ステージ
桜の下で焼きそばを食べた後、公園内を並んで歩いた。
楽しく話しも弾んでいると思うのだが、僕のことばかり話している気がする。美和ちゃんの事に話しをむけようとしても、いつのまにか僕のことを話している。
「ねぇ、美和ちゃん。美和ちゃんの住んでいる所って――」
「あっ、ここってステージもあるんだ」
美和ちゃんは言葉をさえぎるように口を開き、目の前の広場を指差した。さらに、
「ねえ、ここでも何かやるのかなあ。行ってみようよ」
広場の中へと足を向けている。
できれば、通り過ぎたい場所だが、俺はここで、というわけにもいかない。
仕方なく、僕も後につづいた。
ステージにはマイクスタンドや音響機材が置かれている。舞台上には誰の姿もない。
「夜になるとカラオケ大会があるんだ」
舞台を見上げる美和ちゃんに、後ろから声をかけた。
ふと、大きな紙が目に止まる。舞台袖近くの壁に張られた紙には、今日と明日の舞台における予定が書かれている。
それで確認するまでもなく分かっている。明日の午後の欄に僕らの学校名があることは。
「ねぇ、ちょっと上がっちゃおうよ」
そう言った美和ちゃんは、いたずらっ子のように、にやりとほほ笑んだ。
「いや、それはまずいでしょう」
辺りを見渡せば、広場の中にも祭りを楽しむ多くの人の姿がある。だから、それはやっぱり――うそでしょ!
美和ちゃんは舞台に手をかけたと思ったら、、ピョンと跳ねて、上がってしまった。
「ちょっ、ちょっとヤバイって」
声を殺しながらも呼び止めたが、美和ちゃんは気にする様子もない。
「ねぇ、大ちゃんも上がってきて」
それはちょっと、と言いかけてた言葉を、僕は飲み込んでいた。
なぜ?
なんで、そんな眼差しを僕に向けているんだ。真剣であり、どこか悲し気な瞳が僕を見つめている。
僕は無言のまま。ケースを舞台上に置き、両手をついて飛び上がった。
ありがとう、そんな声が聞こえ、笑顔が光っている。