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赤髪の女勇者アンナ ~実は勇者だったので、義妹とともに旅に出ます~  作者: 木山楽斗
第三章 鎧に隠された真実

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第42話 交錯する戦い

 アンナとカルーナは、背中を合わせて、作戦会議をしていた。

 目の前には、それぞれの敵、ツヴァイとプラチナスがいるため、早口に互いの情報を交換する。


「お姉ちゃん、プラチナスは魔法を反射してくるんだ……」

「なるほど、ツヴァイも防御力が高いし、あの槍の間合いは厄介だ。私の得意な間合いに持っていけない」

「じゃあ、答えは一つだね……」


 二人は背中を合わせたまま、お互いの位置を入れ替えた。


「何……!?」

「ほう……」


 これにより、お互いの敵も入れ替わることになる。

 魔法を反射できるプラチナスの相手は、アンナ。槍による広い間合いを持つツヴァイには、カルーナ。これによって、お互いより戦いやすい相手となった。


「勇者一行の魔法使いか……お前なら、俺に勝てるとでも?」

「……さあ、でもあなたになら魔法が効く」


 カルーナは手に魔力を集中させ、魔法を放つ。


紅蓮の火球(ファイアー・ボール)!」

鎧の障壁(アーマー・バリア)!」


 ツヴァイは、闘気を張り巡らせて防御する。

 直後、火球がツヴァイの体に直撃し、爆発した。


「ぬうっ……!」


 ツヴァイは少し後退し、苦しそうな声を放った。


「効いてる……?」


 その反応から、自身の魔法が有効であるとカルーナはわかった。アンナの攻撃と自身の魔法、どちらの威力が高いのか試したことはないが、少なくともツヴァイには魔法の方が効くらしい。


「中々の魔法だが、それだけだ……これで俺を倒せるなどと思わないことだ……」

「どうかな……?」


 カルーナとツヴァイはお互いに余裕な態度を崩さなかった。


 一方アンナは、プラチナスとの距離を詰めていた。


「勇者アンナ! 相手にとって不足なし!」

「はああああ!」


 お互いの剣がぶつかり合い、大きな音が辺りに響いた。


「ぐっ! 流石は勇者……なんという闘気!」

「そっちこそ……」


 プラチナスの闘気は、アンナも驚く程であった。しかし、今まで魔将と戦ってきたアンナにとって、それは脅威にはなりえなかった。


「ぐううっ!」


 アンナの闘気で、プラチナスの体はだんだんと下がっていく。


「やあああああ!」

「ぬううううっ!」


 アンナは剣を大きく振り上げて、プラチナスの剣を払った。プラチナスは、剣を頭上にあげてしまい、その体に大きな隙が生まれる。


十字斬り(クロス・スラッシュ)!」

「うぐっ!」


 その隙をアンナが見逃すはずもなく、プラチナスに強烈な一撃が叩き込まれた。

 プラチナスの胸に、十字の傷ができ、さらにそこが砕けていく。


「私の体が……」


 プラチナスの胸には、穴が開いており、そこから空洞が覗いていた。


「プラチナス!」


 部下の負傷を見たためか、ツヴァイが大きく声を出した。

 その声色には、他の部下の時とは違い、心配の念が籠っているように、アンナには思えた。



「大丈夫です! ツヴァイ様! この程度の傷など!」

「悪いけど、このまま一気に蹴りをつけさせてもらう!」


 アンナは、手の中の聖剣を聖なる光に変える。


「ぐぬうう!」

「プラチナス!」

「行かせはしない! 紅蓮の火球(ファイアー・ボール)


