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魔法の契りで幸せを  作者: 平河廣海
最終章 アフターグロウ
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第十四話 リベカの手記~バノルス編~

執筆完了したので、あとはすべて投稿すれば完結です!

それまで、もうしばらくよろしくお願いします!

 アブラハム十五年十三月十四日(リベカ三年六月二十日)。


 やった! やったよ!!

 イサクと、結婚できる!!

 バノルスに着いたんだけど、すぐにイサクが迎えに来てくれたの!

 すぐに宮殿に連れて行ってくれたんだけど、その途中の町とか、すごくきれいで、ずっと話しちゃった!

 なんでも、アリスが連絡してくれたみたい。

 ありがと、アリス。

 できれば直接伝えたかったな。

 その分、幸せになるからね!


 バノルスの人たちも、みんな歓迎してくれた。

 王様たちが配慮してくれて、悪い情報は流さなかったみたい。

 私が後任のオラクルを指名して、バノルスとの関係をより良くするために結婚したことになってたの。

 もしかしたら、これもアリスのおかげかな?

 イサクの気持ちも変わってなくて、改めてプロポーズされちゃった!

 本当、幸せ。

 数日前までの絶望が嘘みたい。

 まだ婚約の段階だけど、王宮には住めるから、いつでもイサクと会えるよ!!

 ご飯も一緒だって!!

 ああ、もうこんな時間だ。

 じゃあ、おやすみ。




 アブラハム十五年十三月一五日(リベカ三年六月二十一日)。


 ご飯おいしい! イサクと一緒に過ごせる! 楽しい! 最高!

 でも、与えられてばっかりだと申し訳ないから、「オラクル」を生かして、アブラハム陛下の助言をする役職に就くことになった。

 これで、少しはお返しできるかな?

 まだまだ恩返ししないとね!

 神器も頑張って作らないと。

 やっぱり、結構難しい。

 でも、魔法道具作り魂が燃える! どんとこい!




 アブラハム十五年十四月一日(リベカ三年七月七日)。


 結婚式の日程が決まったよ!

 陛下の即位十六周年の式典と一緒にやるんだって!

 しかも、かの有名なペトラ礼拝堂でだよ!!

 毎日イサクとはお花畑でお話ししたり、ご飯食べたり、時々街に行ったりするけど、やっぱり結婚したらずっと一緒だもん! すごく楽しみ!

 あと、子供も欲しいな。

 イサク、王子様だから忙しいけど、大丈夫かな?

