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第十三話

 ディティラスに抱きかかえられたまま、城内を移動し、リディアリアの部屋までやってくると、ディティラスはようやく被せていた上着を取ってくれた。

「悪いな、あれしか方法がなくて」

「ううん。助かったよ」

 ディティラスが来なかったらと考えると、それだけでも恐ろしい。

「それにしても、どうしてあそこを通りかかったの?」

「子どもの姿に戻ってしまう時間だったからな。念のため様子を見ようと、休憩がてら鍛錬場に向かっていたんだ」

 過保護な発言ではあるが、ディティラスの過保護な行動により、リディアリアは助かった。こればかりは感謝するべきだろう。

「本当に助かったよ、ありがとう」

「いや、したくてやったことだ。気にするな」

 ぐしゃぐしゃになった髪の毛を手櫛で整えていると、部屋の扉をノックされた。

「リディアリア様、いらっしゃいますか?」

 その声はルナのもので、安心して声を出す。

「いるよ。入ってきて大丈夫だよ、ルナ」

「失礼します」

 そうって入ってきたルナの息は少し弾んでいるように見えた。あの場からいなくなったリディアリアを捜してくれていたのだろう。

「ごめんね、先に戻ってきちゃって」

「いえ、私が遅かったのが悪かったので。それに途中でスノウマリーにも会いましたので、おおよその状況は理解できました」

 各々が最悪の事態を考慮して、渋面を作る。

「どう思う?」

 そう切り出したのはリディアリア。

 自身の考えだけではなく、ディティラスやルナの意見も聞きたかった。

「考えすぎ……だといいんだがな」

「私もだよ。けど、私が隠れているとき、どこに隠れたの、とかあのサキュバス、とかいってたから、それは厳しいと思う」

 あれは明らかにリディアリアを探していた。

 ディティラスに助けられたが、ディティラスの嘘はあの場を凌ぐだけのものに過ぎない。それにすれ違う間際のスノウマリーの表情。あれは絶対に気づいていたはずだ。ディティラスが抱える子供がリディアリアであることに。

 なぜあそこにリディアリアがいると知っていたのか。

 なぜリディアリアを探していたのか。

 なぜ、リディアリアの秘密を知っているのか。

 様々な疑問ばかりが残る。

「スノウマリーはあの鍛錬場にいたのではないでしょうか?」

 ルナがおずおずと手を挙げ、意見を述べた。

「鍛錬場に?」

「はい。あの鍛錬場には、小さいながらも観覧席のようなものがありました」

「確かにあったけれど、私が新人騎士たちと試合をするって決めたのは、本当に試合をする直前だよ? なのになんで……」

「それは分かりません。私も実際に観覧席にいた全員の顔を見ていないので、違うかもしれませんし。でも可能性は十分にあるかと」

 騎士たちが観戦していたのは、気づいていた。しかし一人一人の顔をきちんと見たわけではない。だからリディアリアが気づいていないだけで、ルナの言うとおり、スノウマリーが観戦していたという可能性は十分にある。

「鍛錬場の観戦は騎士でなくても、自由にできる。夫や婚約者、家族の姿をいつでも見られるようにしてあるからな」

 出入り自由とあれば、可能性は大だ。最も、可能性があったとしても、どこで試合をするという情報を嗅ぎ付けたのかは不明だが。

 けれど鍛錬場にいたとなれば、全てに納得がいく。

 ルナはグレイストや新人騎士たちから姿を隠してくれたが、観覧席は全方位にある。隠して切れない位置の観覧席からは丸見えの状態だ。一応観覧席は試合の余波が及ばないよう、遠く離れた位置に設置されている。リディアリアも子供の姿になってしまったとはいえ、完全になってしまったわけではない。遠目からであれば、気づかれない程度の戻り方だった。

 普通ならば気づかない程度であるが、相手は魔王の妃の座を狙うスノウマリーだ。リディアリアの弱点を見つけようと必死だったとしたら、観客席にいたとしても気づいてしまうのにも納得してしまう。

「とにかく今後は気をつけるように。部屋の外に出るのはなるべく控えてほしい。……窮屈な思いをさせてすまないが」

「ううん。元はといえば、こんな体質を持っちゃったことや、私が時間配分を忘れてたことが原因だから気にしないで」

 今回は全てリディアリアの配分ミスだ。ディティラスやルナが謝ることは何もない。

「早く、解決策が見つかれば良いのですが……」

「そうだね」

 ルナが深くため息をつく。

 早く魔核を治す解決策が見つかれば、子どもの姿に戻ることもなくなり、余命を気にしなくても済む。こればかりはライトニングと頑張って策を見つける他ないだろう。

「とにかく、今は妃としての仕事をするよ。分からないことをいつまでも考えていても仕方がないことだし」

 この意見については二人とも賛成だったらしく、ディティラスは仕事の合間ということもあって、夕食を一緒にとることを約束をすると、名残惜しそうではあったが部屋をあとにした。

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