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僕らのガッカリ桜  作者: ゆらゆらゆらり
安田大地編
9/58

噴水広場

 切れまくりの息を整えようと何度も深呼吸を繰り返す。美和ちゃんも深呼吸をしている。でも、僕とはまるで違う。山の上にはいるかのように、気持ちよさそうに思いっきり空気を吸い込んでいる。

 視線が合うと、思わず笑いがこみ上げてきて弾けた。

 ステージの興奮と、いたずらをした後の高揚感みたいなものが、笑いとなって弾けている。美和ちゃんの楽しそうに笑う姿に、さらに弾ける。


 木々と植栽に囲まれた噴水広場には人の姿はなく、遠くからざわめきだけが届いている。そんな場所に、僕らの笑い声だけが弾けていた。


「なんか気持ちよかったね」


 美和ちゃんの声に、僕の言葉が続く。「最高だった。歌めちゃくちゃうまいんだね」


「いやいや。それより大ちゃん、あの曲吹けるんだね」


 僕が、昔にちょっとね、というと美和ちゃんは、小さくうなずいた。なぜか、瞳が潤んで見える。

 時々、そんな表情を浮かべる美和ちゃん。僕が何もいっていないのに、この曲大好きだから、と言い訳のように言葉を返してくる。そして、あえて話題を変えるように、


「なんか喉渇いちゃったね」


 彼女の胸のうちが気になりながらも、「じゃあ、ジュースでも買ってくるよ。遅刻のお詫びに奢っちゃうから、美和ちゃん、なんか飲みたいものある?」


 あえて、ふれることなく、言葉を返した。今はそうすることが一番いい。そんな気がしたから。


「ほんとに? じゃあ、何でもいいよ」

「何でもっていうのが、けっこう困るんだよね」

「大ちゃんのセンスで、最高のをお願いします」

「マジで」

「はい。センスのお手並み拝見です」


 美和ちゃんがニヤニヤと、楽し気にほほ笑んでいる。


「分かった。文句はなしだからね」


 首にかかるストラップからはずしたサックスを美和ちゃんに預け、ざわめきに向かって走った。


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