刺し違えてでも
俺の大剣と、鎧武者の剣が何度も交錯する。
切り結んだ膠着に、俺はサブマシンガンを連射する。
どうやって作ったのかは、自分でもあまりわからない。
鞄を作った時と同じだ。
頭の中のインスピレーションをただ形にした。
連射する弾丸には旱魃の魔法を込めており、当たった場所は強制的に枯れてひび割れる。
既に何発も銃弾を受けている鎧武者は次第に動きが遅くなり、もつれる事が多くなった。
すると、鞄から例の液体を取り出して俺に投げつける。
そう来ると思っていたよ。
大剣でポーションを切り裂き、俺の身体にあの液体がかかる。
でも、不思議ともう何も感じなかった。
「くそぉ!なぜ、動きが止まらない!!激痛のはずなのに!!」
やっとわかったよ。
この液体は痛みだけで、俺のHPを減らす効果は大した事ないんだろ?
所詮はただのアイテムだもんな。かけるだけで殺せるんだったら、あまりに強すぎる。
「痛い」だけなら、もうどうでもいいや。
そんな感情は、無視できる。
「〈神速一閃〉!!」
振り抜く剣に、俺は大剣をぶつける。
甲高い音をたて、互いの剣が空高く吹き飛んだ。
俺はサブマシンガンを投げ捨てて、鎧武者に飛び掛かる。
馬乗りになって、その首に両手を宛がった。
「ぐぅぅぅぅ!」
どうやら、力では俺が勝っているらしい。
手に、人間の首の感覚が伝わってくる。
肌も、肉も、骨も。
壊してやる。ぐちゃぐちゃにして、潰してやる。
「ぐぅぅ…ふっ…はははっ…!」
鎧武者は、突然笑い出した。
「馬鹿が…!所詮は魔物…!武装している俺の首を、ゴブリン風情が折れるもんか!」
嘲笑い、腰からナイフを取り出して、俺の腹を刺した。
「死ね!死ね!くたばれ、怪物め…!」
右手でナイフを刺し、左手で鞄からポーションを取り出して、震えながら刺し傷にびしゃびしゃと液体を振りかける。
「はははっ…はっ…ぐぅぅ!?」
俺は、決して両手を首から離さなかった。
両手から旱魃魔法を発動し、分厚く首を保護する布を劣化させていく。
「うぐぅぅ…なんでぇ…怯まない…?」
ただ、ひらすらに。
俺は指に力を加え続ける。
「あぁぁ……あぇ……やばっ……ゴブリン…に……負ける……?」
死ね。
死ね。
死ね。
消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!
俺の前から消え失せろ…ッ!
殺してやる。絶対に、刺し違えてでも…!
内臓をこぼしながら、痙攣するナイフに臓腑を掻き出されながら、狂気と怒りが鎧武者の首に張り付いて決して離れない。
気付けば、旱魃魔法は布を貫通し、皮膚に到達していた。
肉を超え、骨を超え、命に届く。
何分、そうしていたろうか。
いつの間にか夜になり、夜を超え、朝日が昇っていた。
ふと冷静になった時、そこには首の取れた鎧武者の死体があった。




