鬼束
100万貸してください。
俺は、さっきのババアが札束を持っているのを見て完全に舞い上がってしまった。鬼束は驚くのでもなく、その要望には答えずこう聞き返した。
お前出身は?仕事はどうした。大学生か?
俺は正直に自分の境遇を全て話した。アイドルにはまってることは言わなかったが生活に困窮していたことは正直に話した。全て聞いた鬼束は静かに頷き、こう答えた。
だったらそんなもんでいいんか?お前金に困っとるんだろう。200万持ってけ。
宝くじでも当たった気分だった。信用も何もない俺が、たった数分で200万も手にするのだから。黒服の男が本当に200万を持ってきた。こんな大金は見た事がない。この時ばかりは鬼束が仏に見えた。今晩は何をしようか。そんなことを考えている最中に、ただし一つ条件があると200万をその大きな手で掴みながら言った。
なんですか?契約書とか書くんでしょうか?
いや契約書・・・そんなもんはいらん。お前の血液を少し取らせろ。
血液を採取する。
インスタントラーメンとコーラで染まっている俺の汚染された血液が何に使われるか知らないが、そんなものお安い御用だった。
血液の採取を終え、本当に200万を貸して貰った。
その金で半年間、アイドル、マンガ、パチンコ、酒。
仕事もせずに堕落した生活を過ごした。
金は線香のように消えた。
そして今、俺は鬼束に血祭りにされている。思えば当然の報いだった。
どうか許してください。5年、いや10年かかっても必ず返します。
ですから命だけは・・・
涙と鼻水は血と混ざり、目はぼやけて鬼束の顔も見えなくなっていた。
生命の危機に直面している、こんな事が自分の身に起きた事が信じられなかった。
お前みたいなゴミの命なんていらねーんだよ。
だがなこっちの要望をひとつ飲んだら、お前を無条件で救ってやる。
臓器売買か。人殺しか。どんな運命かわからないが、こうなってしまったら自分の命が助かるならどんな事でもやるしかない。サオリンとも結婚したいし・・
どんなことでもやります!
血を吐いて泣きながら答えた。
鬼束はフッと笑った。
そうか。取引成立だな。アレをもってこい!
黒服の一人が小袋を持ってきた。
なんですかそれ・・?
ドラックだ。
ドッラク?最近有名の音楽アーティストとかがやって捕まったやつですか?
馬鹿が!ああいうのはお前らゴミが拝めるるもんじゃねえんだよ。
ああいうの超高級品だ。お前が今からやるのは何が起こるかわからねえ、超危険な試作品だ。