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[ 時間の交差点 ]   作者: ショウキ
第1巻 始まり
1/3

第1章

クロノスプロジェクト


地下の秘密研究室で、一人の科学者が待望のプロジェクト「クロノス」と呼ばれる計画の設計図を描いていた。


「トキワ!」


静かな声が響く。実験台の向こう側で器具を整理していた助手のトキワが顔を上げた。


「はい、先生。ご指示はありますか?」


コウシン博士は椅子から立ち上がり、精密に描かれた設計図を手にトキワの元へゆっくりと歩み寄った。


「これを見てくれ。これは時空ゲート『クロノス』の設計図だ。我々の研究はついに頂点に達した。」


トキワは手にしていたメモを置き、設計図を受け取ると、ため息をついた。


「ゲート……クロノス、ですか?完成すれば、過去や未来へ瞬時に移動できるようになるのでしょうか……?」


博士の目には自信が宿っていた。


「その通りだ。しかし、期待通りに作動させるには、量子レギュレーターの精密な制御と時空座標の正確な同期が必要だ。トキワ、君の専門であるナノ製造技術を使って、量子レギュレーターのコア――デュアルシリコン結晶構造――を組み立ててほしい。」


トキワは深くうなずき、すぐに自分のデスクに戻り、道具を手に取った。


「了解しました。まずはコア結晶を極低温環境で固定・成長させる必要があります。結晶格子の歪みを0.02%以内に保てなければ、時空ゲートの開放が妨げられます。」


博士はホワイトボードの前に座り、粉チョークで複雑な数式を書き始めた。


「時空座標の計算には特殊相対性理論と量子重力の組み合わせが必要だ。ここに示した式でゲートを開く際の地平線を安定させる。トキワ、Λ項の扱いはどう思う?」


「Λ項……つまり宇宙定数ですね。ホログラフィー原理を応用してエネルギー密度を適切に制御できれば、ゲート周辺の真空揺らぎを打ち消せます。ただし、瞬間的に数テラジュールのエネルギー消費が発生します。電力供給システムの改良が急務です。」


コウシン博士は微笑み、小型のプラズマ・ジェネレーターをポケットから取り出した。


「これは新型のパルス発生器だ。超伝導ナノチューブ技術を使い、瞬時かつ安定的に高出力を供給できる。ゲートの電源ユニットに組み込む予定だが、回路の改良に協力してほしい。」