 召使いさんもいるから大丈夫だと思うけど、やっぱり子育てしたいな。




 アブラハム十五年十六月三十日(リベカ三年十月六日)。

 ……明日、ついに結婚。

 だから今日は、独身最後の夜。

 本当はアリスに挨拶しに行きたかったけど、しょうがない。

 その分、幸せになるからね。

 だから、アリスも幸せになってね。

 それじゃ、おやすみ。




 アブラハム十六年一月一日(リベカ三年十月七日)。


 結婚式だった。

 今日から、イサクとは家族、夫婦。

 ちょっと、不思議。

 ガリルト(しん)様を礼拝しながらの結婚で、元オラクルなのに、ガリルトにいない。

 でも、今日からは、バノルスが母国だ。

 精一杯頑張ろう。

 新しい家族のためにも。

 アリスにもいい報告ができるように。

 じゃあ、今日はちょっと早いけど、おやすみ。

 イサク、末永くよろしくお願いします。




 アブラハム十六年二月一日(リベカ三年十一月七日)。


 あっという間に一か月。

 普段の生活は、結婚前とはあまり変わらない。

 私は「オラクル」を使って陛下の補助、イサクは様々な政務。

 ご飯は一緒にとって、花畑や町で一緒に過ごす。


 そして、一人の時には神器を作る。

 最近はだんだんと形になってきた。

 それは、銀色の剣で、青く輝く勾玉と、金色の柄が特徴的なもの。

 あとは、ガリルト神様の神託の通り、自力で動く魔法を込めて、魔力を入れるだけ。

 魔法を防ぐ機能は入れられたけど、やっぱり自力で動くっていうのは難しい。

 でも、もうちょっとでできそうかも。

 がんばろう。


 あと、変わったことといえば……。

 夜、一緒に寝ること。

 最近は、イサクの温もりが恋しくて恋しくて、夜になるといつもそのことばかり考えちゃう。

 でも、考えるだけで、胸の中がほんのりと温かくなる。

 大好きな人と一緒にいられるって、幸せだね。




 アブラハム十六年三月四日(リベカ三年十二月十日)。


 びっくりした!

 イサクが、王宮のみんなが、私の誕生日を祝ってくれた!

 すごくうれしい。

 まるで、おとぎ話の舞踏会のようなお祝いで、すごく楽しかった。

 料理もおいしかったし、大満足!

 幸せだなあ。

 これなら、アリスも喜んでくれるよね!




 アブラハム十六年八月十七日(リベカ四年一月二十三日)。


 ついに神器が完成した。

 「ケセフ・ヘレヴ」という神器で、自力で動いて、魔法も勝手に使ってくれて、剣の周りから「シールド」、「マジカル・ブレイク」の魔法が発動するから、簡単には傷つかない。そして、使用者以外の魔力を吸い上げる。この魔力を吸う機能は、吸う人を選べる。

 自分で動く仕組みは、「アナライズ」で人の魔力を感知して、それを攻撃するっていう感じ。だから、武器から出てくる魔力とかは感知できないけど、使用者が支持することもできるから大丈夫。

 切り札のような魔法もあって、数キロメートル以上にわたって巨大な魔力の大砲を放って、あらゆるものを破壊することができる。

 その分魔力の消費が激しいし、他の魔法道具と違って使用者の魔力も使うし、私しか使えない。


 勝手に使われても困るからね。

 一応、私の血を引くものが使えるようにしてるから、もしかしたら、血がつながってるアリスも使えるかも。


 それでも、もしマスグレイヴに侵攻されても、これを使えばなんとかできるはず。

 また一つバノルスに貢献できた。

 でも、まだ恩返しが足りないよね。

 次は、鏡の神器。

 名前は、……そうだな。

 ガリルト神様から神託を受けて作ったから、「ヤサコミラ・ガリルト」かな?

 明日は体を休めて、明後日から作ろっと。

 それじゃ、おやすみ。




 アブラハム十六年九月一日(リベカ四年二月十日)。


 最近、具合悪い。

 気持ち悪いし、今日、戻しちゃった。

 お医者様からは、異常が見られないということだったけど。

 とりあえず、寝よう。

 おやすみ。




 アブラハム十六年九月十日(リベカ四年二月十九日)。


 ……赤ちゃんが、できたみたい。


 ……やったあ!!


 イサクとの赤ちゃん!!

 お母さんになるよ!!

 もっともっと楽しくなるよね!!

 ちょっとつわりがひどいけど、私の子供のためならへっちゃら!!

 ちょっと神器づくりはお休みしなきゃだけど、産まれたら再開しよう。

 ガリルト神様に報告したら、それでいいって!

 神様のお墨付きなら、安心だね!

 今は子供第一!!

 ゆっくり過ごそう!!




 アブラハム十六年十六月二十九日(リベカ四年十月八日)。


 産まれた!!

 女の子だよ!!

 新しい家族、娘!!

 名前は、「フローラ」。

 イサクも、みんなも喜んでくれた!!

 もちろん、私も!!

 お腹をけられた時はびっくりしていたけど、意外とちっちゃいんだね。

 でも、そこがすごくかわいいの!!

 おっぱいも初めてあげたんだけど、すごい速度で吸い付くから、結構くすぐったかったな。

 でも、その感触がすっごく気持ちいいの!!

