アンナは、ツヴァイとの距離を一気に詰めていく。

 ツヴァイは、魔法も使えるため、最早間合いのことなど気にしている場合ではなかった。


「そう簡単に、通すと思うか!」


 ツヴァイは、その槍をアンナ目がけて、突き刺した。


「そんな攻撃!」

「馬鹿め! 単純な突きではないわ!」


 アンナは突きを躱しながら距離を詰めようとしたが、その瞬間、槍から電撃が放たれた。


「ぐっ!」

「ふん!」


 さらに、ツヴァイは槍を大きく薙ぎ払い、アンナの体は大きく弾き飛ばされ、壁に激突した。


「ぐあっ!」


 その痛みに声をあげながら、アンナは態勢を立て直す。


雷の槍(サンダー・ランス)!」

「くっ……!」


 ツヴァイの一撃によって、壁が破壊され、辺りに破片が散らばった。アンナは、すぐにその場から離れる。


「なんて威力だ……」


 ツヴァイの攻撃を見て、アンナは驚愕していた。

 槍と魔法の連携攻撃は、とても厄介であり、その威力も大きい。

 前回の戦いでは、ツヴァイが正体を隠していたこともあって、魔法を使ってこなかった。しかし、今回は最初から全力の攻撃を浴びせられる。そのため、ツヴァイは相対的に強くなっていた。


「この程度か? 拍子抜けだな……」


 ツヴァイは槍を構え直しながら、アンナをあざ笑った。自身の優位を理解し、アンナを見下しているようだ。


「お前には、前回苦しめられたものだが、俺の本気にはついてこられないようだな……」

「……ツヴァイ、何を焦っているんだ?」

「何?」


 アンナがそう言うと、ツヴァイが顔を歪めた。


「前のお前は、もっと気高い者だった……だが、今のお前は、見るに堪えない邪悪さを感じる」

「ふっ! 何を言うかと思えば……」


 ツヴァイは、明らかに動揺していた。彼も、自身が普通ではないことを理解しているようだ。どうやら、ツヴァイの弱点は、そのコンプレックスのようだった。


「俺は必ずお前を倒し、魔王軍での確固たる地位を得るのだ!」

「だが、そうしたところで周りが、あなたを受け入れてくれるのか……?」

「何……?」


 そこを突くのは気が引けたが、アンナも勝つために手段を選んでいる場合ではない。ツヴァイの心の隙を攻撃し、その間に逆転のための準備をする。それが、アンナの今できる作戦だった。


「例え、私を倒したとしても、あなたが半人半魔(ハーフ)であることは揺るがない。そして、周りからの評価が変わることなどないだろう」


 アンナは、自身の体に聖なる光を巡らせる。ツヴァイの魔闘気に対抗するには、勇者の力、聖闘気しかない。この会話は、それを練るための時間稼ぎに過ぎなかった。

 そこで、アンナは聖闘気の特訓を思い出す。





 アンナは一度目の交戦から、ツヴァイに対抗できる聖闘気の修得に励んでいた。

 実はツヴァイとの戦いの中で、一つだけ手がかりのようなものを見つけることができた。


「魔闘気……」


 それは、ツヴァイの纏っていた魔闘気である。闘気と魔力を合わせたそれは、聖闘気と似ていた。そこで、魔闘気の感覚を頼りに、自身の闘気と聖なる光を混ぜ合わせていく。


「これだ……!」


 自分の体で、二つの力が合わさっていくのを、アンナは実感していた。


「よし……あれ?」


 しかし、アンナが体を動かすと、聖闘気は分離してしまった。どうやら、集中が途切れてしまったためらしい。


「難しいな……」


 聖闘気は、かなり集中していなければ使えないようだ。


「だけど、感覚は掴めた」


 アンナは確かに、聖闘気の修得を確信するのだった。





 その後、何度もやってみたが、動きながら聖闘気を作ることはできなかった。だが、今の状況なら存分に作ることができた。


「周りからどう見られているかなんて、自分の立場で変わるはずだ。私は、ティリアが半人半魔(ハーフ)でもなんとも思わなかった」


 体に、聖なる光と闘気が混ざり合うのを感じる。アンナの体に、聖闘気が発現する。


「それは彼女の性格やしてきたことが、彼女が信用できると思えるようなことだったからだ。あなたは、鎧魔団の手下達に何をしてきた? 逃げられた理由は、そこにあるんじゃないのか?」

