小学4年――目覚め
やっぱり、僕は母ちゃんが言うように、単純だったいうことなのだろう。
サックスを始めてすぐに、おじさんが、「天才だ」なんて言うもんだから、完全に乗せられていた。ただ単におだてられていただけだろうが、いつのまにか、のめり込んでいた。そして、なにより好きになっていた。
最近は、母ちゃんが「ダイエットに走ろうかしら」と言い出したので、付き合いで毎朝走っている。とはいっても、母ちゃんは自転車だ。
どうやら、サックスには肺活量が大切とうことで、肺を鍛えるために仕組んだようだ。
ちょっと、ムカつくが騙されてやってる。なんか、母ちゃんは楽しそうだし、自転車でも少しはダイエットになるだろうし。
4年生の春、音楽教室での練習が終わり、友だちと昨日の桜祭りの話をしていると、おじさんが、「ちょっと、いいか」と声をかけてきた。
僕らの教室は、ビックバンドが中心で大会などに参加しているが、他にも市民音楽祭などイベントにもよく参加している。僕のような下手くそは、大会にはでれないが、イベントになら参加できていた。
なんか、(ステージで)やらかしちゃったかな。
そんなことを思いながら、おじさんの後につづいて、教室を後にした。そして、おじさんたち先生がいる部屋にいくと、何やらチラシを渡してきた。
「小さなコンテストだけど、でてみるか?」
どうやら、なにかコンテストがあるらしい。でも、チラシを見ると、いつもと違う。サックスを吹く人の写真が、でかでかと載っている。ひとりだけ。
僕が顔を上げると、おじさんは、
「ソロサックスのコンテストだけど、でてみる気はあるか?」
ソロ? つまり僕がひとりでということ?
僕はすぐに、無理無理、と首を振った。みんなでの大会にもでていないのに、ひとりだなんて、とてもとても。それにコンテストというなら、5年生なのにソロパートも吹いている信くんのほうが……。
そう口にすると、
「確かに、信太なら優勝するかもしれないな。でも、ちっちぃコンテストだし、信太は夏に大きな大会があるから」
確かに夏には、ビッグバンドの大会を控えている。信くんは5年生ながら中心だし、そっちの練習で忙しくなるだろう。
でも、僕なんかじゃ……。
「まあ、経験だから気楽にでてみろよ」
そんな言葉に、ついうなずいてしまった。
それから、コンテストに向けての練習が始まった。
すぐに気づいた――気楽になんてウソだ。
練習は夜遅くまで、ひとり居残りだし。おじさんとマンツーマンの指導になってるし。
マジもマジ。大マジじゃんか。このウソつき。
でも、誰かが言っていた言葉は本当だった。練習はウソをつかなかった。
僕は運よく優勝することができた。
うれしい。めちゃくちゃ、うれしいよ。でも、おじさん。ウソはやめてくれよ。
全然ちっちゃくない。どでかい大会じゃないか。僕は地区代表となり、全国に行くことになってしまった。
祝勝会で親戚が集まると、先生と生徒という関係から、ただの親戚に戻って、文句と愚痴をこぼしていた。
どこか笑顔で、胸をときめかせながら。




