第一章 第三話 父との再会、愛を感じて
ほどなくして、〈謁見の間〉の扉の前に来た、アリシアとイリア、サナリエ。
「私は、レクソンの第四王女です。国王陛下にお目にかかりたいのです」
近くにいた門番に声を掛けると、門番の男性は騎士礼をし、〈謁見の間〉の扉を開けた。
露わになった〈謁見の間〉の奥の玉座には、一人の男が座っていた。アリシアには、あの男がこの国の王であり、自分の父だと、直感的に解った。
けれど、今まで見たこともなく、会ったこともない男に、歩み寄れるはずがなく。
アリシアは一歩踏み出したところで、固まってしまった。
「「王女殿下」」
その時、イリアとサナリエはアリシアを呼び、歩みを進めるように促した。
その声は、暖かな、いつも自分を見守ってくれた声、導いてくれた声。
二人の声に導かれるままに、アリシアは歩みを進めた。〈謁見の間〉の中央にアリシアがつくと、〈謁見の間〉の扉が音を立てて閉まった。
そして〈謁見の間〉の空間には、アリシアと、レクソン国王レイナード・ウル・ド・レクソティアンの二人だけになった。
そしてアリシアは、深く頭を垂れ、一礼した。
「御挨拶申し上げます、レクソン国王陛下。母ティターニア、父レイナードの間に生まれし娘、レクソンの第四王女、アリシア・エル・リーア・レクソティアンに御座います」
そう挨拶すると、レイナードから苦笑の声が聞こえ、アリシアは頭を上げた。
「余を、陛下というか」
低い声は、イリアとサナリエに聞いた通りだと思った。
「たとえ父といえど、今まで会わず、私は離宮におりましたので」
「そうか。もう少し、そちを早く離宮から出すべきであったな」
悲しみを含んだその声は、この国を統べる国王ではなく、父としての言葉だった。
「そちには、今夜の晩餐のためのドレスを用意してある。それを着なさい」
「え………」
「前持って、そちに合うドレスを用意させておった。着てもらいたくてな」
「陛下………」
レイナードはまた苦笑した。そして玉座から下り、アリシアの目の前まで歩み、「これからは、父と呼べ」、と言って、彼は〈謁見の間〉を後にした。
その後ろ姿を見て、アリシアは、やっぱりレイナードが自分の父だと、改めて確信したのだった。