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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

壊れた男達の物語

作者: 暇人


彼は戦場の真っただ中にいた。

敵味方の銃弾が飛び交う戦場の中で銃器を手に進んでいた。

ただ進むことしかできない。

なぜならば、後ろには銃器を手に持った自国の仲間たち・・・がいるから・・・・・・・・


本当は戦争なんかには参加したくなかった。

両親はもう死んでいるので家族も国にはいない。

守るべきものもない男はこの戦争に意味を感じてはいなかった。

それでも、参加しなければ国の法に触れて処刑されるだけだった。

「どちらを選んでも死ぬんだ。なら、生き残れるかもしれない戦場へ行った方がマシなんじゃないか。」

その程度の考えだった。

「いざとなれば逃げだせばいいや」とも思っていた。

だが、現実はそんなに甘くなかった。

前線に送り込まれれば指揮官の合図とともに銃弾の中を突撃させられた。

命令違反は軍律によって即刻死刑。だから男は進み続けた。

それでも逃げ出すことはいつでも出来たし、その時間もあった。

なぜ逃げださなかったのか・・・。



いや、逃げだせなかった。

軍に参加してすぐの頃、前線への出撃命令が出たので男の所属する部隊は出撃した。

結構な人数の部隊だ。しかしほとんどが新米兵ばかりのようだった。

上官から前進命令が出たので敵軍へ向かって進んでいると、ふと隣を歩いていた男が振り向いた。

その瞬間、

1発の銃声とともに隣を歩いていた男の頭が無くなった。

「えっ?」

男は恐怖を感じて動けなくなった。そして思考が働き始める。

「敵が来たのか?何かいるかもしれない。もしかすると“スナイパー”と呼ばれるものかもしれない。だったらここは危険じゃないか?逃げなければ、安全な場所に」

そう思って逃げようとした時、男のいた位置に1発の銃弾が飛んできた。

男の動きが止まった。今度は自分が狙われたという恐怖。

明らかに狙っていた1発。そして、確実に後ろから銃弾は飛んできていた。

当たらなかったのは僥倖というべきか、とにかく助かった。2発目も来る様子はない。

ただ、周りの兵も混乱しているようで行軍が止まってしまっていた。

兵達の頭の中にあるのは先の銃弾のこと。

後ろからということは味方の方からということである。

結局全員が「自分たちは味方に狙われているのではないか?」という結論に至った。

当然、部隊内の数名がその場で逃げ出そうとした。

その者たちは次の瞬間にはただの肉塊となっていた。

「敵か味方か確認しなければ・・・振り返るべきだ。」兵達は判断した。

しかし、今の出来事があって振り返ろうとするものがいるはずもない。

皆、自分の命が惜しいから誰1人振り返ることができない。

結局は振り向くことができず、前進命令が出たので行軍を再開した。


「戦争なんだから、人が死ぬのは当然だ。」と誰もが思っていた。

ただ、この場合味方に狙われているということが問題であった。

「自分たちは敵の銃弾ではなく、味方の銃弾で死ぬのではないか。それも、些細な行動ひとつで・・・」

その結論に至った時、男を含む兵達の中には

「進むしかない。自分たちが生き残るには進んで進んでただ進んで、敵の兵士を撃ち殺して生き残っていくしかない。」

という感情が生まれてしまった。

いや、生まれてしまわざるを得ない状況だった。

男はともかく他の兵士には守るべきものもあったし、やりたいこともあった。

だからといって男は死にたがりなわけでもなかったし、味方に殺されるのなんてまっぴらごめんだった。

逃げるという選択肢はここで消えた。


その後の彼らの働きは目覚ましいものだった。

恐怖心などに駆られた人間というものは強く、敵軍はいかなる状況でも突撃してくる彼らを恐れた。

しかし、やはり突撃では生き残れるわけがない。

1人、2人と次々に戦場に散っていった。

男は運が強いのか、最後のほうまで生き残っていた。

だが、精神のほうはボロボロだった。もう、元のような人には戻れないだろう。

「自分をこんな境遇にしたあいつを生き残って絶対に見てやる。そして見つけて殺してやる。あいつさえいなければ今頃は逃げ出してのんびりと暮していたかも知れねえんだ。」

壊れてしまった男は唯一この目標を持って生き延びてきた。



そしてある日の戦闘。

突撃を繰り返していた男の運もここまでであった。

敵が放った1発の銃弾が男の腹に突き刺さった。もう死ぬことが分かったのだろうか、男の頭の中で例の目標が書き換えられた。

「どうせ死ぬのなら見てやろうじゃねえか。後ろにいる何かをなぁ!!そして呪ってやる。死んでもだ。」

その瞬間、

男の頭が弾け飛んだ。後ろを向くこともできなかった。撃たれたことにも気付かなかったかもしれない。

あっけないものだった。一瞬で男は死んだ。

人というものは生きている時間と比べると死に必要な時間が短い。どんな生物でもそうだが死ぬ時はあっけない。悲しいほどに・・・。

その日の戦闘は、男がいた軍がほぼ全滅という結果で敗北だった。


少し離れた場所で動くものがあった。それが例の“あれ”だった。



少し離れた場所・・・・。

ここにも数名の兵とまた別の男がいた。

彼らは男と兵達が全滅したことを確認すると撤退の準備にかかった。


準備が終わり撤退を始めたころ、少し離れた場所にいたほうの男は

「あいつらは逃げると俺らが殺していくのに、俺らは殺されねえんだなあ・・・。ははっ。はははははははははははははははははははははははははははははははは。」

壊れていた。狂っていた。どうしようもなくなっていた。

この男はこの後どうなってしまうのだろうか、生き延びたのか死んでしまったのかそれは分からない。




壊すことは簡単なことだ。されど、修復することは難しきことだ。

人を壊し続ける戦争はいつの時代も無くならない・・・・・・・・。

いつになったら終わるのだろうか?

それは、僕にはわからない。


これは、僕の妄想に過ぎない世界。けれど、どこかで存在したかもしれない物語。

すみません。初投稿です。親に第二次世界大戦のときに戦死者数がハンパない国のことを聞いたんで作ってみました。文章作る能力は皆無なので問題点とか指摘があればよろしくお願いします。

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