 本当、無事に産まれてくれて、感謝感謝!!

 もっともっと幸せになるね!!

 明日からは神器づくりを再開させたいけど、年末だからその後かな?

 リハビリが必要だから、私は休みだろうけどね。

 でも、お母さん、娘のため、お父さんのためなら、もっと頑張るよ!!




 アブラハム十八年十四月八日(リベカ六年七月十八日)。


 久しぶりに日記を開いたな。

 ずっと育児と仕事、神器作りで忙しかったから。

 今は、神器作りの最中なんだけど、その時は召使いさんにフローラの様子を見てもらってるから、大丈夫。ちょっとした休憩時間だよ。

 フローラはちゃんと歩けるようになったし、話せるようになったし、すくすく育ってる。

 おっぱいを飲ませてた感触が懐かしいな。

 もう、あの子も二歳になろうとしてる。

 幸せな時間って、あっという間だね。

 イサクと会えなかったときは、すごく長く感じたのに。


 さて、久しぶりに日記を開いたのには理由があります。

 神器の「ヤサコミラ・ガリルト」が完成しました!!

 これで、ケセフ・ヘレヴで魔力を持っていかれやすかったのが、改善されたよ。

 まあ、やっぱり私の血を引く人しか使えないけどね。

 その機能は、使用者に大量のマジカリウムを供給することで、使用者が魔法を使うときの負担を軽減したり、より上級の魔法を使うことができる、また、魔力を跳ね返すこともできるというもの。

 その魔力を使って、攻撃も可能だから、結構便利。


 でも、ガリルト神様に言われた通りの機能をつけたんだけど、なんで切り札は「別の空間に移動する」っていうやつなんだろう?

 うーん、わかんない。

 もしかしたら、次に作るように言われてる、「ヤサコニ・イオツミスマル」が関係してるのかな?

 いつになっても神様の考えることはわからないな。

 ま、それでも御心のままに頑張るけどね!

 あ、イサクのこと書いてないけど、元気だよ! 大好きだよ!

 家族みんな健康! 幸せ一家だよ!

 もっともっと幸せになろう!

 いつか、アリスにもフローラの顔を見せたいな。




 アブラハム二十一年七月二十三日(リベカ九年一月三日)。


 ついに、ヤサコニ・イオツミスマルが完成した。

 その機能は、空間を作り出したり、その空間から外に魔法を使ったり、決められた座標の範囲に魔法を使ったりする魔法で、外で使われた魔法は、「マジカル・ブレイク」で防ぐことができるというもので、ヤサコミラ・ガリルトほどじゃないけど、魔力の供給もできる。

 ちなみに、「座標」っていうのは、それがどこにあるか、どの時間か、どんな可能性の世界か、という、五次元的な考えをもとにしてる。

 要するに、正確な日時の点、もしくは範囲が定まってないと、ちゃんとその機能を使えないっていうこと。だから、この機能を使うのって、結構難しい。それに、その範囲って、結構狭い。だいたい数キロメートルくらい先が限度かな? 魔力にもよるだろうけど、外す危険性があるから、過信は禁物。

 これを応用すれば、ヤサコニ・イオツミスマルが作り出した空間同士をつなぎ合わせて、移動もできたりするんだけど、やっぱり座標をきちんと合わせないと、その機能は使えない。


 まあ、それでも夢のある神器だよね。

 だって、もしかしたら大きくなったフローラとか、ずっと未来にいる私の子孫とかに会えるかもしれないし。


 でも、あまり言いたくないんだけど、その切り札は、「魔法を滅ぼす」というもの。

 つまり、この世にあるマジカリウム、ポリマジカリウム、マジカラーゼを、すべて破壊して、マジカラーゼを産生するのに必要な遺伝子も破壊する、まさにすべてを終わらせる、終焉の魔法。


 こんなガリルトとバノルスを滅ぼすことになる魔法をなんでガリルト神様が作らせたのか、全くわからないけど、とりあえず私は三つの神器を完成させた。

 ガリルト神様が言うには、これで一区切りみたい。

 最期の神器の、ムーンライト・カノンは、急いで作っては欲しいけど、私は使えないんだって。

 どうしてだろう?

