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第四話

 ルナと再契約を完了させた後、ルナの介助の元、部屋で食事を済ませると、見計らったかのようにディティラスがライトニングを伴って現れた。

「体の調子はどうだ?」

「体はまだ思うように動かないけど、多分何日かすればもう少しマシにはなると思う」

「そうか。無理はしないようにな」

「了解」

「あと体のことだが、ライトニングに話したら、体が元に戻る様子を見てみたいそうだ」

「今ここで?」

「ああ」

 リディアリアの部屋の中とはいえど、部屋の中にはルナもいる。それに医者であるライトニングの前とはいえ、実際の関係は義親子。なんだか気恥ずかしさがある。サキュバスといえど、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 けれど恥ずかしがっていても仕方がない。この体の原因を突き止めるには、ライトニングの協力が必須になるからだ。

「わかったよ。魔法を使った方がいい?」

「できれば、お願いします。使用した方が状況もより把握できると思いますので」

 リディアリアは覚悟を決め、コクンと頷いて瞼を閉じた。

「《吸収(ドレイン)》」

魔法を発動させたリディアリアの顔にそっと手を添え、ディティラスがキスを落とした。前回と同じく触れるだけの優しいキス。前回と違うのは流れ込んでくる魔力の量だ。何十倍もの魔力が口づけを媒介として、ゆっくりと流れ込んできた。

「……んん」

(あの時は意識してなかったし、微量だったからかもしれないけど、確かに魔力が魔核に溜まっていくのがわかる……)

 リディアリアの魔核の状態を例えるとすれば、魔力がどんどん生み出されているにも関わらず、なぜか半分くらいしか溜まらないという不思議な状態だった。このことに気づいたのは本当にたった今で、内心首を傾げてしまう。

 でもなぜかディティラスから魔力をもらうことで魔核が安定し、魔核にどんどん魔力が溜まっていった。ちょうど満タンになったところで、体の中心部分がピキ、と何かがひび割れたような音を発した。けれど痛みは特になく、気のせいだろうと頭の片隅においやり、ディティラスの胸をトントンと叩く。それを合図に、ディティラスの唇は離れていった。

「あ、元に戻ってる!」

 瞼を上げて、自身の体を見てみれば子ども姿ではなく本来の姿へと戻っていった。

 嬉しさに思わず声を上げれば、リディアリアと同じようにルナとディティラスも喜んでくれていた。ライトニングも同じ反応をしているだろうと視線を向ければ、ライトニングは難しいそうな顔をしていた。けれど視線が自分に向けられていることを知ると、すぐに表情を変える。まさに作り笑顔そのものだった。

「魔力で本来の姿に戻るとは、実に不思議なものですね……。診察をしたいので、もう少しお話などさせていただいてもよろしいですか?」

 ライトニングが作り笑顔をする場合は、大抵よくないことの方が多い。なんだか嫌な予感がするが、自身のことだ。聞かないわけにはいかない。幸いルナとディティラスはリディアリアの方をずっと見ていたから、ライトニングの表情には気づいていない。

「もちろん、特に予定もないし大丈夫。もうあとは話をするだけっぽいし、ディティラスは魔王の仕事に戻ってもいいよ? 仕事の邪魔をあまりしたくないし、終わったら顔を見に行くから」

「そうか?」

「うん。私のせいで仕事が止まっちゃうのもなんだか申し訳ないし。……ね?」

「わかった。では、昼食は一緒に食べるとしよう」

 仕事がよほど溜まっているのか、ディティラスはリディアリアの頭をひとしきり撫でると、名残惜しそうにではあるが、部屋を去っていった。

「ルナ、ごめんけど、新しい服を持ってきてくれないかな? 一応大きめの服を着てきたけど、なんか少し小さい気がして」

「わかりました。少々お待ちください」

 ルナは丁寧にお辞儀をすると、リディアリアの服をとりにリディアリアの部屋へ向かった。

「さて、と。これで話はできるかな?」

「お気遣いありがとうございます」

「いや、どんな話か分からない以上、私もあまり聞かれたくないし。特にあの二人には尚更、ね」

 別にディティラスもルナもわざわざ外に出す理由はなかった。診察といっても、ライトニングの口ぶりからして十分もあれば終わるだろうし、服に関しても特にきついところもなく、むしろちょうどいいくらいだからだ。

 けれど敢えて理由をつけて外に出したのは、ライトニングがこれからリディアリアに告げるであろう言葉を、二人の耳に入れる前に聞いておきたかったからだった。

「……で、正直な話を聞かせてもらっていいかな?」

「わかりました。リディアリア、貴女の余命はあと半年ほどになります」

「…………はい?」

 ライトニングの話は想像の何倍も上をいっていた。

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