疑問
ペルから予想だにしない話を聞いた奏介は、いくつかの疑問を持つ。
それを解決するべく新たな大陸へと行こうとするが···
宿で出会った、商人ペル·トラン。
彼女は、彼女の師匠から、翡翠色の眼の少女の話を聞いたと言う。
「おぉ!ぜひ聞かせてくれ!」
俺がそう言うとペルは、
「もう1年前位だし完璧には覚えてないんだけどいいかしら?」
といったが、俺は少しでも真相に近づけたら、という思いで話を聞いた。
「3年前に、ある王国で一人の王女が誘拐されたのよ。それはとても危険な盗賊団で、条件をのまないと王女を殺すという手紙を送ったそうだわ。条件というのは、王国に代々伝わる神器を渡せというものだったらしいんだけど、それは、強大な武力を持っていて、万が一盗賊なんかに渡したら王国破滅の危機もあったの。王様は悩みに悩んで···王女と神器を天秤にかけたのよ。そして···」
ヤバイ。頭混乱してきた。
「ちょっと待ってくれ。一度整理をさせてくれないか」
了承を得たので俺は情報整理を始めた。
盗賊に王女が誘拐された。
それはわかる。
条件をのまないと殺す。
···よくある手口だ。
王国に伝わる神器をよこせ。
これもわかる。
神器はとてつもない武力を持っていて、最悪王国を壊滅させる。
···ん?まてよ。そんなに凄い力があったなら、なぜ王は使わない?王国を壊滅させるなら、盗賊団くらい簡単に潰せるはず。
「一体なぜ···?」
と俺が言うと、ペルが
「そろそろ話してもいいかしら」
といったので続きを聞くことにした。
「それでね。王様は王女と神器を天秤にかけたのよ。具体的にどういう風に選んだかは知らないんだけど、ともかくそれで、王様は神器を選んだらしいわ。選ばれなかった王女は殺され、海にその遺体は沈められた。私が聞いたのはそんなとこ」
···いやいや。ソイツもういないじゃん。やっぱ無駄話だったかな~
「あっ、こっからは私が旅をして聞いた話なんだけど、その翌年から各地で目撃されているのよ。でも髪の色は同じでも全然髪型が違ったから、みんな他人のそら似ってことで誰も気にかけなかったの」
そしてその髪の色をしているのがソナタと言うことか。
「う~ん。引っ掛かりまくりだな。全然解決の糸口は見つかんないし」
そこで俺は無駄な一言を言ってしまった。
「ソナタ。お前ユーレイじゃな···ぐはっ」
腹を殴られた。メッサ痛い。女の子の力を越えている用な気がしたが、また鳩尾喰らったら困るので、黙っておいた。
~温泉~
ここの宿の温泉は肩こりや打撲などに効くらしい。
···さっきのパンチんとこ治んないかな。
俺は少し熱めの温泉につかりながら、もう一度状況を整理してみた。
一体なぜ王は神器を使わなかったのだろう。王国一つを潰せるなら軽々と盗賊など倒せる筈なのに。
···その王国とは何処なのだろう。
「後でペルに聞いてみるか」
俺は件の王国を目指して旅をすることにした。
~宿部屋~
そのあと聞いたところによると、王国はここからさらに南へ行かなくてはならないことがわかった。
王国の名は、“砂漠王国バントベール„
世界規模の石油産出国だ。
そこの武力は、この大陸一番の武力国家を軽く潰す程のもので、そこに神器があるのも頷ける。
『王様は王女と神器を天秤にかけて、そして神器を選んだ』
···なんか世界ってそんなものだよな。
故郷の国を出れば変わった世界があると思ったが実際はそんなものだ。
「じゃあやっぱりソナタとその王女は別人だろーな」
確か殺され海に落とされたと言っていたはずだ。
「考えててもはじまんなーい!まずは行ってみようよ奏介」
ソナタの言う通りだ。全てはバントベールに行ってみれば解ることだ。
ー翌日
「いやいや、だから良いって」<奏>
「いやよ!これも何かの縁だわ!<ペル>
ペルは思った以上に自分の考えを突き通す人間で、危険な旅になる。
と説得してもまるで聞かず、
この国でのお前の本来の目的を果たせよ。
と言っても聞かない。
俺は強行手段を取って、
「お前のこと、本当は嫌いだったよ」(嘘)
と言ったが、
「アタシはアンタたちのこと気に入ってるんだから!」
というので駄目だった。(嘘もばれていたっぽい)
どうしようもないので俺は、
明日の朝5時に出発だ。来たけりゃ来い
といって、今日出ることにした。
「本当にいーの?奏介?」
「ああ、いいんだ。恐らくあの事を調べていったら大きな危険が伴う。ペルは優しいから尚更巻き込みたくないんだよ」
俺は宿に残した手紙を見たペルの気持ちを考えると心が痛くなった。しかしこれもペルのためだ。
「随分と大事に思ってくれるじゃない。ありがたいわ。でもね、私も気に入った友達が危険におかされているのを見ているのは嫌なのよ」
ええええええー!!
ペルがいた。何処にいたんだか知らないけど!?手紙置いたときは爆睡してたのに~!!
「ホントにヤバイかも知れないぞ。いいんだな」
「ええ、いいわ。そんな覚悟も無いようじゃ一流の商人にはなれないもの」
「ペル、これからも宜しくね♪」
ソナタは嬉しそうに言った。
実際俺も『友達』などと言われたのは初めてなので凄く嬉しい。
ブォーと出発の合図が鳴る。
「目的地はバントベール、出航だ!」
おー!という2つの声が青空に響いた。
ということで3話です。
ペル結構アツい感じで書けたと思います。
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