第四章 切れない音符たち(2)
アンコール曲も終わり、ステージを降りた二年生バンドのメンバーを、ホットブリザードのメンバーが出迎えた。
「お疲れ様!」
「盛り上げすぎだって! プレッシャーがすげえ!」
びびっているメンバーにショーコが活を入れる。
「何、言ってるんだよ! せっかく盛り上げてくれたんだから、このまま勢いに乗っていくぜ!」
「ショーコちゃん、頑張って!」
「おおー!」
ショーコは、雄叫びを上げながらステージに出て行った。
二年生バンドのメンバーが、楽屋に戻ると、間もなく、ドールのマスターが小さな花束を持って、前室側のドアから入って来た。
「みんな、お疲れ様」
「マスター! 来てくれたんですか?」
カズホとドールにいる時に、このライブの話はしていたが、まさか見に来てくれるとは思ってなかったナオは驚いた。
「相変わらずお客さんも来なかったもんだから、店を閉めて来たんだよ」
「大丈夫かよ、マスタ−?」
カズホも、ドールの行く末を心配しながらも、マスターが来てくれたことが嬉しかったようで笑顔だった。
「まあ、平日には二人が来てくれるからね。あっ、これ」
マスターが手にしていた小さな二つの花束を、レナとナオに手渡した。
「ありがとうございます。マスター」
「いやあ、僕も最近はあまり、ロックは聴かないけど、面白かったよ」
そこにザッパのマスターも同じドアから入って来た。
「みんな、お疲れさん。 ……あれっ、ナルちゃんじゃないか?」
「やあ、久しぶりだね。ガンちゃん」
「ナルちゃん? ガンちゃん?」
メンバー全員が、きょとんとしてしまった。
「マスターとマスターは、……いえ、ドールのマスターはザッパのマスターを知っているの?」
レナが代表して訊いた。
「はははは。実は若い頃、一緒にバンドをやってた仲なんだよ。僕がサックスを吹いていて、ガンちゃんはドラマーだったんだけどね」
ドールのマスターが笑いながら答えた。
「へえ~」
「でも、ナルちゃんって?」
レナが引き続きドールのマスターに訊いた。
「僕の名前が『鳴瀬』だから、昔から『ナルちゃん』って呼ばれているんだよ」
今頃になって、ドールのマスターの名前を知らなかったことに気づいたメンバーであった。
「ガンちゃんと言うのは?」
レナがザッパのマスターに問い掛けた。
「僕の名前は『岩本』って言って、岩の字を取って、『ガン』って呼ばれているんだよ」
ザッパのマスターも笑いながら答えた。
「ガンちゃん、この子達はウチのお客さんなんだけど、どうだった?」
「良いバンドだね。荒削りなところもあるけど、見てて面白し、何よりもみんなが楽しそうに演奏していることが一番気に入ったよ」
「音楽については、僕なんかよりずっと厳しいガンちゃんから、そんな賛辞が送られるなんて、みんな自慢して良いんじゃないかい」
ドールのマスターも嬉しそうに言った。
「マジ嬉しいっすよ」
マコトも喜びを爆発させていた。




