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僕らのガッカリ桜  作者: ゆらゆらゆらり
安田大地編
6/58

ステージ

 桜の下で焼きそばを食べた後、公園内を並んで歩いた。

 楽しく話しも弾んでいると思うのだが、僕のことばかり話している気がする。美和ちゃんの事に話しをむけようとしても、いつのまにか僕のことを話している。


「ねぇ、美和ちゃん。美和ちゃんの住んでいる所って――」

「あっ、ここってステージもあるんだ」


 美和ちゃんは言葉をさえぎるように口を開き、目の前の広場を指差した。さらに、


「ねえ、ここでも何かやるのかなあ。行ってみようよ」


 広場の中へと足を向けている。

 できれば、通り過ぎたい場所だが、俺はここで、というわけにもいかない。

 仕方なく、僕も後につづいた。




 ステージにはマイクスタンドや音響機材が置かれている。舞台上には誰の姿もない。


「夜になるとカラオケ大会があるんだ」


 舞台を見上げる美和ちゃんに、後ろから声をかけた。

 ふと、大きな紙が目に止まる。舞台袖近くの壁に張られた紙には、今日と明日の舞台における予定が書かれている。

 それで確認するまでもなく分かっている。明日の午後の欄に僕らの学校名があることは。


「ねぇ、ちょっと上がっちゃおうよ」


 そう言った美和ちゃんは、いたずらっ子のように、にやりとほほ笑んだ。


「いや、それはまずいでしょう」


 辺りを見渡せば、広場の中にも祭りを楽しむ多くの人の姿がある。だから、それはやっぱり――うそでしょ!


 美和ちゃんは舞台に手をかけたと思ったら、、ピョンと跳ねて、上がってしまった。


「ちょっ、ちょっとヤバイって」


 声を殺しながらも呼び止めたが、美和ちゃんは気にする様子もない。


「ねぇ、大ちゃんも上がってきて」


 それはちょっと、と言いかけてた言葉を、僕は飲み込んでいた。


 なぜ?


 なんで、そんな眼差しを僕に向けているんだ。真剣であり、どこか悲し気な瞳が僕を見つめている。


 僕は無言のまま。ケースを舞台上に置き、両手をついて飛び上がった。

 ありがとう、そんな声が聞こえ、笑顔が光っている。


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