 でも、これで神様の力を宿した神器が、三つ揃った。

 これなら、どんな敵が来ても大丈夫!

 フローラも、イサクも、みんな、守るよ。

 もちろん、ガリルトも、アリスもね。




 アブラハム二十二年一月十五日(リベカ九年十月二十五日)。


 レア、行方不明。

 昨日、姿を消した。

 意味不明。

 最近マスグレイヴがバノルスに攻勢を強める。

 それ関係か。

 ガリルトは私が嫁いだこともあり、オラクルを取り込もうとしていると反発。

 バノルスは反論するも、両者折り合わず。

 このままではまずい。

 レア、どこ?

 アリス、無事でいて。

 私は神器を使えるように、練習を始めた。

 最後の神器を作りながら。

 間に合ってほしいが、たぶん無理。




 アブラハム二十二年五月三十日(リベカ九年十五月十日)。


 マスグレイヴ、バノルス側の国境沿いの町である、ベツレヘムへ侵攻。

 バノルスと交戦開始。

 一方、ガリルトとは依然折り合えず。

 また、「オラクル」を使えなくなったらしく、そのせいでやり玉に挙げられる。

 原因不明、バノルスじゃないはずなのに。

 なぜか、私はまだ「オラクル」を使える。

 余計意味わからない。

 苦しい日々が続く。




 アブラハム二十二年七月三日(リベカ九年十六月十四日)。


 ベツレヘム陥落。

 さらに進行し、王都カファルナウムとの間にある荒野の、ゴルゴタへ到達するのも時間の問題。

 私は神託で、ケセフ・ヘレヴ、ヤサコミラ・ガリルト、ヤサコニ・イオツミスマルの存在を明かすよう言われ、陛下や重鎮、イサクたちへ報告。

 出兵することに。

 ムーンライト・カノンは明かしていないが、それは、まだ完成していないからだと思う。

 一方、ガリルトでは内戦勃発。

 ただでさえ手薄なのに、鎮圧のために別動隊動員。

 アリスの消息不明。

 無事でいて。




 アブラハム二十二年七月四日(リベカ九年十六月十五日)。


 もしかしたら、これが最後になるかもしれない。

 今日、家族みんなで食事をとった。

 やっぱり、大好きな人と一緒にいられるのは楽しい。

 すごく落ち着く。

 でも、今日の料理はちょっとしょっぱかった。

 もう、会えなくなるかもしれないから。

 そしたら、フローラが私の心配をして、小さな体を広げて抱きしめてきたの。

 そしたらね、もうダメ。

 我慢できなくて、私も抱きしめて、わんわん泣いちゃった。

 そんな私を、フローラは抱きしめながら、私の背中を撫でてくれた。

 本当に、いい子。

 イサクも私たちを抱きしめて、さっきまで一緒に過ごしてた。

 でも、いつまでも起きているわけにはいかないから、これからみんなで一緒に寝る。


 最後かもしれない。


 そのぬくもりを、しっかりと体に、心に焼き付けよう。

 くじけそうなときに、支えになってくれそうだから。


 でも、私は絶対に死なないよ。

 絶対に戻ってくるよ。


 ガリルト神様に命じられて、神器を作ったんだもの。

 ……みんな、大好きなんだもの。


 特にケセフ・ヘレヴは、近接の戦いをしにくい魔法使いにとって、とても大きな火力になるはず。

 それにヤサコミラ・ガリルト、ヤサコニ・イオツミスマルのサポートがあれば、大丈夫だ。

 でも、これ乗り越えたら、しばらく動けないだろうな。

 神器って、すごく魔力使うもの。

 切り札なんて使ったら、それこそ体壊しちゃう。


 でも、みんなを守るためなら。

 生きて戻ってくるためにも、がんばろう。

 そして、みんなを抱きしめて。

 ただいまって。

 そう言うんだ。


 できれば、アリスにもそう言いたいな。


 どうか、みんな、無事でいて。

 私を元気な姿で出迎えて。

 次は帰ってきてからかな?

