秋の野菜は...
勤務先の研修所の同僚から「キノコ」をたくさんもらったのは…街路樹の色が自己主張をしだしたころだった。
スクーターで街中を走る際の上着が少し厚手のものに変わり、ハンドルカバーをそろそろ準備するか、と考えるころだった。
…秋の味覚、キノコか
街も、吹き抜ける風も、身を包む装いも「油断すると風邪ひくよ?」と訴えかけてくる季節。
そんな折に、原木からたくさんとれたキノコ…しいたけ…をたくさんもらった。
俺は、キノコを使うレシピはあまり知らない。
「よく行くスーパーの店員さん」に、長芋とえのきだけを中心とした「長芋ステーキ」とでも呼ぶべき、あの品くらいしか思いつかない。
…さて、どう食べるか
俺は頂いたしいたけをリュックに詰めて…「いつものスーパー」に向かった。
店内に入ると、ほのかに暖かい気もする。暖房、というほどではないが…空気は確かに暖かい。
俺はかごをもって「頂き物のしいたけ」と仲よくしてくれそうな食材を探してみる。
…いーや、わからんな…なんかもうめんどくさいな、もう…
そう思いかけたときに、声をかけられる。
それは「パスタのおっかさん」だった。
俺は「この間のアドバイス、ありがとうございました」と礼を伝えると「いいのよ」と大げさに手を振られた。
俺は、その勢いを借りて「キノコをたくさん貰ったので、おいしく食べたいんですが…」とおずおず切り出す。
おっかさんにキノコの種類を尋ねられたので、リュックを下ろして中身を見せる。
「あら、いいものだねぇ…この肉厚…」
とつぶやいたおっかさんは…「これだけの品なら、あえて簡単に、ですよ。素材の味だけで。」と、本当に簡単に…メモ紙に書いてくれた。
・軸を外す
・アルミホイルを広げる
・好きな大きさに切ったしいたけをホイルに入れる
・バターを入れる。なんなら、ちょっとだけ塩を振ってもいい。
・ホイルで包んだら、トースターで焼く
・別にしいたけ以外を入れてもいい。
俺は「それだけ?」といぶかしげにするが、おっかさんは「味はバターで決まるのよ」と、大笑いをした。
…でも、うまそうだよな
そんなことを思っていた矢先に「営業担当役員としても大成しそうな、いつもの店員さん」が俺を見つけて声をかけてくる。
短い世間話の後、頂き物のしいたけの話と「おっかさんのバター推し」の話をし、試してみるんだと、というと…彼女は「だったら、これも試してみてください。作り方はかなり近いですし、やはり簡単ですよ」と言い出した。
彼女は「途中まで一緒なんです、作り方は」と前置きし…「わたしなら、そこにポン酢と黒こしょうを振り、ホイル焼きにします。ただ、塩分強くなるから、バターの量だけ注意ですね。あとは…豚バラ肉ちょっといれる、とかはかなりいいですよ」と教えてくれる。
彼女は「軸なんか、塩をして焼くだけでおいしいですよ」と、そっと教えてくれる。
おっかさんと彼女は…「どっちにするの?」とでも言いたげに俺のことをじっと見る。
俺は「どちらもうまそうだし、両方とも作ります」と…おそらく「一番嫌われるであろう答え方」をしてお茶を濁し、必要なものを買い求めた。
・とても有名な…おそらく日本で一番有名であろうポン酢 1瓶(小) 198円
・豚バラ肉(少量パック) 1P 88円(50%引きお見切り品)
・バター 1箱 358円
・つまようじ 1P 100円
頂き物のしいたけの軸を外す。そのうえで石突の部分だけちょこっと切り落とす。
軸が数本集まったら、つまようじにスッと刺しておく。
アルミホイルをまな板に広げる。
カサカサと小気味よい音が仮住まいのキッチンにひろがる。
その上に「あえて切らないしいたけ」を並べて「バターとごく少量の塩」「少し控えめにしたバターにポン酢を回しかけたもの、それと豚バラ肉を少し」を各々用意してホイルでしっかりと包む。
別に準備した「しいたけの軸の串刺し」に軽く塩をして、ホイル包みと一緒にトースターに放り込む。
時間がたつにつれ…仮住まいに「バター、しいたけ、豚バラ肉の香り」がどんどんと広がっていく。
そして…いつもの物悲しい、どこか哀愁の漂う「チン」という音が鳴ると同時に、俺はすべてを取り出し皿に並べ、食卓へと運んだ。
ホイルを箸で破った瞬間…「これ、もう、どっちもうまいよ」と確信した。
…いい季節だなぁ
そんなことをつぶやきながら、定番の寶焼酎25度のウーロン茶割とともに、秋を思う存分堪能した。




