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『悪役令嬢、ステーキハウスで世界を平らげる』~追放されたけど、味覚チートと経営才覚で元婚約者も国王も胃袋から屈服させます~  作者: 緋村ルナ


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第8章:本物の味は、模倣ごときで揺らぎませんわ

『レティーナ』の成功は、行商人や旅人を通じて、瞬く間に王国中に広まっていった。辺境の町に、肉を選んで焼いてもらう奇妙な店があり、そこでは食べ放題の美味い野菜と、魔法の飲み物、そして神の菓子が味わえるらしい――そんな噂が、王都の欲深い資本家たちの耳に入らないはずがなかった。


 ある日、セオドア殿下が苦い顔で一枚のチラシを持ってきた。

「レティシア嬢、厄介なことになった。王都の商業ギルドを牛耳るデニング商会が、君の店の模倣店を王都に開店した」


 チラシには、『ステーキキング・デニー』というふざけた店名と、「お肉が選べる!セルフスタイル!」「サラダバー&ドリンクバー完備!」といった謳い文句が、私の店のコンセプトを丸パクリした形で踊っている。しかも、ご丁寧に「ミディアムレア」や「ソフトクリーム」といった商品名までそのまま使っているのだ。


「なんと厚顔無恥な……!」

「彼らは資金力に物を言わせ、王都の一等地に大規模な店舗を構えた。このままでは、君が築き上げたものが、彼らの手柄として世に広まってしまう……!」


 セオドア殿下は憤るが、私は意外なほど冷静だった。

「ご心配には及びませんわ、セオドア殿下。彼らが模倣できるのは、所詮、上辺だけのことですから」


 私は二つの対抗策を準備した。

 一つは、法的な対抗措置。私はエルベルグで店を開く際、セオドア殿下の助言もあって、店のシステムや主要な商品名について、魔導契約を用いた「商標登録」のような手続きを済ませていた。これは、契約魔法によって保護され、王国の法において絶対的な効力を持つ。


 私は代理人を通じて、デニング商会に警告状を送付した。『レティーナ』『ミディアムレア』『サラダバー』『ソフトクリーム』などの名称使用の即時停止、及び損害賠償を求める、という内容だ。

 当然、デニング商会はせせら笑った。「辺境の小娘が何を言うか」と。そこで私は、王国の司法機関に魔導契約の執行を申し立てた。これが受理されれば、デニング商会は莫大な賠償金を支払うか、強制的に店名や商品名の変更を命じられることになる。盗作裁判の始まりだ。


 だが、私の本当の切り札は、そんなものではない。

「模倣店ラッシュ? 上等ですわ。本物の味は、模倣ごときで揺らぎませんのよ」


 王都では、デニング商会の店が物珍しさから最初は客を集めた。だが、客たちのレビューはすぐに辛辣なものに変わっていった。

「肉が硬くて臭い」「焼き加減がめちゃくちゃだ」「サラダの野菜がしなびている」「ソフトクリームが氷みたいにシャリシャリする」


 当たり前だ。彼らに私の【食材進化】や【味覚解析】、【調理補助】スキルがあるわけではない。同じ名前を付けても、中身は似ても似つかぬ劣化コピー。客の舌は正直だ。


 ちょうどその頃、私はセオドア殿下の協力のもと、満を持して王都に『ステーキハウス・レティーナ』の二号店をオープンさせた。裁判の行方と二つの店の味比べに、王都中の注目が集まる。

 結果は、火を見るより明らかだった。

『レティーナ』王都店には、本物の味を求める客が開店前から長蛇の列を作った。一口食べた客は誰もが感動し、デニング商会の店がいかに酷い模倣品であったかを悟った。


 数週間後、裁判所は私の訴えを全面的に認め、デニング商会に厳しい判決を下した。彼らは信用を失墜させ、多額の賠償金を支払い、あっけなく市場から撤退していった。


 私は王都店の前に立ち、行列を作る人々を見て静かに微笑んだ。

「小手先の模倣で、私の革命は止められませんわよ?」

 圧倒的な味の優位性。それこそが、何者にも真似できない、私の最強の武器なのだから。

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