 ツヴァイがプラチナス側へ行こうとするが、カルーナがそれを牽制する。


「邪魔を……! 鎧の障壁(アーマー・バリア)!」


 ツヴァイは、咄嗟に防御の態勢に入る。そのせいか、そこで一度足が止まった。これで、アンナの邪魔をすることは難しくなった。


聖なる(セイント)――」

「――させん!」


 アンナが攻撃しようとした、その時だった。ツヴァイの右手が、光を放った。


電撃呪文(サンダー)!」

「何!?」


 アンナの頭上から、電撃が降り注いだ。

 アンナは咄嗟に躱したが、そのせいでプラチナスへの攻撃を中断せざるを得なかった。


「魔法……!?」

「そんな! ツヴァイは闘気使いのはずじゃあ!?」


 アンナとカルーナは驚愕した。闘気と魔法を、同時に扱うことは難しいはずだ。だが、ツヴァイは、その両方を扱っている。

 そして、それに驚いたのは、アンナとカルーナだけではなかった。


「ツヴァイ様……!? その力は一体……!?」


 どうやら、副団長であるプラチナスでさえ知らなかったようだ。


「ふっ! これが俺の力だ……! 闘気と魔法、その二つを使える……その力こそが、本来の力なのだ!」


 ツヴァイの鎧には、ひびが入っていた。咄嗟だったためか、カルーナの攻撃を完全に防ぐことができていなかったようだ。そのひびは、だんだんと広がっていき、鎧を砕いていく。


「だが、俺はこの力を使うことを拒んでいた。なぜなら、これは俺の忌むべき力……」


 鎧の隙間からは、肉体が見えた。リビングアーマーに、あるはずがない肉体が。


「ふん!」


 ツヴァイが叫ぶと、鎧は一気に吹き飛んだ。


「ツヴァイ……やはり、お前は……」

「これが、鎧魔将の正体……」

「ツ、ツヴァイ様? そのお姿は……?」


 そこには、一人の青年が立っていた。

 その容姿は人間と似通っていた。しかし、白い髪で頭からは角が生え、背中からは黒い羽根があり、尻尾まで生えている。


「悪魔……?」


 アンナはそう言ったが、悪魔にとって大きな特徴が欠けていることに気づいていた。

 悪魔は青い肌であるはずだが、ツヴァイの肌は人間と同じ色であった。


「悪魔か……人間からは、そう見えるかもしれん。しかし、俺は悪魔ではない……」


 ツヴァイは、プラチナスを含む三人をゆっくり見つめながら、言葉を放っていた。


「だが、俺は人間でもない……この忌むべき体は、どちらでもないのだ……」


 言葉を放つツヴァイの顔は、どこか悲しみが滲んでいた。


「俺は……半人半魔(ハーフ)。人間でも魔族でもない、中途半端な存在……!」

半人半魔(ハーフ)……ツヴァイ、それがお前の正体だったのか……」

「人間と、悪魔との半人半魔(ハーフ)……」

「これが……ツヴァイ様……」


 ツヴァイは自虐的な態度で、そう語っていた。

 人間と魔族は、長い歴史の中で争ってきた。その歴史の中で、様々な要因によって、二つの種族の間に子供が生まれることがあった。

 生まれた子供は半人半魔(ハーフ)と呼ばれたが、その生は明るいものとは言い難かった。

 なぜなら、人間からは魔族と恐れられ、魔族からは人間と蔑まれる。どちらの種族にも受け入れらない存在だからだ。


「俺は、どちらの種族からも受け入れられなかった。だが、姿さえ隠せば、俺を嫌う者などいなかった。だから、俺は姿を隠しても違和感のない魔王軍に所属した」

「ツヴァイ……だから、あれ程怒っていたのか……」


 アンナは理解した。ツヴァイにリビングアーマーでないと言った時、あそこまで動揺したのは、彼自身のトラウマやコンプレックスのためだったのだろう。


「最早、俺の存在を証明できるのは、勇者を討伐したという武勲だけだ。故に、ここで蹴りをつけさせてもらうぞ……」


 ツヴァイは、鎧を突き破った際に落とした槍を手に取り構えた。


「くっ! カルーナ、私もツヴァイと戦う!」


 アンナは、プラチナスよりもツヴァイを優先することにした。

 闘気と魔法の二つを使える彼は、今までよりも遥かに強いだろう。プラチナスは、まともに戦闘できる様子ではない。なので、戦うべきはそちらだ。


「二対一であろうと、俺が負けることはない……俺の闘気は魔法で強化され、俺の魔法は闘気で強化される。つまりは、魔闘気。この力に勝てる者などありはしない!」


 ツヴァイの体に、二つの力が混ざり合ったものが纏われた。それは闘気であり、魔法であり、そのどちらとも異なるもの。

 魔闘気、それは闘気と魔法、そのどちらも身に着けし者のみに許される究極の力である。


「喰らうがいい! 雷の槍(サンダー・ランス)!」


 ツヴァイの槍に、雷が纏わりついていく。

 そして、魔法によって生まれた電撃と、闘気が混ざった衝撃波が、アンナとカルーナに襲い掛かってきた。

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