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六話 第四の暗号

 暗号を解いて一年五組に行けば、世羅(せら)が仁王立ちで待ち構えていた。


(のぞみ)ちゃんと玲兎(れいと)を倒したようね。でも、あの二人は四天王の中でも小物。私こそが四天王最強の」

「御託はいいから次の暗号よこせ」

小坂(こさか)君って冷たい。紅羽(くれは)にまで冷たくしてないでしょうね? 紅羽を泣かせたら承知しないわよ」

「泣かせてはないが……」

「色気より食い気だったけどね」

「紅羽みたいな美少女と一緒にいて、食い気に走ったの? 小坂君、○○○○ついてるんでしょうね?」

「うぉいっ!」


 下品な言葉を堂々と口にした世羅に、(かなう)の方が照れてしまった。熊野実(くまのみ)と気まずくなりそうな発言は慎んでもらいたい。


「この程度で焦ってどうするのよ。小坂君も男子なら、下ネタくらい話すわよね? 紅羽も、子供の頃にお父さんとお風呂に入った経験あるでしょう? そこで見たでしょう?」

「熊野実、やっぱり部活を辞めろ。変態と一緒にいちゃいけない」

「小坂君は女子に夢を見過ぎね。こんなの普通よ。そうでしょう、紅羽?」

「誤解だよ! 私、ち……なんて言ってないからね!」

「俺は熊野実を信じる」

「ありがとう、小坂君!」

「あー、やだやだ。二人そろって私を悪者にしちゃって。まあいいけどね。友達のためなら、私は喜んで悪者になるわ。見ていてじれったいったらないもの。下ネタはここまでにしておいて、答え合わせよ」


 勝手に下ネタに走っておきながら、世羅は何事もなかったかのような態度だ。

 ドッと疲れた気分になりつつ、答えを伝える。ルート5の二文字をずらしてレイト5になったと。


「うん、正解」

久我(くが)のクラスを知らない生徒が不利になるし、改善した方がよくないか?」

「考えておくわ。とりあえず続きね。第四の暗号よ」

「まだあるのかよ。最後だと思ったのに」


 ここまでで、望、久我、世羅の三人に会っている。だから第三の暗号で最後だと思ったが、まだ続くようだ。


「本番は、紅羽も私たち側だからね。四つの暗号を解いてもらう予定なの」

「納得した。てことは、これが最後なんだな」

「最後なだけあって、一番難しくしたわよ。解けるかしら? さあて、部室に戻って待つとしましょうか」


 さすが恋人同士なだけはあると思った。久我も挑発的なセリフを言っていたが、世羅も同じ言葉を残して立ち去った。

 なんだか悔しいので、解いてやるという気になる。


『天のグループが存在する。あるグループは一つの顔を持ち、あるグループは二つの顔を、またあるグループは三つの顔を持つ。

 しかし、実は隠された小さな顔を持つグループも存在する。

 隠された小さきを()()。小さき四天王を。さすれば答えが()()であろう。

 ※答えが分かればパートナーに伝えること。Good Luck』


 過去の三つとは毛色の異なる暗号だ。数字ではなく文章になっている。


「四天王って、暗号研究部の四人のことか? 小さき四天王となると……」

「なんで私を見るの!」

「一番小さいし」


 先ほど、世羅は「四天王」と言っていた。いつも通りバカなことを言っているとしか思わなかったが、ヒントだったのかもしれない。

 そして、四天王が暗号研究部四人を指しているなら、小さき四天王は最も幼く見える熊野実だ。


「確かに私は小さいけど、望ちゃんの可能性もあるじゃない。学年的な意味なら、望ちゃんが一番小さいよ。名前も『小坂』だし、そっちの意味かも」

「可能性はあるな。『小さき』って単語を見た瞬間、熊野実の顔しか思い浮かばなかった」

「失礼な! 小さいのが私のアイデンティティだからね! 小さくて可愛いのが熊野実紅羽だもん!」

「誰も悪いとは言ってなくて。つうか、自分で可愛いって言うなよ」

「小坂君は、私を可愛いと思ってくれないの?」

「まあ……その……可愛い、かもな」


 熊野実が可愛いのは論をまたない。クラスの男子にも人気がある。


「もっと言って。私は、小さいってバカにされて怒ってます。もっとたくさん可愛いって言ってくれないと許さないから」

「バカにしたわけじゃないんだが」

「言ってくれないの?」

「分かった。分かったよ。熊野実は可愛い。お世辞じゃなくてマジで可愛い」


 やけにしつこかったので、叶も観念して熊野実を褒めた。

 心にもない嘘をついているわけではない。本当に可愛いと思っている。


「んふふふ、満足満足」

「もういいか? 暗号を考えるぞ。まず、四天王は暗号研究部の四人でほぼ間違いない。小さきってのが誰を指してるかは分からないが」


 学年や名前なら望、身長なら熊野実だ。


「あと気になるのは、『見よ』と『照る』だな。傍点がついてるし、重要な言葉なんだろ」

「文章的にも変だよね。『答えが見える』とか『答えが照らされる』とかじゃなくて、『答えが照る』になってる。一般的な言い回しじゃない」

「天のグループが分からないな。一つの顔とか二つの顔とかも」


 世羅が一番難しいと豪語するだけあり、全然解けない。

 天のグループとは何か。顔とは何か。


「注釈で『パートナーに伝えること』って書いてあるけど、これはなんだろ?」

「言葉通りじゃないのか? 俺から見れば熊野実、熊野実から見れば俺」

「パートナーに伝えてどうなるの? 向かう場所が分かるわけでもないのに」

「うーん……一つずつ順番に考えていくか」


 あっちもこっちも考えたところで分からない。何かが解ければ、そこからつなげて解けるのではないかと思った。


「天のグループ。俺が思い浮かべたのは星座だ。四季でグループ分けしてるか、北天と南天か」

「でも三つのグループがあるっぽいよね。一つの顔、二つの顔、三つの顔って。四季だと四つのグループだし、北天南天だと二つだよ?」

「だよなあ」

「天はそのままの意味で天じゃなくて、別の意味になってる?」

「天気、天皇陛下、天ぷら、天丼」

「後半が食べ物になってるのはなんで?」

「俺は、色気より食い気の男らしいからな」

「根に持たないでよ」


 熊野実とバカなやり取りをしていても答えは出ない。

 これは難問だ。最後にきてギブアップしてしまうのだろうか。

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