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エピローグ
老いた私は、暖炉の前で揺り椅子に座り、自分の人生を綴った回想録の最後のページをめくっていた。
窓の外では、雪が静かに降っている。私の人生も、もうすぐ穏やかな冬を迎えるだろう。
公爵令嬢として生まれ、悪役令嬢と罵られ、王都を追放された。
でも、私は一度だって不幸だと思ったことはない。
チートなスキルはあったけれど、それだけじゃない。私の側には、いつも美味しいものと、それを食べて笑ってくれる人たちがいた。
私は料理で世界を変えた、なんて大それたことを言うつもりはない。
ただ、お腹を空かせた人々の前に、温かいステーキを出し続けただけ。
でも、その一皿が、人の心を温め、明日への活力を与え、誰かの人生の道標にさえなったのなら。それ以上に幸せなことはない。
私はペンを取り、回想録の最後に、短い言葉を書き記した。
私の人生の、たった一つの真実。
「悪役と呼ばれても、美味しく笑えば、それで勝ちですわ」
私はペンを置き、満足して目を閉じた。
どこからか、香ばしい肉の焼ける匂いがした気がした。




