第100話 勇者一行 vs 獣王
カルーナ達は、獣王と対峙していた。
「皆、気をつけろ。奴の肉体は、回復する肉体。攻撃しても、回復されてしまう……」
ガルスは、ティリアに回復されながら、そんなことを語る。
「なるほど……中々厄介そうだな……」
「そうですね……でも……」
「なんとかするしかないってことか……」
その言葉に、カルーナ、ツヴァイ、ネーレの三人は驚く。
しかし、獣王がどんな力を持っていても、彼を倒さなければならないのだ。
そのため、三人は覚悟を決めて、獣王と向かい合うのだった。
「いくぞ!」
「ほう?」
ツヴァイは一気に駆け出し、獣王の元へと向かっていく。
攻撃のメインはツヴァイで、カルーナとネーレは、そのサポートを行う。
「雷の槍!」
ツヴァイは、槍に雷を纏わせ、獣王を攻撃する。
「これが、魔闘気か、悪くない」
獣王は、まだまだ余裕という態度で、それを躱す。
だが、それはツヴァイも想定済みの動きだ。
「小さな紅蓮の火球!」
「なるほど」
躱した獣王に向かって、カルーナの火球が放たれる。
「雷の槍!」
それに合わせて、ツヴァイは再び攻撃を放つ。
これで、獣王の逃げ場は狭まった。
「ガオオオオン!」
「そんな!?」
そこで、獣王は雄叫びをあげる。
すると、カルーナの火球は跡形もなく消えてしまった。
だが、その雄叫びによって、獣王の動きは一瞬止まる。
「はああっ!」
その隙に、ツヴァイの一撃が突き刺さった。
雷を纏った槍が、獣王の体を貫いたのだ。
「やるな、鎧魔将」
しかし、獣王はまったく余裕を崩さない。
ツヴァイの槍から、後退することで逃れていく。
その直後、獣王の体に変化が起こる。
「こ、これが……再生!?」
「中々の攻撃だったが、吾輩には意味がない攻撃だ」
獣王についた傷は、一瞬でなくなってしまった。
獣王の回復する肉体によって、ツヴァイの攻撃は無意味なものに、なってしまったのだ。
「まだだ!」
「む?」
そこで、ネーレが声をあげる。
彼女は密かに、獣王の背後に回っていたのだ。
「何?」
そして、獣王は気づいた。
自身の体に、何かが巻き付いていることに。
「鉄線か!?」
「そうだ。お前が、ツヴァイに夢中だったから、仕掛けさせてもらったんだ」
「なるほど、抜け目ない奴だな!」
ネーレはツヴァイが攻撃している隙に、獣王の体に巻き付くように、鉄線を仕掛けていた。
これで、獣王の体を一気に攻撃できる。
ただ、ネーレの力では、獣王の体を破壊することはできない。
「ツヴァイ!」
「ああ、任せろ! 変化鎧!」
ツヴァイは槍を鎧に変化させながら、ネーレの鉄線を受け取る。
獣王への攻撃は、ツヴァイが行うのだ。
「喰らえ!」
「ほう!?」
ツヴァイは、鉄線に電撃を纏わせながら、獣王の体を締め付けていく。
「これも中々だな。だが、この程度では、吾輩は沈められんぞ!」
「何!?」
しかし、獣王は体を大きく回転させ、ツヴァイの体を浮かせた。
さらに、そのまま体を振るい、ツヴァイの体を地面に叩きつける。
「ぐはっ!」
「さて、もう一撃」
「ぐわああっ!」
倒れたツヴァイに、獣王がさらなる一撃を振るう。
ツヴァイの鎧が砕けるとともに、獣王への拘束が弱まっていく。
「さて、次だ」
「なっ!」
拘束が解けた獣王は、ネーレの前に移動する。
「ふん!」
「ぐわあああっ!」
そこで、獣王は腕を振るう。
その攻撃によって、ネーレは大きく吹き飛んだ。
「小さな紅蓮の火球!」
カルーナは獣王に向かって、火球を投げつける。
これ以上、追撃をさせないための牽制の一撃だ。
「ガオオオオン!」
獣王は雄叫びをあげ、その火球をかき消す。
カルーナの予想通り、その一撃で獣王の動きは止まってくれた。
「あああああ!」
「ほう!?」
その隙に、ツヴァイが獣王に飛び掛かる。
既に、立ち上がっていたのだ。鎧を槍へと変化させ、獣王に向ける。
そのまま、ツヴァイの一撃が獣王を貫く。
「だが、無駄だ」
「ふぐっ!」
しかし、その状況で、獣王の拳が振るわれた。
ツヴァイは大きく吹き飛び、獣王の体から槍が抜ける。
「ふん!」
その瞬間、獣王の傷が治っていく。
やはり、獣王へ攻撃しても、すぐに回復されるようだ。
「それなら……」
そこで、カルーナは魔力を集中させる。
獣王に効くかどうかはわからなかったが、新たなる魔法を試してみることにした。
それは先日、教授から教わった魔法。
「消滅呪文!」
「む!?」
カルーナの手から、橙色の球体が放たれた。
その魔法に、初めて獣王の態度が変わる。
それは、明らかな焦りだ。
「ガオオオオン!」
獣王は雄叫びをあげ、魔法をかき消そうとする。
だが、消滅呪文はかき消されない。
「くっ!」
そこで、獣王は戦術を変えた。
体を動かし、魔法を躱そうとしたのだ。
だが、そんな獣王の左腕を、消滅呪文が掠める。
「むう!?」
消滅呪文が発動し、獣王の左腕を消し去った。
そして、その左腕の再生が、始まらない。
「再生しない……?」
その様子に、カルーナは驚きながらも歓喜する。
それは、周りの者達も同じだった。
獣王へダメージを与えられたという事実は、それ程衝撃的だったのだ。
「ふふ、本当に面白くなってきたな」
そんな中、獣王は苦しみの表情を見せながら、笑うのだった。




