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僕らのガッカリ桜  作者: ゆらゆらゆらり
安田大地編
12/58

小学4年――目覚め

 やっぱり、僕は母ちゃんが言うように、単純だったいうことなのだろう。

 サックスを始めてすぐに、おじさんが、「天才だ」なんて言うもんだから、完全に乗せられていた。ただ単におだてられていただけだろうが、いつのまにか、のめり込んでいた。そして、なにより好きになっていた。

 最近は、母ちゃんが「ダイエットに走ろうかしら」と言い出したので、付き合いで毎朝走っている。とはいっても、母ちゃんは自転車だ。

 どうやら、サックスには肺活量が大切とうことで、肺を鍛えるために仕組んだようだ。

 ちょっと、ムカつくが騙されてやってる。なんか、母ちゃんは楽しそうだし、自転車でも少しはダイエットになるだろうし。



 

 4年生の春、音楽教室での練習が終わり、友だちと昨日の桜祭りの話をしていると、おじさんが、「ちょっと、いいか」と声をかけてきた。

 僕らの教室は、ビックバンドが中心で大会などに参加しているが、他にも市民音楽祭などイベントにもよく参加している。僕のような下手くそは、大会にはでれないが、イベントになら参加できていた。


 なんか、(ステージで)やらかしちゃったかな。


 そんなことを思いながら、おじさんの後につづいて、教室を後にした。そして、おじさんたち先生がいる部屋にいくと、何やらチラシを渡してきた。


「小さなコンテストだけど、でてみるか?」


 どうやら、なにかコンテストがあるらしい。でも、チラシを見ると、いつもと違う。サックスを吹く人の写真が、でかでかと載っている。ひとりだけ。


 僕が顔を上げると、おじさんは、


「ソロサックスのコンテストだけど、でてみる気はあるか?」


 ソロ? つまり僕がひとりでということ?

 僕はすぐに、無理無理、と首を振った。みんなでの大会にもでていないのに、ひとりだなんて、とてもとても。それにコンテストというなら、5年生なのにソロパートも吹いている信くんのほうが……。

 そう口にすると、


「確かに、信太なら優勝するかもしれないな。でも、ちっちぃコンテストだし、信太は夏に大きな大会があるから」


 確かに夏には、ビッグバンドの大会を控えている。信くんは5年生ながら中心だし、そっちの練習で忙しくなるだろう。

 でも、僕なんかじゃ……。


「まあ、経験だから気楽にでてみろよ」


 そんな言葉に、ついうなずいてしまった。




 それから、コンテストに向けての練習が始まった。


 すぐに気づいた――気楽になんてウソだ。


 練習は夜遅くまで、ひとり居残りだし。おじさんとマンツーマンの指導になってるし。


 マジもマジ。大マジじゃんか。このウソつき。



 でも、誰かが言っていた言葉は本当だった。練習はウソをつかなかった。

 僕は運よく優勝することができた。


 うれしい。めちゃくちゃ、うれしいよ。でも、おじさん。ウソはやめてくれよ。


 全然ちっちゃくない。どでかい大会じゃないか。僕は地区代表となり、全国に行くことになってしまった。



 祝勝会で親戚が集まると、先生と生徒という関係から、ただの親戚に戻って、文句と愚痴をこぼしていた。

 どこか笑顔で、胸をときめかせながら。



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