表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

暑さ対策というものは

婚約者の従者に水の都で使えそうな知識を二つ預けてから幾日。兄上が納める領地と婚約者の納める領地の境界線近くに居住を構えている私は、夏の盆地の暑さにしてやられていた。



「こうも暑いと、扇風機やエアコンが欲しくなるわね」

「せんぷうきとえあこん、ですか?」

「ああ、気にしないで。独り言よ」



かつての世は快適であった。風を自動で送る扇風機と夏で暑ければ室内に冷気を冬で寒ければ暖気を取り込めるエアコンという素晴らしい物があった。そして夏は腕や足を晒していても咎められることは少なかった。今はどんなに暑くとも腕は隠し踝が隠れるまで長いドレスを着なければならなかった。唯一曝け出すことを許されるのはデコルテと肩甲骨までの背中のみ。服の素材も空気を通し辛くそして重い。


そしてこの世での唯一の涼といえば、大きな羽扇子が送るそよ風のみ。しかも重さもあり長いこと扇いでいられないのが難点。昔、父に風の魔法を使って風を送ってはいけないのかと聞いた時、盲点だったという顔したが風を送る相手と送られる相手とその周囲の関係によって、その魔法が攻撃とみなされる可能性があると苦い顔で言っていた。例え父から娘であってもクーデターとして捉える人がいるとそう言ったのだ。


そして私たちが茶話会や夜会などで使う小さな羽扇子はただの身嗜みかつお洒落道具の一つであり、涼をとるには優れていないのだ。


かつての世にあった扇子や団扇が恋しい、そう思ってふと閃いた。―そう、作れば良いのだと。



それからの行動は早かった。婚約者の領地に入る許可と婚約者に会いに行く許可を頂きに早馬を出し、新しい物を作りたいのだと婚約者に伝える手紙を書き、図案を描いて届けてもらう。そして更に閃く。地紙部分を氷の魔法で作ってみるのはどうだろうか、と。



きっとゼルド様はキラキラとした顔をするのだろう。そして彼の領地一番の技術者や彼を慕う傾奇者と呼ばれ出している商人と一緒にあーでもないこーでもないと額を突き合わせ、暑い暑いと汗を拭うことになるのだろう。


暑さ対策を講じるために熱くなるなんて、と最後はきっと笑う羽目になる。けれどそれはそれで楽しいものである。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