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魔法の契りで幸せを  作者: 平河廣海
第一章 胎動
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第二十四話 望み

第一章第一話を、今回の投稿前日に、一部加筆修正しましたので、まだお読みになられてない方は、一度読まれることをお勧めします。

内容は変わっておりません。

「リーブ・ヤサコニ・イオツミスマル。

 ディスコネクト・フロム・ヤサコニ・イオツミスマル」


 その瞬間、突然真っ暗になる。

 地面に足がつくが、わたしは立つことができず、倒れこむ。

 勾玉から出て、宝物殿の中に移動したのだ。

 閉め切っているので、月明かりすら届かない。


 ……今日はもういいだろう。

 時刻は(うし)の刻あたりだろうか。

 明日に支障が出るかもしれないくらい、遅い時間になってしまった。

 ……もう、力が入らなくて、体が動かないから、あまり関係ないかもしれないけども。


 ……運命の子が、あの人が、そして、周りの大切な人が。

 みんな、あの魔法の副作用に巻き込まれてしまった。

 とりあえず、運命の子が死ぬという最悪の事態には至っていないが、あの人との約束を果たせそうにないほど、厳しい状況だ。

 それでも、何とか大切な人たちにようやく打ち明けて理解を得られ、困難に立ち向かう姿勢を見せたのは、わたしの狙い通りの展開になったので、一歩前進と言ったところか。

 今後は、あの人が協力してくれるだろう。

 あの魔法のせいで、運命の子しかあの人と話せず、見ることができないので、状況を詳しく知ることはできないのだが。


 あの時は、どうしようもなかった。

 でも、あの魔法を思い出した。

 あの人から、魔法を教えてもらった時に、以前その魔法を作り出したという話を。

 その魔法を使った。

 わたしと、あの人、それぞれの思いにかなう魔法。

 そう思っていた。


 でも、運命の子を見つけた時、彼女の周りで起きていることに、違和感を覚えた。

 いくらなんでも、あの人が約束を果たすのに、障害が多いのではないか。

 そう思った。

 それからだ。

 あの魔法を調べるようになった。

 確かに、あの人が言っていた通りの効果だった。


 ただ、想定外のことがあったのだ。

 あの魔法のせいで、運命の子は、大切な人と親しくなるほど、大切な人とともに、不幸に巻き込まれてしまう。

 契約とでもいうべきだろうか、それに縛り付けるような効果もあったのだ。

 もともと害を与えるための魔法であり、呪いなのだから、その害を与え続けるためだと考えるのは、想像に難くない。

 それでは、永遠に幸せになることなどできない。

 柵に囚われたままだ。

 そのことが、わかってしまった。


 背筋が寒くなった。

 このままでは、あの人が約束を果たせないのではないだろうか。

 そのために、源家と呼ばれるようになった、わたしや、わたしの子孫とともに、永遠に呪われ続けるのではないだろうか。

 そう思った。


 わたしは、何としてでも避けたかった。

 あの人がわたしとの約束を果たして欲しかった。

 また幸せになって欲しかった。


 その時、思いついたのが、未来を見る「オラクル」と、魔力や身体機能を亢進させる「ライジング」、神器であり、空間を操り、時間、可能性も操作できる「ヤサコニ・イオツミスマル」の、複合魔法に、他の魔法を組み合わせることによって、運命の子に、魔法を教えるものだった。

 呪いの対象となってしまった運命の子が、幸福になるには、魔法を使うことしか方法がなかった。


 運命の子が幸福になるには、人々を惑わす魔法を滅ぼすことが必要不可欠だと考え、あの人にも魔法を滅ぼすと誓ったが、あの魔法の副作用には、魔法以外では対抗できないから、苦渋の決断だった。

 あの人への約束を反故にするばかりか、さらに運命の子を苦しめるかもしれない、諸刃の剣だったからだ。

 鈍器で殴られたように、鈍い痛みが胸に広がった。

 気が気でなかった。


 その予想通り、魔法を使えるようになったが、不幸のきっかけになってしまい、さらに追い詰めてしまった。

 魔力暴走症、魔力消費性疲労症を引き起こして彼女が倒れたときは、目の前が暗くなった。

 取り返しがつかないことをしてしまった。

 そう思った。


 それでも。

 これだけ理不尽な目に遭っても、彼女は負けなかった。

 言いえて妙だが、呪いに対抗すると言ってくれた。

 呪いという、不幸への対抗手段が魔法以外ない中で、狙い通り魔法を習得しようとしてくれた。

 大切な人たちの理解も得られたのだから、わたしはほっと胸をなでおろした。

 それに、わたしには見えなかったが、あの人の話も彼女はしていたので、おそらく、あの人が教えてくれるだろう。

 これで、不幸に対処できるようになれればいいのだが。


 ただ、あとは見守り、信じるしかない。

 未来に魔法をかけることはできるようになったが、夢のようなものを見せるだけにとどまらせておかないと、混乱させてしまうかもしれず、今まで以上にイオツミスマルを使って、今の彼女に干渉しようとするのは、あの人の正体を知った彼女に、余計な混乱を与えたり、わたしやあの人、ご先祖様、そして自分の存在する意味まで、見失ってしまうかもしれないからだ。それで絶望して、自決を思い立つかもしれないほどだ。


 それに、未来に魔法をかけるには「ライジング」を使わなければならないが、これ以上「ライジング」を使った複合魔法を使ってしまうと、わたしは死ぬだろう。

 絶大な効果の代わりに、「オラクル」以上の負荷が体に降りかかるからだ。

 それを「オラクル」などとともに複合魔法として使うのだから、なおさらだ。

 現に、二回使っただけだが、一回目には一か月ほど寝たきりになり、二回目を使った今は、しばらく休めば動くかもしれないけれども、体が全く動かない。

 ……おそらく、次が最後だ。

 もしわたしが死ぬと、いざというときに何もできない。


 だから、これ以上できるのは、次の好機が訪れるまで、ひたすら、見守り、信じること。

 そして、もしもの時に備えて、色々調べておくことだ。

 それだけなら、勾玉の中で「オラクル」や、「アナライズ」などを使うだけだから、数年はもつだろう。


 もう、わたしにできることは少ない。

 彼女とあの人なら、できる。

 そう信じるしかない。

 彼女だって、わたしや、あの人の血を引いているのだ。

 家族同然だ。

 わたしたちのせいで不幸になるなんて、やりきれない。


 だから、どうか……。

 彼女を、幸せにしてください。

 わたしとの約束を、果たしてください。

 幸せになってください。

 お願いです……。

 母様。


次回から第二章になります。

第二章のタイトルは、「桜空伝」です。

また、第一章でも、何か書きたいものができましたら、執筆して、割り込み投稿したいと思います。その際には後書きに書いてお知らせしたいと思います。


次回の投稿は、令和元年九月二十日になります。次回も読んで頂けると嬉しいです。

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