義理姉様という者は
私が提案した団扇と扇子は瞬く間に彼の領地で瞬く間に広がった。自らの手を使って仰がなければならないとしても少しでも涼を得られるなら、とこの夏の一大ブームとなった。そして私はそれを更に改良してやった、魔法を使って。
「氷の魔法で地紙を凍らせるなんて発想、エーリンにしか出来なさそうですね」
そう言ったゼルド様はかつて父がしたような顔をしていた。定期的に魔力の発散を行わなければ魔力の暴走を起こしてしまう私はここぞとばかりに魔力を使った。初めは扇子全体を凍らせ持つ事も難しい状態にしてしまった。そして氷が溶け地紙を駄目にしたのも数知れず。何度も扇子を凍らせる事によって、地紙だけを凍らせることができ、そして氷を溶かして地紙を駄目にする事がなくなった。結果的に魔力のコントロールが容易になったのだ。
またあの日に作った甘味も彼らには高評価だった。夏の味覚、アイスクリン。かつての世で味わっていたあの甘さは出せなかったが、それでも十分であった。二人ほど食べ過ぎて腹を下す結果に至ってしまったが。
そうして私は過ごし易い夏を手に入れた。
それを狡いと言ったのは義理姉様だった。その言葉の後に続いたのは何故、兄上の領地で作らなかったのかというものであった。その言葉に私はつい「夫となる婚約者様が新しい物が欲しいと言った言葉に従ったまで」と返したのだ。
結果、―――義理姉様は激怒した。
そして義理姉様は思いつくままに行動した。勝手に私の名で夜会を開こうとし兄上に止められ、勝手に私の名で義理姉様のドレスを作ろうとして呉服屋にサイズ問い合わせが私にきて私にバレ、義理姉様は兄上に怒られた。けれど懲りない義理姉様は私の名でゼルド様に婚約破棄をしたいと手紙を送り、全てを理解した上で公爵領地に兄上と義理姉様と私を呼びつけた。
その時の兄上の顔は真っ青を通り越して仏のような白さであった。何も知らないのは兄上だけであった。
義理姉様?兄上が違う馬車に乗せていたから知る由もない。