非常食
洞窟に戻ると、その暗闇の奥から吊るされた肉が俺を出迎える。
「ギィギィ!」
その肉たちに、俺はオークの足を見せつけて勝鬨を上げた。
どうだ!大物を獲ったぞ!
結局今回の獲物であった狼は取れたて新鮮なまま、現場で平らげてしまった。
持ち帰ってこれたのはオークの足だけだが、それだけでも狼一匹分に匹敵する肉量だ。
十日以上かけて備えた今回の狩りは、結果的に大成功。
その準備期間に練習がてら仕留めた動物の肉で、既に俺の拠点は賑わっている。
俺は肉の暖簾を潜って解体用スペースに行くと、そこにオークの足を放り投げる。
ナイフを使って、もはや慣れた手つきで皮を剥がして格部位ごとに切り分け、ストックしてある頑丈な蔓に巻き付けて、干していく。
余った皮を鞣し、これも干す。
そろそろ皮を使った道具も作っていけそうだ。
すでに絨毯や毛布がわりにいくつか使っているが、加工をすればするほど手先が器用になっていく感覚がある。
今なら、例えば手袋や靴、簡単な鞄なんかも作れるかもしれない。
洞窟の外を見ると、まだわずかに日が出ている。
寝る前に少し、作業をしておこう。
俺はずっと干してあった人間の皮とアキレス腱、ナイフを手に取り、洞窟の入り口まで行って座る。
動物の皮は毛が覆っていて暖かく、衣類に使いたい。
しかし、人間の皮は薄いし毛もなく、使い道に困っていた。
だが毛がないというのは鞄に加工するならば、きっと使いやすいはずだ。
俺は黙々と、試行錯誤をしながら皮を鞄の形に加工していく。
すると、作業が難航していたある瞬間、急にインスピレーションが沸き立って手がスムーズに動き、俺が想像していた通りのポーチのような鞄を作成する事が出来た。
これは……間違いなく自然な動きではない。
どうにも、スキルを使った時の感覚がある。
恐らく道具の作成を補助するようなスキルが、俺にはあるようだ。
まぁ、使えるものは何でも使う。
スキルで作った鞄だ、もしかしたら特殊な能力なんかが備わっているかもしれない。
と、自分で作った鞄を繁々とみていると、ふと動物の視線を感じた。
「ッ!?」
バッと顔を動かし、その所在を探すと、あっさりと視線の主が見つかった。
特段隠れる事もせず、堂々と俺を見ていたのは、あの子供狼だった。
「ギィ…」
ついてきていたのか。
こちらを潤んだ瞳で見つめており、目が合った事で尻尾を振る。
嬉しそうにトテトテと、俺に近づいてきた。
ここまでついてきてしまった以上…殺すしかない。
なんて思いながら、俺はごく自然な動作で足にすり寄る子供狼の頭を撫でていた。
ブンブン揺れ動く尻尾があまりに可愛く、やっと俺は理解する。
無理だ。
俺に子犬は殺せない。
犬じゃないけど。
「…ギィ」
溜息を吐いてから、俺は観念してウエストバックを漁り、鹿モドキで作ったジャーキーを子供狼に食わす。
可愛いな、クソ。
まぁ、備蓄なら沢山あるし、今急いでこの子供狼を狩る必要はない。
そうだ、太らせて大きくしてから食べよう。
うん。
そうして俺は、この新たな家畜に「非常食」と名付けた。
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Race:バイオハザード・ゴブリン
Name:無し
Level:28
Status:
HP(50/50) MP(22/22) (SP32/32)
Attack(19) Defense(19) Speed(29)
Critical(25) Luck(3) Skill(12)
《種族スキル》
〈旱魃魔法Lv.5〉〈被呪術師M〉〈休眠Lv.8〉〈弓術Lv.9〉〈チャージ:弓Lv.7〉〈速射の心得Lv.1〉〈剣術Lv.1〉〈チャージ:剣Lv.2〉〈影魔法Lv.3〉〈バイオハザードLv.1〉〈鬼に金棒M〉
《通常スキル》
〈無痛Lv.1〉〈毒耐性Lv.1〉〈潜伏Lv.5〉〈道具加工Lv.2〉〈千里眼Lv.1〉〈物理耐性Lv.4〉〈順養Lv1〉
《固有スキル》
〈軍靴の足音E⁺⁺〉〈忘却の彼方・血が枯れ果てるまで1/3〉〈疾駆B〉
《Extraスキル》
〈危機感知B〉〈幸運B〉〈戦闘続行A〉〈十悪五逆A⁺〉〈徒花C〉
《称号》
〈腐食のエキスパート〉〈ウェンカムイ〉〈死の畔に立つ者〉〈疾く駆ける〉〈人喰い〉〈鷹の目〉〈生への執着〉〈呪いの王〉〈ジャイアントキラー〉
〈道具加工〉
取得スキル概要
〈道具作成〉の進化スキル。
より高度な道具を作成できる。Skillに常時100%のバフがかかる。器用さと精密さがかなり上昇し、作成した道具の効果プラス110~200%。
また、効果バフが所持する作成していない道具にも付与されるようになる。
通常スキルのため、あらゆる種族が獲得可能。
〈順養〉
取得スキル概要
魔物や動物と信頼または調教関係を築き、〈隷属〉あるいは〈飼育〉状態を与える事で獲得できる。
一体までの眷属を使役できる。眷属には状態に応じたバフが付与される。また、眷属が戦闘状態時、使役者のHPを10%増やす。
眷属のステータスは使役者が自由に閲覧し、スキルポイントを割り振れる。
通常スキルのため、あらゆる種族が獲得可能。




