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番外編②:約束の一皿、再び
ある日の夕暮れ時、一人の青年が店に入ってきた。歳は二十歳くらいだろうか。使い込まれた革鎧を身に着け、腰には立派な剣を差している。その顔には、どこか見覚えがあった。
彼はカウンターに座ると、少し緊張した面持ちで言った。
「サーロインのミディアムレアを。……金貨で、払う」
昔、開店初日に来た、ボロ服の少年だった。なけなしの銅貨を握りしめ、おずおずとステーキを注文した、あの。
私は黙って、あの頃と寸分違わぬ完璧なステーキを焼いて、彼の前に置いた。彼はそれを一口食べると、ハッと目を見開いた。
「……これだ……! あのときと、同じ味だ……!」
彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「俺、あの日の味が忘れられなくて、いつか金貨で腹いっぱいこれを食うんだって、それだけを目標に冒険者になったんだ。辛い時も、この味を思い出して頑張れた……。ありがとう、レティさん……!」
私は知らなかった。私の焼いた一皿が、一人の少年の人生を支え、変えていたなんて。私はそっと、彼の皿にサービスのソフトクリームを乗せてあげた。彼の涙は、きっとしょっぱいけれど、デザートは甘い方がいいに決まっているから。




