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『悪役令嬢、ステーキハウスで世界を平らげる』~追放されたけど、味覚チートと経営才覚で元婚約者も国王も胃袋から屈服させます~  作者: 緋村ルナ


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第3章:異世界に「ミディアムレア」が生まれた日

 エルベルグの町大路から少し外れた場所に、小さな木造の店がオープンした。看板には、私が自分で彫った文字で『ステーキハウス・レティーナ』と書かれている。レティシアの愛称、レティから取った店名だ。


 開店初日。店の前には、物珍しそうにこちらを眺める冒険者や労働者たちの姿があった。彼らのお目当ては、私が店の前に張り出した一枚のメニュー表だ。


【本日のステーキ】

 ・肩ロース(200g)……銀貨3枚

 ・サーロイン(200g)……銀貨5枚

 ※肉を選び、お好みの焼き加減でご注文ください。


「焼き加減だと?」「なんだそりゃ、よく焼くか焼かないかくらいだろ」「そもそもこの値段でステーキが食えるのか?」


 ざわめく彼らに、私は店のドアを開けてにこやかに告げた。

「いらっしゃいませ! どうぞ、中へお入りくださいな」


 店内は、カウンター席といくつかのテーブル席だけの簡素な造り。だが、最大の特徴はカウンターの奥にある。ガラスケースの中に、私が【食材進化】で創り出した見事な肉塊が鎮座しているのだ。客はまずここで好みの肉を選び、次に焼き加減を注文する。これが私の考えた「セルフ式ステーキハウス」の核心だった。


「焼き加減には、いくつか種類がございます。『レア』は表面だけを軽く焼いたもの。『ウェルダン』は中までしっかり火を通したもの。そして私のおすすめは、その中間の『ミディアムレア』。外は香ばしく、中はしっとりジューシーな最高の状態ですわ」


 初めて聞く言葉に、客たちは戸惑いながらも興味津々といった様子だ。一番槍としてカウンターに座ったのは、体格のいい斧使いの冒険者だった。


「じゃあ嬢ちゃん、その……みでぃあむれあ?ってやつで、サーロインを頼む!」

「かしこまりました!」


 注文を受けると、私はガラスケースからサーロインを一枚切り出し、彼の目の前の鉄板で焼き始める。スキル【調理補助】を使い、最適な火力を維持する。


 ジュウウウウウッ!


 再び、あの香りが店内に満ちていく。肉の焼ける音と匂いは、何よりの広告だ。店の外で様子をうかがっていた人々が、たまらずぞろぞろと入店してきた。


 焼き上がったステーキを熱々の鉄皿に乗せ、特製の醤油ベースのソースをかけると、「ジュワッ!」という音が一層食欲をそそる。それを斧使いの男の前に置いた。


「さあ、熱いうちにどうぞ」

 ゴクリ、と男が唾を飲む音が聞こえる。彼はナイフでステーキを切り分け、その断面を見て目を見開いた。美しいロゼ色。外側はこんがりと茶色く、中心に向かうほど鮮やかな赤みを残している。


「こ、これが……みでぃあむれあ……」


 彼は恐る恐る一切れを口に運び――そして、固まった。次の瞬間、その無骨な顔が驚きと歓喜でくしゃりと歪む。


「う、うめええええええええっ! なんだこれ! 肉が口の中でとろけるぞ!?」


 その絶叫が、号砲となった。

「俺もそれ!」「私も!」「こっちもミディアムレアで!」

 注文が殺到する。私はスキルを全開にし、次々と完璧なステーキを焼き上げていく。店内は熱気と肉の匂い、そして客たちの幸福な咀嚼音で満たされた。


 この日、異世界に「ミディアムレア」という言葉が誕生した。そして、『ステーキハウス・レティーナ』は、エルベルグの労働者たちの胃袋を鷲掴みにし、伝説の始まりを告げたのだった。

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