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祭り日和
優しい日差しがそそぎ、青い空が広がる暖かな〝ザ・春〟という朝だった。ということは、まさに祭り日和。
気合いを入れて身だしなみを整え、着ていく服を選ぶ。昼までには時間はたっぷりある。
ふと、壁かけにある制服が目に止まった。ポンタの問いかけも浮かんでくる――「それが、お前の本気か?」
あの時、何も言えない自分がいた。
でも、あれが今の自分にできる精いっぱいなのだ。どんなに吹き込んでも、音はあれしかでない。だが、ポンタはそんなもんじゃないだろ、と言ってくる。
サックスを〝再び〟吹き始めて、たった1か月半じゃないか。なのに、なんで怒鳴られなくちゃならないんだ。やる気がないとまで言ってくる。
光喜がポンタに何を言ったか知らないが、これが俺の本気なんだよ。
引き寄せられるように視線が動き、黒いケースが映りこんでいる。
「サックスやってるんだ」――そう言った彼女の顔が浮かんできた。嬉し気にほほ笑んだその顔が。
大地、お前はサックスが好きか?
自分に問うてみる。
答えが――でたわけじゃないけど、制服に腕をとおす自分がいる。