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世界最強、最悪のオタク

額から汗が止まらないし、頭が痛い。

つい2時間ほど前、渋谷で歩いていたところを黒服の男4人に捕まり、無理矢理この無機質なマンションに連れて来られた。

椅子に座らせられ、逃げないよう手首と足首は縛られている。

目の前にいるガタイの良いオッサンにドスの聞いた声で喋りかけられた。


ここに連れてこられた理由はわかるよな?


俺はその理由を知っていたし、この人物もよく知っている。

俺は半年前、この人から200万の金を借りていた。

浅黒でオールバック。スーツにサングラスをかけ、顔には切り傷がいくつも見える。

名前は鬼束。正真正銘のヤクザだ。名前まで怖い。


はい。連れて来られた理由はわかっています。


鬼束はニヤッとすこし口元を開け、無言で俺の頬に拳をぶち込んだ。

ゔっ!声にならない声が出た。あまりにもいきなりの衝撃で痛みより驚きが先に来た。

その後、当然痛みも来た。口の中からドバドバと血が出る。その後も立て続け2、3発、俺の顔に拳をぶち込まれた。鏡をみているわけではないが俺の顔は確実に血まみれだろう。


わかってます。じゃねえよ...お前わかってんなら何で金返さないの?



ごめんなさい、、、返そうと思ったんですけど、お金がたまらなく。。


最後の言葉を言う前に鬼束は俺の腹に拳をぶち込んだ。


おえぇ!声というより叫びに近い。息が出来ない。

胃から腸までの臓器の全てが外に出そうになった。

鬼束は下に頭が下がった俺の頭を掴み無理矢理顔を上げさせた。


お前さ、金が払えないとどうなるかわかってるよな?200万分何に使ったの?


実は俺はこの人に借りた200万という大金をすべて使ってしまっていた。


俺の名前は畑山直樹。年齢20歳。

俺は1年前、東京にあてもなく単身で上京した。

上京した理由は大好きなアイドル・島崎沙織(愛称はサオリン)に会うためだ。

お金は高校の3年間、コンビニでアルバイトして貯めた。

上京後すぐに一人暮らしを開始したが、当然仕事もない俺は、日雇いの仕事をしながらも3ヶ月ほどで貯金90万のうち、30万を生活費として使ってしまった。


半年前、サオリンが所属するアイドルグループの音楽コンサートがあった。

このコンサートは2年に1回のビックイベントで、その勇姿をどうしても最前列で見たかった。


しかしサオリンのアイドルグループASK48は人気がとても高く、正攻法では入手できなかった。そこでインターネットで裏の転売屋とコンタクトを取り、喫茶店で直接会って50万で譲ってもらった。


バレれば出禁にもなり得る行為だったが、結果バレずに沙織の輝いている姿を目に焼き付けることができた。

コンサート中は天国だった。しかもコンサートの後に握手会があるので残りの金でネックレスのをサオリンに買ってしまっていた。


うっそー!これ高かったでしょ!?ありがとー!


コンサートの後で疲れているはずなのにそんなそぶりも見せずに喜んでくれたサオリンを観て嬉しさがこみ上げてきた。


お金は高かっかたけど来てよかった。


その時は純粋にそう思った。しかし現実は俺の行為を許してはくれなかった。

1週間後、俺は渋谷の街をさまよっていた。俺の貯金は完全につきた。


これからどうしよう・・・


実家も貧乏で、頼れる友達も東京にはいない。かといって良い仕事はなかなか見つからないし、このままでは来月の家賃も払えそうにない。


途方にくれていたそんな時、俺の目の前に消費者金融の看板が飛び込んで来た。


へえー。ただで金貸しくれるんだ。


今思えば、ここでこんな安っぽい考えをしなければよかった。

気がついたときにはいかにも怪しいマンションのボロボロのエスカレーターに乗り

一室の前に辿り着いていた。ドアチャイムを鳴らしたら黒服の男が出てきた。

結構イカつい感じだが歳は25、6歳で若そうだった。

そいつに部屋の前には長椅子が置いてあり、そこで待つように言われた。


5分後くらいにドアがあいたと思ったら髪がボサボサの不衛生なおばさんが出てきた。なんとそのおばさんの手には札束が握られていた。100万はあるだろうか。


嘘だろ!一体いくら貸して貰えるんだ!?


俺はそれを見て有頂天になってしまった。サラ金なんて今まで行ったことなんか当然なかったので、それが普通だと勘違いしてしまった。


先ほどの若い黒服の男に入るように言われた。

錆びたドアノブを回し、部屋に入った先に、大きな机と3人の黒服の男が立っていた。その真ん中にあの男が座っていた。浅黒でオールバック。スーツにサングラスをかけ、顔には切り傷がいくつも見える。鬼束だ。

鬼束は俺を上から下まで、ジッと見つめると口を開けた。


いくら欲しい?






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