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第一章 第六話 国王の決定は

「余は、この決定を覆すことはせぬ。だが、覆せるとすれば、リーアだけだ。リーアが拒否するのであれば、このことは考え直そう」

あの声音のままいうレイナード。そして見つめるは、アリシアのみ。

『ほう。王太子妃、未来の王妃の座か。我が巫女に相応しい座だな』

刹那、低く、レイナードよりも威圧感がある声が、大広間を支配した。

『だが、その座を我が巫女は求めるだろうか』

ククッと笑いながらそう発するは、アリシアの肩に乗り、今まで傍観していたイグドラシルだった。

「イグドラシルっ!」

『我が巫女はそのような座を与えようが、我は求めぬと思うな。今まで、お前より我は巫女の片時を離れたことはなかった。お前は今日会うのが初めてではないのか?』

小声で名を呼んでも、イグドラシルは言葉を紡ぐ。

『我は、この巫女を生まれる前から知っておったし、見てもいた。そんな我が言うのだ。それに、巫女の性格を考えれば当然だ。なんせ、巫女には欲と言うものが無い。地位や権力、全てにおいてな』

「創世竜殿、何がおっしゃりたいのですか?」

この世を創世した竜であるイグドラシル。一国の王と言えど、礼をわきまえねばならない。

『我は、お前に怒りを覚えている。殺したい、とも思っている』

その言葉は、人々に恐怖を植え付けた。そして、それと同時に、イグドラシルから魔力が放出されるようになった。

『我が巫女を、このような境遇にしたことに、我は怒りを覚えているのだ。何故我が巫女をこのような境遇にした。離宮という名の檻に閉じ込め、この国を囲むエレールを張らせた。魔導士の数が少ないとは言えど、その負担は計り知れないのだぞ。本来国規模のエレールは、十人以上の王宮魔導士で作り上げるもの。それを、何年もの間巫女は、一人で一時たりとも休まずに発動させ、この国を護ってきたのだ。その辛さがお前に解るとは思っておらぬ。ぬくぬくとこのような場所で育ってきた、巫女以外の皇族に、この国を治めることなどできるわけがない』

「けれど、この魔女にこの国を継ぐ権利などないわ!この国の王妃になるのはこの私よ!!」

鬼の形相で悲鳴じみた声を上げたのは、レイナードを見つめていたクレアシア。クレアシアはアリシアを鬼の形相で指差しながら叫んだ。

『ほう………我が巫女に無礼を働くか』

「だって、あんただって創世竜だと決まったわけじゃないもの」

『だが、巫女を罵った。…………………………これが今のこの国の王家か。落ちぶれたものだな、ここまでも王家が落ちぶれているとは思わなかったぞ。我はこの世を創世したことを後悔はしておらぬが、国を魔導師の一族に治めさせたことは後悔しておる。歪んだ考えで国を治められると思うなよ、小娘が』

イグドラシルがクレアシアに発した言葉は、威圧感が半端ではなかったが、

「あんた、そこまで魔女のことを気に入っているのね」

クレアシアは、ふん、と鼻を鳴らしながら言った。アリシアは、

「止めてくださいっ!!」

叫んだ。もう聞いていられないと言うように。

「イグドラシル、黙っていなさい。それと………父君様」

アリシアはレイナードを見上げ、

「王太子妃の件、お受け致します」

言うと、大広間がざわめきに包まれた。

そして、アリシアの言葉を聞いたレイナードは、満足そうに言う。

「ならば、正式な任命式は明日にしよう。今日は、この晩餐を楽しんでくれ」

「仰せのままに」

優雅に一礼したのを同時に、貴族や大臣達も晩餐を楽しみ始めたが、クレアシアとリスティアルは、ずっとアリシアを睨み続けていた。

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