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転生の鎮魂歌  作者: 葱
3/3

ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調『ジュノーム』

俺はヴァイオリンを奏でた。


なぜ記憶のない俺が弾けるのかは分からない。


だが確かに俺はヴァイオリンを美しいメロディーにのせて弾くことができた。


そして何故だか分からないが俺が音色を奏でているときは、とても心地が良かった。


もし音楽がこう気持ちのいいものだったら、また音楽を探してみたいなと思う。


「す・・・すっごーーーい!」

アンナがいきなり叫ぶ。アンナのことをすっかり忘れてしまっていた。


「楽器であんなことができるなんて!動物の鳴き声しか出せない僕とは大違いだ!」

鳴き声を出すことも結構すごいと思うのだが。


アンナは興奮した様子で俺がヴァイオリンを弾いている様子を早口で喋る。


アンナの興奮は止まらない。


「もしかしてこれが君が探してる音楽っていうやつかい!?」


「ああ、そうだと思う」と照れながら返事をした。


音楽で人こんなに興奮させられるかと思うと、少しうれしく思う。

「もう一回お願いできる?」

そう言われると俺はヴァイオリンをまた手に取る。

そして弾こうとするも、何故だか弾けない。

音楽へのイメージがなくなったのだ。

さっきはあんなに鮮明にイメージ出来たのに。

ヴァイオリンを机に戻し、アンナに「すまない」というと

アンナは「こっちこそ無理させてごめん、記憶ないのにね」 彼女は本当に優しい。


「そうだ!ヴァイオリンだっけ?君にあげるよ! 

記憶が戻ったらすぐに弾けるだろ?」

俺は転生して初めての楽器をアンナに貰った。俺は感謝の言葉をめいいっぱい伝えた。

アンナは「僕には似合わないし大丈夫だよ」と言ってくれた。


窓にふと目をやると、薄暗い夕方になっていた。

色々あったせいか時間の流れが速く感じる。

アンナは疲れていると思うから部屋で寝てていいよと言った。

俺は感謝の言葉を述べて、案内された部屋に入った。

アンナは「ご飯が出来たら呼ぶね」と言って台所に向かった。

少しベットに横たわる。

曲を弾いた時を思い出す。あれは心地のいいものだった。

そういえばヴァイオリンのほかに楽器があったはずだが思い出せない。

記憶に鍵がかかっているような感じだ。

俺は分からない記憶のことは忘れて、疲れを癒すことにした。


しばらくするとアンナの元気な声が聞こえる。

ご飯が出来たようだった。俺はテーブルに向かうと、

テーブルの上に美味しそうな料理が並べられていた。


「いっただっきまーす」


挨拶をすると俺は肉にかぶりついた。

美味い美味すぎる。美味しいものを食べるとこんなにも幸せなのか。

テーブルの向こう側には、俺が食べているのを笑顔で見守るアンナ。

アンナは食べるより、俺を見ることの方が幸せそうだった。


俺は食事を済ませ、寝床に入りとてもぐっすり眠った。

朝起きると、アンナは旅の準備をしている様子だった。

剣を研ぎ、食料を鞄に詰め、馬の手入れをしていた。

アンナに「今日、出発するのか」と尋ねた。


「この山で食料も調達したし、出発しようかと思う」


アンナには短い間だったが、とてもお世話になった。

感謝してもしきれないぐらいに。


「その小屋は元々空き家だしあげるよ。記憶が戻るまでゆっくり生活してね」

馬が「ヒヒ―ン」と鼻息を鳴らす。早く出発したいようだ。

「最後に君の名前を聞きたかったけど、名前がないんだっけ」

名前、自分を象徴する大事なものだが俺にはない。


「私がつけてあげるよ! 名前!」

いいアイデアだと思った。名前は決めるものじゃなくて決められるものだ。

アンナにつけてもらえるなら、十分嬉しい。


「それじゃあ・・・モザルトっていうのはどうかな?」

モザルト・・いい名前だ。きっと他の名前でもアンナがつけたのなら

なんでも気に入ってただろう。


「それじゃあモザルト君また逢う日まで!」

手を振ってくれたので、俺も手を振り返した。

アンナが段々小さくなっていく、しばらくするとアンナの姿は

馬の蹄の音と共に消えていった。

俺は小屋に戻ろうとする。

俺はヴァイオリンで記憶を取り戻さなければな。



「あ」俺は重要なことに気が付く。

ああしないと意味がないじゃないか。

俺は急いで準備をして(ヴァイオリンを持っただけだが)走り出した。



僕は馬に揺さぶられながら山道を下る。

温かい日差しが僕等を照らす。馬も朝早く出発できて嬉しそうだ。


「コツコツ」と急な勾配を岩を踏みながら歩く音は面白い。

勾配が緩やかになると僕は馬から降りて、木陰に入る。


「一休みっと」


芝生にポンっと腰を下ろす。道のりはまだまだ長い。

休めるうちに休まないと体がもたない。

僕は草の上で思いっきり深呼吸をする。

そうすると体の中にある悪いものがすべて息から出るような気がする。

数回深呼吸を繰り返す。とても心地いい。心が無になったような気分だ。

心を落ち着かせた僕はふとモザルト君のことを思い出した。

彼が奏でた音楽というものは、とても興味のわくものだった。

できればもう一度聴きたかったが、そんなこと言ってられない。

彼には記憶を思い出すという使命がある。

人それぞれ使命があるように僕にだってある使命がある。

そして僕に彼の使命を邪魔する権利はないはずだ。

だがそれでも。モザルト君の音楽は人の大事な何かを呼び起こすものであった。


ガサッ


不意に聞こえる草木の揺れる音によって僕は立ち上がる。


僕は懐にある剣に手をかけ、音が指し示す方向に注意を向ける。

こんな森の中で音を成すものといえば大抵危険なものだ。

猛獣か、悪意ある人間かそれとも得体の知れない何かか。


ガサガサガサッ


こちらに向かって走っている。僕は剣の握り(グリップ)に力を入れる。


ガサッ ガサッ


来る! そう思った時には剣は振るものだ。そしてそれがその時だ!


「はああああああっ!」


剣が標的に降りかかる。だが茂から飛び出して来たのは、モザルト君だった。


「ひいいいいい」


モザルト君は僕の姿を見るや否や、喜びの表情を見せたが。

降りかかる剣に絶句し、腰をついた。 

モザルト君に剣が当たる寸前に私は剣の振りを止めた。


「モザルト君!? 何でここに!?」


モザルト君は深呼吸をし、息を整えたかと思うと


「俺も旅にご一緒させてください!!」

モザルト君の言葉は大きく、そして意外なものだった。




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