 そして、ムーンライト・カノンを完成させてからかな?

 わからないけど、今は、今やるべきことをやろう。

 それじゃ、おやすみ。




 アブラハム二十三年八月二十八日(リベカ十一年二月九日)。


 今日、やっと目を覚ました。

 バノルスは、みんなは、無事だった。

 最初に目を覚ました時、真っ先にフローラが抱き着いてきた。

 続いて、イサクも。

 最初は何があったのかわからなかったけど、次第にわかってきて、私も抱きしめて、みんなで泣いた。


 守りきれたのだ。

 でも、守り切れなかったものもある。

 あの日、私はゴルゴタで神器を使ってマスグレイヴ兵と衝突した。

 ただ、こちらの兵は数千、たいしてマスグレイヴは数十万。

 勝ち目がない。

 現に、最初は防戦一方で、なすすべなし。

 どんどん死んでいった。

 私も神器を使って応戦したが、数の暴力に勝てない。

 だから、私はケセフ・ヘレヴの切り札を使った。

 あっという間に多くの敵軍を殺した。

 正確な数なんてわからない。


 ただ、潮目が変わった。


 はずだった。


 その後、自動でケセフ・ヘレヴが動くのだが、私が予期していなかった動きをした。

 次々と私たちバノルスの魔力も吸い上げ始めたのだ。

 それは、私が指定していない対象だった。

 指定した対象外から魔力を吸い上げる機能が暴走した。

 慌てて私はつながりを解除した。


 でも、駄目。


 止まらない。


 かえって暴れまわってしまって、何回も切り札のような魔法を連発してしまっていた。


 その結果、マスグレイヴ軍は全滅。

 バノルス軍も止めようとしたが、なすすべなく、あっという間に壊滅。

 私も残りの神器を使って応戦したが、神の力を暴走させたものに太刀打ちできなかった。


 それに、もう魔力も残り少ない。

 魔力も吸われ続ける。

 そもそも、魔法なんか通じない。

 もはや、生き残ることすら絶望という状態。


 でも、死にたくない。

 だから、とっさに考えた。

 ヤサコニ・イオツミスマルの中にある空間に、さらに別の空間を作り、それを神の力で強固に守る。

 そして、その空間にヤサコミラ・ガリルトの切り札で飛ばすのだ。

 ヤサコニ・イオツミスマルの切り札で魔法を滅ぼすのも手だったが、そうなると、魔法に依存したバノルス、ガリルトは今度こそ滅ぶ。

 だから、封印という手段しかない。

 同じ神の力だから、どこまでもつかわからなかったが、一刻の猶予もなかった。

 そして、私は残った自分の魔力をすべて使って、そのまま倒れた。


 そして、今起きたということは……。

 イサクに聞いた話では、全てが終わったらしい。

 おそらく、封印に成功したのだろう。

 ガリルトの内戦も終結したけど、バノルスが調停した形になって、実質ガリルトがバノルスの支配下になってしまった。

 そのうえ、ゴルゴタでの戦いで生還したバノルス軍は、三人。

 私と、他の二人だけだった。

 それ以外はどうなのか聞いたらしいが、顔面蒼白でこう言ったらしい。

 「敵味方問わず、骨しか残らなかった」と。


 私のせいだと思った。

 私が、神器を作ったから。


 でも、イサクは言ってくれた。

 私のせいじゃないと。

 ガリルト神様のせいじゃないと。

 もし神器がなかったら、バノルスが滅びていたと。

 それを守ったのだから、悔いる必要はないと。


 それでも、私の心は苛まれたままだ。

 まだ、ケセフ・ヘレヴは残っている。

 災厄の種が残っている。

 それを破壊しないことには、永遠に破滅への道が続く。

 いくら神の力で封印しているとはいえ、同じ神の力だ。

