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『悪役令嬢、ステーキハウスで世界を平らげる』~追放されたけど、味覚チートと経営才覚で元婚約者も国王も胃袋から屈服させます~  作者: 緋村ルナ


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第9章:美味しいは、独り占めしない。それがレティ式ですわ

 王都での勝利は、『ステーキハウス・レティーナ』の名を不動のものにした。私の元には、王国内の各都市の領主や商人から「ぜひ我が町にも支店を出してほしい」という依頼が殺到するようになった。


「レティシア嬢、君は今や王国で最も注目される経営者だ。この勢いに乗って、直営店をどんどん増やしていくべきではないか?」

 セオドア殿下が興奮気味に提案する。だが、私は静かに首を振った。


「いいえ、殿下。それでは駄目なのです」

「なぜだ? 君ならできるはずだ」

「私一人では、限界がありますわ。私が全ての店で肉を焼き、野菜を進化させるわけにはいきません。それでは、どこかで必ず品質が落ち、お客様を裏切ることになる」


 私の強みは、私のスキルそのもの。これをどうやって広げていくか。それが次の課題だった。そして、私が出した答えは――フランチャイズ化。つまり、仲間を育て、私のやり方を広めていくことだ。


「美味しいは、独り占めしない。それが私のやり方、『レティ式』ですわ」


 私はまず、職人の育成に着手した。料理人としての才能がある若者たちを集め、私の下で修行させる。もちろん、彼らに私のスキルはない。だからこそ、【味覚解析】で得た知識を徹底的に言語化し、マニュアル化した。「この肉はこの厚さで切り、鉄板の温度がこれくらいになったら乗せ、片面を何分、裏返して何分」といったように、誰がやっても完璧なミディアムレアが焼ける調理法を叩き込む。


 次に、契約農家の支援。腕はいいが販路に困っている農家と契約し、高品質な野菜や穀物を安定して供給してもらう仕組みを整えた。私の【食材進化】ほどの奇跡は起こせないが、彼らが誇りを持って作った野菜は、それだけで素晴らしい味わいを持っている。私は彼らに、より美味しくなる品種改良のアドバイスなども行った。


 そして、やる気のある者に『レティーナ』の暖簾を分け、支店経営を任せる。ただし、厳しい契約を結ぶ。調理マニュアルの遵守、指定農家からの食材仕入れ、そして何よりも「お客様を幸せにする」という理念の共有。これを破った場合、即座に契約は破棄される。


 この『レティ式拡大戦略』は、驚くべき速さで王国中に広がっていった。

 各都市にオープンした『レティーナ』は、どこも本店と同じように人々の胃袋を掴み、大成功を収めた。職人たちは誇りを持ってステーキを焼き、農家は安定した収入を得て潤い、そして人々は手頃な価格で最高の食事を楽しめるようになった。


 私の事業は、単なる飲食店経営ではなくなっていた。それは、新たな雇用を生み、地方経済を活性化させ、人々の食生活を豊かにする、一つの社会システムとなっていたのだ。


 人々は、私の提唱する理念をこう呼んだ。

『誇りある労働と、満腹の平和』。


 ある日、地方の支店を視察していると、店のオーナーが深々と頭を下げて言った。

「レティシア様のおかげで、この寂れた町にも活気が戻りました。本当に、ありがとうございます」


 その言葉に、私は胸が熱くなるのを感じた。

 王都を追放された一人の令嬢が始めた小さな店が、今や多くの人々を笑顔にし、国を豊かにしている。私の革命は、確実に世界を変え始めていた。

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