「だ、黙れ……!」


 ツヴァイは、アンナの煽りに顔を歪めながら、槍に電撃を走らせた。


雷の槍(サンダー・ランス)!」


 そして、その槍を携え、アンナに向かってきた。


「喰らえ!」

「今だ!」


 向かってきたツヴァイに対して、アンナは聖剣を振るう。


「無駄だ! 俺の力にそんなものは効かん!」

聖なる斬撃(セイント・スラッシュ)!」

「何!?」


 聖闘気を纏った一撃が、ツヴァイの攻撃とぶつかり合った。激しい光とともに、二つの力が爆発した。


「くっ!」

「ぬうっ!」


 二人の体は同時に吹き飛び、壁に叩きつけられた。お互いにすぐに態勢を立て直し、相手を見据える。


「成功した……」

「なんだ? 今のは……」


 二人はお互いに構えながら、そう呟いていた。

 アンナは、聖闘気による一撃が成功したことを確信し、ツヴァイは困惑していた。


「まさか……俺と喋っている間に何かを?」


 そこで初めて、ツヴァイは自身が乗せられていたことに気づいた。


「くっ! 前回と同じ手か……」


 ツヴァイが、この手に嵌るのは二回目であった。ツヴァイは、自身の不甲斐なさにイラつきながら拳を握りしめるのだった。


「さて……」


 アンナは、相手を観察しながら、再び聖闘気を練り始める。聖闘気を練るには、数秒の時間が必要だった。

 そのため、なんとか時間が欲しかったが、それをツヴァイは許してくれそうもない。だが、少量なら作り出すことができる。


「行くぞ!」


 ツヴァイは再び、槍に電撃を込めていた。次の一撃が来ることを予感させる。

 アンナは、ぎりぎりまで聖闘気を練ることに専念する。少しでも多くの聖闘気を作り出さなけらば、その一撃に対抗できないかもしれないからだ。


「喰らえ!

「おおっ!」


 飛び掛かってきたツヴァイに対して、アンナは聖剣を構えた。先程よりも威力は劣るかもしれないが、それでも聖闘気を纏った攻撃が行える。


雷の槍(サンダー・ランス)!」

聖なる斬撃(セイント・スラッシュ)!」


 聖剣と槍が、再びぶつかり合う。

 聖闘気と魔闘気、二つの力が混ざり合い、大きな光が放たれる。


「くううっ!」

「ぬうっ!」

 

 だが、先程と違い、二つの力は拮抗してはいない。

 アンナよりも、ツヴァイの力の方が大きく、アンナは、どんどん後退していった。

 ツヴァイは、笑みを浮かべながら、言い放った。


「はは! さっきの力は使えないようだな!」

「くううっ!」


 ツヴァイの魔闘気は、予想よりも強力であった。アンナが、あれだけの時間をかけて練った聖闘気で、やっと互角なのである。


「お前の力が何かは知らんが、そんな力では俺に勝つことなどできない!」

「くっ……!」


 アンナの体は、大きく吹き飛んだ。


「くううっ!」


 アンナは痛みを確信し、歯を食いしばって衝撃に備えた。

 しかし、その痛みが訪れることはなかった。


「えっ……?」


 アンナの体は、何もかに受け止められており、壁に衝突することはなかった。


「まさか……いや……」


 一瞬、カルーナが自分を助けてくれたのかと思ったが、華奢な彼女が、吹き飛んできた自分を受け止めることは難しいと、直後に思い至った。そもそも、背中の感覚が、自分よりも大きな男であると感じさせた。


「な……何故、お前が……?」


 ツヴァイの方を見ると、驚きに顔を歪めていた。その驚き様も、カルーナではないことを表していた。

 ゆっくりと、後ろを振り返ると、アンナもよく知っている人物がそこにいた。

 その人物は、ゆっくりと口を開いた。


「無事か……? アンナ……」

「あなたは……竜魔将……ガルス!?」


 そこには、死んだはずの竜魔将が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