4.今後は…
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展開が進みません。
ユリウス様のレッスンは、かなり手厳しい反面、上手く弾けた時はとても誉めてくださいます。"やはり腹黒は違う"と思いながら、演習を2時間くらいやった後に、紅茶を飲みながら、ユリウス様が反省点を教えてくれ、次回の課題を発表し終了、がいつもの流れとなります。
「今回の曲で、世に出ているハープの楽譜を全て弾き終わりました。曲に気持ちを込めて、楽しく演奏することが出来るようになりましたし、技術面ではもう特に教えることはありません。よく頑張りましたね。」
ユリウス様はそう言って、紅茶に口をつけました。
「ありがとうございます、ユリウス様。」
お礼を述べた後、私も紅茶を飲み一息つき、ユリウス様に質問しました。
「それで、今後は、具体的にどう進めていくのでしょうか?」
「ん~。そこなんだけれどね~。確か、イレット嬢はまだ14歳でしたよね?」
ユリウス様は、珍しく少し歯切れの悪い言い方をしながら、聞いてきました。
「はい、そうですわ。年齢と何か関係があるのでしょうか?」
「そうなんです。15歳の誕生日はいつ頃ですか?」
そう聞かれた私は、右手を顎の下に持っていき、思案しました。
「確か……ちょうど、半年後になりますわ。」
「そうですか!ならば、最近、お父上から話がある、と言われませんでしたか?」
私の答えに少し、興奮気味にユリウス様が聞いてきましたので、私は、戸惑いながら返答しました。
「えぇ、はい。ちょうど今朝、話があるから午後は空けておくようにと…」
「なるほど…。申し分ないのですが、お父上のお話を聞いてからでないと、今後のレッスンについてのお話ができません。」
困った顔をしながら言ったユリウス様を見た私は、"実力派俳優になれそうねぇ"と思いながら、頷きました。
「わかりましたわ。」
「じゃぁ、レッスンはこれで終わりにしましょう。イレット嬢、次回を楽しみにしていますよ。」
そう言って、立ち上がったユリウス様を見た私も立ち上がり、一礼しました。
「ユリウス様、本日もご教授、ありがとうございました。また、よろしくお願いいたします。」
「では、また。」
顔を上げた私に、頷いたユリウス様は、ウィンディーの案内で帰っていきました。
それを見届けた私は、ふぅ…と息を吐き出し、サンディーに紅茶のおかわりをお願いしました。
「イレット様、お疲れ様でございました。」
紅茶のおかわりを置きながら、サンディーはそう言いました。
「ありがとう。さっきの話は、ウィンディーから聞いているかしら?」
「はい、午後にお茶会をすると、侍女長からも伝えられております。」
私は、おかわりの紅茶を飲みながら、サンディーに確認しました。
「演奏で汗をかいてしまったので、そのお茶会が始まる時間までに、着替えたいのだけれど…間に合うかしら?」
この世界では、昼食がないけれど、軽食を嗜む習慣があります。個人で済ましたり、知人を呼んで、楽しく過ごしたりします。
「はい、まだ時間はございますので。」
サンディーがそう言ったところで、ウィンディーが戻ってきました。
「ウィンディー。イレット様の着替えをしに、一度、部屋へ戻りますから、ここの片付けをリリスにお願いして、部屋へ来てくれる?」
「わかったわ。イレット様、失礼いたします。」
サンディーからの指示に頷いたウィンディーが、ホールを出ていくのを見送った後、私達も私室へと移動するため、歩きだしました。
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