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9.馴れ初めを…

簡単には終わらなくなっていくものですね…

 「少し厳しく言い過ぎましたわね。イレット、ごめんなさいね?」

 少し悲しげな顔をしながら、お母様が言いました。

 「いいえ、お母様の言う通りですわ。王族の縁者と知ったからには、相応の立ち振舞いをするのは、当然ですから。私の甘い考えで周りの方達に、ご迷惑をかけるわけには、いきませんもの。」

 着飾るのが苦手だからと、言っている場合ではなかったと反省している私を見て、お母様はため息をついていました。

「イレットは、何だか…真面目過ぎですわ。結婚相手を探すのも、学校へ行く理由の一つですからね?自由にたくさんの恋愛をして、幸せな結婚をつかまなくっちゃ、だめよ?」

 何だか…とても不憫な子を見るような目を向けてきたお母様は、続けて言いました。

 「イレット、1度、聞いておかなければ、と思っていたのですが…。好みというか、結婚するならこんな方が良いとか、あるでしょう?簡単で良いから、話してくれないかしら?」

 「好み、ですか?」

 お母様に訪ねられ、自分自身、考えた事もなかったと思い焦りました。

 学校では勉強をし、訓練を積み重ね、将来の職業を考える事だけではありません。学生のうちに結婚相手を探さなければ独身になる、と親から言われて送り出されているため、皆、躍起になっている、とお兄様達から聞かされた事があります。

 「お父様やお兄様の様に優しくて、聡明で尊敬できる方。何より、お父様とお母様の様な、心から信頼し愛しあえる方ですわ。…ただ、そんな簡単に見つかるとは思えません。」

 「だからこそ、たくさんの方と話をし、いろんな恋をし、傷ついたり時には傷つけたりしながら、結婚したいと思えるただ一人の人を探すのよ?」

 「私は…お母様やお姉様の様に美人ではありません。きっと可愛らしく守ってあげたいような子が好かれるはず…。魔法や研究にしか興味がない、普通な顔の私では、相手にされないと思いますわ…。」

 「ふふふっ。イレットは、学生時代のアヴァンにそっくりねぇ。」

 「お父様に、ですか?」

 「えぇ。実戦訓練のチームが一緒だった時に、私がアヴァンに好きと、告白したのよ?」

 「えっ?!お母様から、ですか?」

 「そうよ?アヴァンたら、『僕は普通な顔で研究しか興味がない男だし、魅力的な男は他にもいるのに、どうして?』って聞いてきたわ。」

 「それで、お母様は何て答えたのですか?」

 「『とても優しくて、博識で、尊敬できる方だもの。容姿ではなく、心に惚れましたわ。』と答えたら、アヴァンは驚いていたわ。そして、照れながら『私で良ければ…』と言ったアヴァンに、また、恋をしてしまったのよ。」

 そう言ったお母様は、恋する乙女の表情をしていました。両親の馴れ初めを聴くのは、嬉しいようで恥ずかしいので、心構えが必要だと思ってしまいました。

 「だから、イレット。恋することに臆病になることはないわ。大丈夫、私達の子ですもの。きっと、あなたの運命の人が必ず見つかりますよ。」

 俯いきかけていた私の両頬を手で包み込み、上を向けさせたお母様は、とても優しい顔をしていました。

 「イレット、あなたの気持ちが知られて、良かったわ。では、話を元にもどして、アローズ商会に依頼をしましょう。アンディー、ヴァンリー家の者にも連絡をお願いね?」

 「かしこまりました、奥様。」

 どうして、ヴァンリー家にも連絡するのか、疑問に思った私は、お母様に聞きました。

 「お母様、ヴァンリー家に連絡するのは、何故ですか?」

 「いくら六侯爵家でも、期間が短いという理由で受けてもらえない可能性がありますわ。ですが、王家御用達の名で売っているアローズ商会に、私の母のソフィー ヴァンリーから、孫であるイレットへ贈る為にドレスを仕立てる、という事にした方が一番早い依頼だからですわ。」

 そう言ったお母様から、黒い笑顔が出たので、私は、あまり深く突っ込むのはやめました。 

 「それとサンディー。イレットの明日からの予定は?」

 「はい、奥様。学校に入学までのレッスンは、順調に進められていたため、終わられています。今はイレット様の疑問点や復習などが主ですから、レッスンの必要ありません。」

 「やっぱり真面目ねぇ。では、ヴァンリー家に少し滞在する旨も伝えておいてちょうだい。ユリシア王妃には、会わせろと言われていたし、来年度はアリア王女も入学するから、イレットには顔会わせをしておいてもらわなければなりませんから、良い機会だわ。それに、イレットには今まで、お父様達に会わせていなかったのだから、少し一緒に過ごすくらいかまわないでしょう。」

 「かしこまりました。滞在する為のご用意もしておきます。」

 「そうだわ!あと、お母様から、ヴァンリー家特有の立ち振舞いを、イレットにレッスンしてほしい事も、伝えておいてちょうだい。」

 「かしこまりました、奥様。」

 「さて、イレット。明日からヴァンリー家へ行き、御披露目パーティーと入学に向けての準備があり、少し忙しくなるので、そのつもりでいなさいね?」

 お母様に話しかけられるまで、アローズ商会が大変な作業になる事を心配していた私は、お母様とアンディー達の話を聞いていなかった事に、あとで後悔をする事になるとは思ってもいませんでした。


ご覧いただきありがとうございました。

完結まで、いってくれれば、いいのですが…

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