 いつ破れるか、わからない。


 ……ああ。

 わかっちゃった。

 ガリルト神様は、全部知ってたんだ。

 当たり前だよね。

 神様なんだもん。


 多分、最初にバノルスとガリルトを守るために、神器を作らせたんだろう。

 それが、ケセフ・ヘレヴ。


 でも、私が初めて作る神器だったから、完璧じゃなかった。

 だから、それを封印する手段が必要だった。


 それが、ヤサコミラ・ガリルト、ヤサコニ・イオツミスマル。


 そして、最後に破壊するのが。


 ムーンライト・カノン。


 でも、まだ話しちゃダメ。

 だから、いったんこの書に記して、ヤサコニ・イオツミスマルの空間にしまおう。

 ケセフ・ヘレヴを封印した空間との境界に。


 そして、フローラか、もっとずっと先の子孫か、わからないけど、みんなで協力して、ケセフ・ヘレヴを破壊できるように、神器を遺そう。

 ムーンライト・カノンも遺そう。


 だから、急いで作らないと。

 もう、魔力消費性疲労症は治っているけど、体がボロボロ。

 二回も切り札を使ったのだから、しょうがない。


 でも、もうちょっと持って。

 ムーンライト・カノンだけは、作っておかないと。


 まだできてないけど、ムーンライト・カノンは、自動で魔法を使ってくれたり、使用者の魔力を多く使うことで、より強力な魔法を使えたりする神器。

 魔力の仕組みは、ケセフ・ヘレヴ以外の神器と同じで、マジカリウムを使用者に供給する。

 切り札は、使用者の全魔力を使って、全てを破壊する魔法。


 つまり、ケセフ・ヘレヴを破壊するための神器。


 こんな体だから大変だけど、明日からがんばろう。

 もしかしたら、残りの時間も少ないかもしれない。

 だから、イサクとフローラと一緒に過ごす時間を大切にしよう。

 そして、できれば、アリスとまた会いたいな。




 アブラハム二十五年四月二十日(リベカ十二年十四月一日)。


 今、ムーンライト・カノンが完成した。

 今からイオツミスマルに、この書と一緒に封印して。

 それから、フローラに代々受け継ぐように伝えなきゃ。


 でも、もう、歩けない。

 魔法を使うのでやっと。


 多分、封印したら、そのまま力尽きちゃうだろうな。

 これが、死か。


 もっと、もっと、みんなと、イサクと、フローラと、……アリスと、一緒にいたかったなあ。

 結局、アリスと会えなかったなあ。


 会いたいよ。

 もう一度、姉妹一緒だった時に、戻りたいよ。

 もう一度、家族みんなで、幸せに暮らしたいよ。

 できることなら、家族みんなで、アリスと一緒に過ごしたかったよ。


 でも、もう、できないんだね。


 ごめんね。


 みんな。


 これを読んでいる人って、いるのかな?

 ケセフ・ヘレヴはこのまま、封印されたままなのかな?

 それとも、封印を破って、みんな壊れちゃうのかな?


 そうならないように。

 これを読んでいるあなた。

 ヤサコニ・イオツミスマルの中にいるということは、フローラか、孫か、あるいはもっと向こうの子供たちか。


 何としてでも、ケセフ・ヘレヴを破壊して。

 このつらい運命を背負わせたことは、本当にすまないと思っているの。


 でも、お願い。

 私は、あなたたちの幸せも願ってるの。


 だから、お願い。

 全てを、終わらせて。

 それだけが、私の願いです。


次回、第十五話「想いのバトン」。明日投稿になります。お楽しみに。

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