第一章 第四話 晩餐までの時間は第三王女と
部屋の奥にある着替え場所から出てきたアリシアは、見違えるように綺麗だった。
空色の瞳と同系色のドレスは肩と胸元が露わになっており、首元にはドレスと対の色である赤のネックレスが輝き、長い白銀の髪は一つに纏められ、ネックレスより薄い色の髪留めと飾りを施され、歩くたびに揺れてシャラッと音を立てる。
「私………変ではないよ、ね?」
アリシアは、等身と同じ鏡に映った自分を見つめながら、呟いた。
着替えた後一人になりたいと言い、部屋にはアリシア一人。晩餐までの時間をこの部屋で過ごすことになっている為、この部屋では何をしても構わないが、部屋の外には、晩餐までは出られない。
椅子に座り、イリアが持ってきた紅茶を部屋で一人飲んでいると、控えめに部屋の扉がノックされ、「はい」、と答えると、セナが現れた。
「どうかしたのですか?」
「フローリア殿下がお見えです」
「フローリア…殿下?」
「はい」
アリシアは記憶を探り、フローリアの名に該当する人物を探し、思い立った事実に立ち上がり、「急いでお通しして」、と言う。
セナが一礼し部屋の外に出ると、ドレスを纏った金褐色の髪を持つ少女が現れた。
「フローリア殿下………」
名を呼ぶと、金褐色の髪を持つ少女、否、フローリアが微笑んだ。
「晩餐まで、一緒に居てもいいかしら?」
「はい、フローリア殿下」
アリシアが頷くと、フローリアは部屋の奥まで入った。それを確認したセナは、扉を、一礼し閉める。
「初めてでは、ないね」
「はい。一度、離宮にいらしたので」
「覚えていてくれた?」
アリシアはその問いに苦笑しながらも、「名前を聞いただけでは、少し解りませんでした」、と正直に言うと、フローリアはクスクスと笑い出した。
「まぁ、初めて会ったのは数年前だもの。お互いに成長したわ」
「そうでしょうか?」
「だってエル」
フローリアはアリシアのミドルネームのうちの一つで彼女を呼んだ。幼い時に、フローリアとアリシアは、二人きりの時はミドルネームで呼ぶ、と決めていた。それを、フローリアは覚えていたのだ。
「貴女綺麗になったわ」
綺麗とストレートに褒められ、アリシアの頬は紅潮し、うつむいてしまった。その様子を見て、フローリアはまた、クスクスと笑い出した。
「でも、中身は変わってない」
「え………」
アリシアを見つめて、微笑みを浮かべたフローリアは、さっきアリシアが座っていた椅子の向かいに座り、席に着くようにと促した。