トキワは慎重に装置を手に取り、内部構造を観察した。


「これほど小型で安定した出力源は初めて見ました。配線は何層ですか?」


博士はノートを手渡した。


「高周波共振回路が5層、コヒーレンス損失防止コーティングが3層だ。設計図もここにある。基板はグラファイト複合材で、放熱性を強化している。」


二人の間には静かな熱気、緊張と期待が混ざり合っていた。


――研究室の隅では、古い時計が静かに時を刻んでいた。まるで時間そのものが、この研究の進展を見守っているかのように。


トキワは深呼吸し、真剣な表情で言った。


「先生、本当にクロノスを完成させられるのでしょうか。」


コウシン博士はうなずき、ホワイトボードのイレーザーを手に取った。


「よし。これが第一歩だ。次は量子レギュレーターを組み立て、パルス発生器と同期テストを行う。準備はいいか?」


トキワは力強くうなずいた。


「はい!すぐに取りかかります。」


その瞬間、研究室の扉が激しく揺れ、遠くのセキュリティ無線から微かなノイズが聞こえた。


「緊急事態発生。全館封鎖されます。」


コウシン博士は携帯端末を手に取り、画面を凝視した。


「セキュリティ・プロトコルは……?」


トキワも自分の端末を確認した。


「画面アクセスが制限され、詳細は不明です!」


研究室中の監視モニターが赤く点滅し、無数の警報が鳴り響き始めた。


コウシン博士は静かに、額に汗を浮かべながら言った。


「落ち着け、トキワ。まずはゲートコアの緊急隔離システムを作動させろ。無限の渦に巻き込まれる前に、自分の安全を確保しろ。」


トキワは素早くキーボードを打ち、赤いボタンを押した。


ゲートコアを囲む保護チューブが自動的に閉じ、青白い光が一瞬だけ現れた。


研究室の緊張は一瞬和らぎ、博士は深く息をついた。


「難しい判断だった……だが、これもすべてテストの一環だ。本当に時の海を泳ぐには、予期せぬ嵐を乗り越えねばならない。」


トキワはかすかに笑いながらうなずいた。


「はい、先生。本当の挑戦はこれからですね。」


――数時間後。


研究室は静まり返り、赤い警告灯だけがかすかに光を放っていた。博士とトキワは作業台に戻り、隔離チューブの安全を確認していた。


「どうだ、進捗は?」博士が静かに尋ねた。


トキワは端末の画面を見ながら答えた。


「ゲートコアからの異常振動は収まりましたが、セキュリティログに不審なアクセス記録が残っています。第三者による侵入の可能性は否定できません。」


博士は眉をひそめ、ため息をついた。


「我々の研究が秘密である以上、外部からの干渉は避けられない。しかし今は、ゲートのテストを進めるしかない。時間が勝負だ。」


トキワは真剣な表情で設計図を指差した。


「先生、次はエネルギー充填テストです。パルス発生器を起動し、量子レギュレーターと同期させます。精密に制御しなければ、再び故障する恐れがあります。」


コウシン博士はうなずき、実験台で複数のケーブルを抜き差しし、ダイヤルを調整した。


「よし、準備完了だ。トキワ、出力を1.0から徐々に上げてくれ。」


トキワは素早くコマンドを入力し、画面に現れる数値を凝視した。


「出力1.0……1.5……2.0……問題ありません。エネルギー安定しています。」


博士は小声で続けた。


「次は量子共鳴段階を同期させて……フロー係数を0.98まで上げろ。」


トキワは慎重に数値を調整し、ついに指先が止まった。


「同期完了。位相ロックが確立されました。」


その瞬間、試作機のコアが淡い青緑色のオーラに包まれ、ゆっくりと振動し始めた。金属リングが回転し、微細な粒子が空中に舞う。


「先生、見えますか?これ……まるで蒸気みたいです。」トキワの声は驚きと喜びが混ざっていた。


博士は眼鏡越しにリングの動きをじっと見つめた。


「美しい……だが、これが終わりではない。この空間を実験的に開き、小さなゲートを作るぞ。」


トキワは力強くうなずき、赤いボタンに手をかけた。


「了解。マイクロジェット、オープン……起動!」


――バチッ。


静かな爆発音が研究室に響き、コアのオーラが一瞬強く輝いた。リングの内側に小さな楕円形の窓が現れた。


その窓の向こうには、輝く紫色の空間が見えた。中から淡い光が漏れ、まるで異世界へのゲートのようだった。


トキワは息を呑み、目を見開いた。


「……先生、成功です!小型ゲートが開きました!」


コウシン博士は思わず声を上げた。


「やった!だが、これは始まりに過ぎない。今度はこのゲートを拡大し、安全な通行エリアを作らねば。」


「でも、先生……本当に大丈夫でしょうか?」


「もちろんだ、トキワ。このプロジェクトは学会で発表した後、研究室に戻ったら破棄するつもりだ。誰にも詳細を知られてはならない。」


「了解です。設計図も含め、すべて焼却処分します。」


トキワは資料を集めて焼却の準備をしながら、心の中で疑問が湧いてきた。なぜ先生はここまでしてこのプロジェクトを進めるのか――。


「先生、質問してもよろしいですか?」


コウシン博士はトキワの問いかけに、はっきりと答えた。


まあ、私は人々が私をからかうのにうんざりしていました。学生時代、私はそこで自分の研究を発表していましたが、学生たちは私や私の科学的業績をからかっていました。


トキワは先生の過去を聞き、さらに興味を持った――。

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