第一章 第三話 父との再開、愛を感じて
父であるレイナードに会った後、アリシアはイリアとサナリエを含む数人のメイド達に、王宮の一室に連れられた。
「あ、の、これは?」
そこで始まったのはドレス選び、髪留め選びや髪飾り選び。メイド達はアリシアを着飾ることに奮闘している。
「イリア、サナリエ」
部屋の隅でアリシアを見守っていた自分の側付きを呼ぶ。
「どういうこと?」
「どういうこと、とは?」
「この状態よ。私は晩餐に参加はするけれど、仕事はしなきゃならないし、こんなに着飾らなくても………」
すると、アリシアの言葉に、イリアとサナリエはキョトンとした。何を言っているのだろう、という目でアリシアを見ている。
「あの、王女殿下」
「何?イリア」
恐る恐るというように、そして確認するように言葉をかけるイリア。その様子を、アリシアは怪訝に思う。そして次にイリアから発せられた言葉は、衝撃な言葉だった。
「あの、王女殿下。この晩餐は、国王陛下が王女殿下のために開かれたのですよ?」
「ふぇっ!?」
アリシアはとても驚き、変な声が出たことに羞恥を覚え、口を塞いだ。その様子にイリアとサナリエは苦笑する。
「アリシア殿下」
一人のメイドに声をかけられ、そのメイドに向き直る。
「御挨拶申し上げます、アリシア殿下。私は王宮メイド、セナ・シランと申します。今日から貴女様の側付きとなりました故、至らないところも御座いましょうが、よろしくお願い致します」
その後もセナに続き、部屋に居たメイドが全て名乗り、そして全員がアリシアの側付きだと言うではないか。
「どういうことなの?これは………」
「全て、国王陛下の命なのです」
「父君様の?」
アリシアが問うと、セナが頷いた。
「どうして………?」
「それは、今まで愛せなかった分、アリシア殿下には、与えられる物、してやれることは全てすると、仰っておりました」
「父君様が、そう仰られたの?」
「はい」
その言葉に、自分は愛される存在だと、アリシアは感じた。
今まで会わず、ただ命令されることに従ってきたアリシア。
闇の中でしか生きることができないと思っていたアリシア。
それでも、光の中で生きることを許された。それが意味するところは、愛すということだった。
泣きそうになったアリシアは、瞳を閉じ、涙を堪えた。そしてそれを見計らったように、セナが声をかけた。
「アリシア殿下、衣服などが整いました故、着替えに移っていただきます」
セナの言葉に従い、アリシアは奥の着替え場所にと移動した。