土俵をぐるぐる回るアレとおぼろ豆腐
単身赴任生活にも慣れ、手抜きしまくりではあるが、夕食だけは自炊の生活に慣れが出たころ…季節は進み盛夏期を迎えた。
研修所周辺の外気温は、40℃に迫ることも珍しくはない。
「よくもまぁこんなところに研修所を作るとか考えたよな」と思いつつ、業務に当たる。
本日の業務も無事に終わり、俺はスクーターにまたがり「いつものスーパー」に向かう。
外気温は体温越え…スクーターで加速すると、体温越えの熱風が体にたたきつけられる…それはもう「ジェットバスに入っている気分さながら」だったりする
そんな環境にさらされてスーパーに入ると、どうしても冷たいものに目が向いてしまう。
「漢字で書くと、季語にもつかえそうなくらい素晴らしい風情があるが、ひらがなでかくとちょっと別のものが想像できてしまう、高級そうめん」とか、どうしても目に留まる。
「煮込み時間が短いのはホント助かるんだけどな…そこに至るまでがなぁ…せめて9月に入らないと、無理だよなぁ…作るのは…」
俺は仮住まいの熱気のこもり方を思い出し、そうめんから手を放す。
そこへ「よく声をかけてくれる、防犯意識高い系で、営業職にも向いていそうな店員」がやってきた。
「何をお探しですか」と聞いてくれることはなくなったが、それでも俺がスーパー内を歩き回っているのを見かけると、ほぼほぼ声をかけてくれる。
そうめんを手放した俺を見て、何かを思いついたのか…「今日は、こんなご提案」とばかりに「おぼろ豆腐」を手に取り勧めてくる。
「これ、たれを別に用意するタイプなんです。たれがないなら醤油で、ということになります」と言いながら「それでも、あえて、たれがないのをお勧めします」と推してくる。
俺がいぶかしげにしていると「で、こちらへ…」と俺を「ふりかけ・ご飯のおとも」のコーナーへと案内する。
そして…やおら手に取ったのが「大相撲の本場所で、取組前に土俵をぐるぐる回っているアレ」と同じ三色カラーリングのパッケージ。
それも「わさび風味」「うめ風味」を選ぶ。しゃけとかのりとか、ほかのものではなく「選んで、それを2種類」
「先ほどのおぼろ豆腐、これを少し大きめの器に入れて…お好きな味のお茶漬け海苔を…1/3~1/4ほど振りかけてください。軽く混ぜたら…出来上がりです」
手抜きの極致…ついに「封を開けて器に盛る」だけ。
レンジアップすらしない…すばらしい…と、感動した俺は…おぼろ豆腐、お茶漬け海苔に加え、外国産豚バラ肉とみょうが、新生姜を買って帰宅した
・おぼろ豆腐 198円(半額シール付き)
・「取組前に土俵をぐるぐる回っているアレと同じカラーリングのお茶漬け海苔。二種類」 各128円(特価品)
・みょうが 1P6個入り128円
・外国産豚バラ肉 150g189円
みょうがを縦半分に切り、豚バラ肉を巻き付ける。新生姜も同様に巻き付ける。そこへ「自己否定をしないほうの塩」を振りかけ、トースターへ。
10分ほどの調理時間を利用して、おぼろ豆腐を器にもり、一度冷蔵庫に入れる。
泣かせるほど哀愁の漂う「チン」という出来上がりの音とともに、いそいそとそれらを食卓に並べる。
おぼろ豆腐に…細心の注意を払って、お茶漬け海苔を振りかけ、軽く混ぜ込む。
ワサビの香りがかすかに漂う。
俺は「これ、絶対に外さないな」と思いながら、寶焼酎ウーロン割を準備した。




