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ドール― after story ―  作者: 粟吹一夢
Vol.4 真夏の夜の呪文
32/75

第一章 合宿(3)

 スーパーマーケットに着いた食料買い出し係一行。

 レナは、長い黒髪をポニーテールのように後ろで束ね、黒いロゴTシャツにジーンズのホットパンツを着て、すらりと延びた綺麗な生足にビーチサンダルを履き、右足首にはチェーンのアンクレット、首もとにはクロスのペンダント、左手首にはポップなブレスレットをはめて、いつもどおりの半端ないオーラを放っていた。

 ナオは、カラフルな柄の半袖ブラウスにストライプデニムのショートパンツ、足下はレナとお揃いで買ったビーチサンダルと、ナオらしい可愛いファッション。

 ミカはボーダー柄のキャミソールにジーンズのミニスカート、足下は素足に白いスニーカーという元気さ溢れる格好で、軽音楽部美少女三人組は、スーパーにいた男性客の目を釘付けにしていた。

 買い出し係のリーダーは、やはり料理にも詳しいレナだった。歩きながら書いていたメモを読み上げた。

「え~と、買うものは、まずはお肉。炭で焼いて、外で食べると結構美味しいから、そんなに高い肉でなくても大丈夫だと思うわ」

「そうだよね。タレは?」

 ナオの頭の中には、既に、ジュウジュウと音を立てる焼き立ての肉が浮かんでいた。

「一応、甘口と辛口を一本ずつ。それから野菜ね。キャベツ、ピーマン、タマネギ、椎茸、ニンジンってとこかな」

「ニンジンはちょっと……」

「駄目ですよ、ハル先輩。野菜もちゃんと食べなきゃ!」

 下級生なのに、上級生のハルの母親のように注意をするミカであった。

「トウモロコシも焼いたら美味しいですよね~。えへ~」

「ナオ、よだれを拭けよ」

「出てません!」

「後は、お米ね。五合あれば良いかな。それから飲み物。ジュースとお茶、スポーツドリンクもあれば良いわね」

「あの~、食後のおやつは?」

「ナオ、お前はやっぱり食い意地が張っているなあ」

「ほっといてください」

「ナオちゃんの好きなのを買えば良いよ」

「本当ですか。やった!」

「お前は、いったい何歳いくつなんだ?」

「だから、いちいち突っ込まないでください!」

 カズホとナオの夫婦漫才もかなり板に付いてきたようだ。

「お皿とか、お箸とかはどうするの?」

 ハルが冷静に指摘をする。

「ああ、そうだ。紙皿と紙コップに割り箸ね」

「結構、荷物になりそうですね」

 ややうんざりした顔でミカがつぶやいた。

「去年は、俺とマコトの二人でこの役目だったんだよ。荷物の重さに死ぬかと思ったぜ」

「だから、マコトは今年は来なかったのね。まったく」

「まあ、今年は五人も割り当てたことは正解だったな」

「それじゃあ、みんなで分担して買い出ししようか。私がカートを持って、お肉売り場にいるから、カズホとナオちゃんは飲み物とおやつ、ハル君とミカちゃんは野菜をそれぞれ持って来てくれる。後はまとめて買いましょ」

「OK」

 ナオはカズホと連れだって飲み物売り場にやって来た。

 二人揃って金髪の二人は、田舎のスーパーだと相当目立っていた。もっとも海水浴客やサーファー、観光客の多い所だから、それほど珍しいという訳でもなかったのだろう。じろじろと見られるということはなかった。

 初めて来た場所のスーパーで、二人で食材の買い物。ナオは、周りの人達が、ナオとカズホをどういうカップルだと思っているのか気になった。

(やっぱり、恋人同士っていう感じなのかな? まさか新婚さん……。そんな~)

 ナオは一人妄想に照れてしまっていた。

「ナオ。何ブツブツ言ってるんだよ。怪しいぞ」

「えっ……。カズホ、さっさと買い物しましょう」

「してるじゃないかよ。まずは飲み物だな。コーラとオレンジジュース、ウーロン茶、スポーツドリンクの五百ミリペットボトルを二本ずつで良いかな?」

「カズホ。早くお菓子の所に行こう」

「俺の話を聞け!」


 一方、野菜買い出し係りのハルとミカ。

「ハル先輩」

「何?」

「ハル先輩は野菜の善し悪しって分かりますか?」

「う~ん、自信は無いかも」

「どうしましょう。私も自信無いです」

「そうなの。でも、とりあえず見た目で選ぶしかないよね」

「そうですよね」

 ミカは、見栄えの良い野菜を適当に買い物籠に入れた後、予算額をオーバーしていないか心配になった。

「え~と、今、いくらくらい買ったんでしたっけ?」

 ミカが、ハルが持っていた買い物籠の中を確認しようとすると、ハルがすかさず答えた。

「今、二千五百四十五円のはずだよ」

「えっ、……ハル先輩、暗算していたんですか?」

「うん。何となくね」

「すごいですね。さすが、ハル先輩です。……私は勉強も苦手だし、家事もあまりやったこともないし、……ダメダメですね」

「えっ、どうして? 一年生バンドは村上さんでもっているみたいなもんじゃない。村上さんの明るさと元気が、みんなをまとめているような気がするし」

「あ、ありがとうございます」

 数学の計算は得意なハルだったが、女の子との付き合いに関して言えば、駆け引きとか計算尽くなどとは無縁であることはミカも知っていた。そんなハルから褒められて、素直に嬉しかったミカであった。

「それじゃあ、レナさんの所に行こうか」

「は、はい」


 精肉売り場で焼き肉用のパックを買い物カートに積み込んでいたレナのもとに、カズホとナオが戻って来た。

「レナちゃん。ちょっとお菓子を買いすぎたかも。私が個人的に食べたいものは、私が買うから」

「大丈夫だよ、ナオちゃん。資金はたっぷりあるし、ここのスーパー、結構お買い得な値段で良いお肉を置いているから、お菓子も余裕で買えるわよ」

「えっ、そうなの? さすが、レナちゃん」

 そこにハルとミカも戻って来た。

「レナ先輩。野菜を買って来ました」

「ご苦労様。どれどれ……、うん、なかなか良い野菜を選んできたのね」

「えっ、そうですか。結構適当に選んだんですけど……」

「ちゃんと新鮮で元気な野菜を選んできているわよ。ミカちゃんは先天的に良い奥さんになれる素質を持っているのかもね」

「えっ! そ、そんな……。レナ先輩。からかわないでくださいよ」

「別にからかってなんていないわよ。ミカちゃん、後で料理も教えてあげるわよ」

「ほ、本当ですか?」

「うん。誰に食べてもらいたい?」

「そ、それは、……って、まだ、そんな人はいません!」

「あらっ、今、特定の人が頭の中に浮かんでいたような気がしたけどな」

「もう、レナ先輩!」

「ふふふ。ごめんごめん。それじゃあ、後は紙皿と紙コップ、割り箸を買ってから、帰りましょう」

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