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魔法の契りで幸せを  作者: 平河廣海
第三章 光
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第十一話 大丈夫なわけないでしょ!?

 ……寒い。

 だるい。

 風邪のような体の重さを感じて、五月は目を覚ます。

 のどの痛みや鼻水といった症状はないが、体を起こすのもおっくうで、布団から出られない。

 五月は、魔力消費性疲労症だと直感した。

 昨夜の「オラクル」のせいだろう。

 いくら魔力量が増えているとはいっても、一週間分の予知をする「オラクル」は、やはり体への負担が大きい。

 そのため、いつも「オラクル」をした翌日は魔力消費性疲労症になってしまうのだった。


 カラン! カラン!

 起床の合図の金が聞こえる。

 それでも起きることができず、五月は布団にくるまったまま。

 全身を包み込むぬくもりの中にいると、幾分か寒気も和らぎ、その心地よさに、いつの間にか意識が遠のいていった。



 ※



「……五月ちゃん、五月ちゃん?」


 ……友菜ちゃんの声が聞こえる。

 体がゆすられている気がする。


「う、うーん……」


 どうやら、友菜ちゃんが起こそうとしてくれたみたいで、五月はそれでようやく目が覚める。


「……おはよう、友菜ちゃん」


 あまりの寒気に、布団にくるまりながら友菜ちゃんの方を向く。


「大丈夫? いつも五月ちゃんが先に起きるのに、今日はやけに静かだったから……。それに、顔色悪いけど……」

「……うん。いつものことだから大丈夫……。でも、今日は寝かせて……」


 そのまま五月は布団にくるまろうとする。

 実際、ただの魔力消費性疲労症なので、しばらく休めば元気になる。

 今まで、「オラクル」の翌日は朝の内は寝込んでいたが、すぐに体調が元通りになっていた。

 魔力がついてきた最近では、朝がきつくても、お昼ごろには元気になるほどだ。

 しかし、そのことを知らない友菜ちゃんは、明らかに具合が悪そうな五月を前に、とても大丈夫なようには思えない。


「大丈夫なわけないでしょ!? 早由先生を呼んでくるから、そのまま寝てて!」


 そう言い残すと、友菜ちゃんはあっという間に部屋を出ていき、五月が一人残された。

 そのまま布団にもぐっていると、扉が開け放たれ、友菜ちゃんとともに早由先生が駆け込んできた。


「どうしたんだい? 顔色悪いけど」

「……大丈夫です。よくあることなんで。すごく寒くてだるいですけど、一日寝てれば治ります……」


 早由先生に目を合わせながらつぶやく。

 正直、話すのもしんどい状況なので、早く寝たかった。

 ただ、放っておくわけにもいかないのか、早由先生は体温計を取り出し、五月に手渡す。

 しぶしぶ五月は受け取り、脇に挟んで測るが、やはり平熱。

 魔力消費性疲労症だと五月は確信するが、早由先生と友菜ちゃんは困惑する一方だ。


「……とりあえず、今日は休んで、明日どうなるか様子を見よう。もしかしたら風邪かもしれないから、あまり部屋を出るんじゃないよ」

「……わかりました」

「じゃあ、友菜ちゃん、ちょっとおかゆを作るから、申し訳ないけど、あたしが持ってくるまで、様子を見ててくれないか。ここで朝ごはん食べてていいから、先にそれを持ってくるよ」

「あ、はい。わかりました。わざわざありがとうございます」


 そのまま早由先生は部屋を出て、食堂へと向かう。

 友菜ちゃんは、机の上を片付ける。朝食をとるスペースを確保するためだが、五月の机の上も整理してくれた。


「……ごめんね。迷惑かけちゃって」


 布団の中から五月は頭を下げる。

 体が重くて、少し気分も落ち込み気味だが、それを打ち払うような、明るい笑顔を友菜ちゃんは向けてくれた。


「気にしないで。誰だって、具合が悪いときはあるし。きっと、高校に入ってからの疲れが来ちゃったんだよ。だから、今日は休もう? うちも傍にいるから」


 その笑顔や、心遣いがありがたい。

 五月のことを思ってくれていることが伝わってきて、友菜ちゃんを気兼ねなく頼ろうと思える。

 まるで、ズッ友みたいに。


「……ありがと。友菜ちゃん」

「うん」


 そうやって二人で話していると。


「はいよ、友菜ちゃん。先に朝ご飯持ってきたよ。ここで食べていいから、食べ終わったら食堂に持ってきて」

「ありがとうございます」


 早由先生が友菜ちゃんの分の朝食を持ってきてくれた。

 友菜ちゃんはそれを受け取り、自分の机の上に置く。


「じゃあ、五月ちゃん。ちょっとおかゆ作ってくるから。少し待っててな」

「すみません」

「なあに、気にすることないよ」


 そのまま早由先生は去っていった。


「五月ちゃん、ごめんね。先、食べちゃってるね」

「うん、大丈夫」

「……五月ちゃん、ちゃんと休んでるんだよ。眠れなくても、布団に横になるだけでもいいから。でも、おかゆができた時、寝ちゃってたらどうする?」


 友菜ちゃんは食べると言いながら、まだ食事に口をつけずに、五月のことを案じてくれている。

 五月は、ありがたく思いながらも、苦笑しながら言った。


「起こしてくれる? いつもこんな調子なんだけど、すぐ元気になるから。それに、だんだん楽になってきたし」


 実際、話しているうちにどんどんだるさ、悪寒が抜けてきていた。

 友菜ちゃんは五月の顔色を見るが、先ほどまでの五月が嘘のように思え、驚いた。


「本当だ。顔色、よくなってるよ。でも、無理しちゃだめだからね」

「うん」


 何度も忠告しながらも、微笑んでくれる友菜ちゃんの存在が、とても心強かった。


次回、第十二話です。明日投稿になります。お楽しみに。

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