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勇者の幕間 ①


 ※


「ようこそ、異世界へ」


 目を開けると、そこには峻厳な王座があった。


 私の足元には魔法陣が描かれており、そこを甲冑を纏った兵士が囲む。

 わけもわからず目を白黒させている私を暖かく見つめるのは、玉座に座った王様だった。

 その王様が、私の目覚めと共に放った言葉を思い出す。


「え…?異世界……?どこ、ここ?私は、確か……修学旅行の帰りに、土砂崩れに巻き込まれて……それから、えっと…」


 帰りのバスが土砂崩れで押し流され、崖下にバスごと落ちたのを覚えている。

 その時、確か同じクラスの男子が私を庇ってくれていたような…

 彼はどこだろう?クラスのみんなは?


「突然の事でさぞ困惑している事だろう、勇者よ。其方はこの世界を救う勇者に選ばれたのじゃ」


「……は?」


 何を言っているんだこいつは、という顔を思わず向けてしまう。


「まずは其方の名前を聞かせてはくれまいか?」


「…神林、柚」


「ユズか。良い名前じゃ。では早速で悪いが、そこの鑑定水晶に手を翳して見てはくれんか?」


 私のまわりには槍を持った兵士がいるわけで、従わなければ何をされるかわからない。

 せめてもう少し説明をしてほしい、と冷汗をダラダラ流しながら、私は言われるがままに魔法陣から一歩出たところに置かれていた水晶に両手を翳して見た。


 すると、ピコン、とやたらポップな効果音と共に、水晶の上に大きく半透明な画面が映し出された。



────────────

Race:人族

Job:勇者-魔法剣士

Name:神林柚

Level:1

Status:

HP(2010/2010) MP(140/140) SP(131/131)

Attack(254) Defense(303) Speed(211)

Critical(2) Luck(5) Skill(11)


《種族スキル》

〈剣術M〉〈パリィM〉

《通常スキル》

〈魔道士M〉

《固有スキル》

〈光の巫女A⁺⁺⁺〉〈湖の加護A〉

《Extraスキル》

〈魔力B〉〈因果補正A〉〈召喚補正A〉〈勇者A〉

《称号》

──


────────────



 それはどうにもゲームのステータス画面なんかによく似ていて、この画面だけでなくいくつかページがあるようだった。

 セクションの切り替えボタンには〈生育値〉や〈スキルツリー〉と書かれており、私の眼前に現れたこの画面は〈基礎ステータス〉と記されている。


 一体これがどのような原理で具現しているのかさっぱりわからず、さらに恐らく私のステータスであろうこの値が良いのか悪いのか、何もピンとこないまま首を傾げる。

 しかし、これを見た兵士や王様の反応は違った。


 まるでそう、あり得ないものを見たようなざわめきが起こり、威圧的に私を囲んでいた兵士たちが一部腰を抜かしながら、後ずさっていく。


「なんだこれは…!?」


「あり得ない…!全基礎ステータス三桁越え!?」


「これ……レベル1だよな…!?」


 概ね、これは良い値だったのだろうか?

 それとも、魔女を恐れる的な悪い意味合いか?

 私は浅い異世界系作品の知識をフル動員し、自らが生き残る道を探す。


 だが、そんな混沌を王様の拍手が静めた。


 みると、嬉しそうに笑って、一人手を叩きながら王様は立ち上がる。


「素晴らしいッ!!全基礎ステータスがレベル1で三桁を超え、さらにA以上のユニークスキルを二つ!ExtraスキルまでほとんどがAとは…!!」


「……えっと…それで、もう少し説明を求めたいんだけど…」


「これほどの勇者は何百年ぶりかッ!歓迎しよう、ユズ!ようこそ、人族の至宝、ゲルニア王国へ!其方こそ……魔王を打ち倒すに相応しい…!」


「は?」


「喜べ少女よ。其方は救世に応えて降臨せし最強の勇者。アレクシス・ゲルニアの名において、其方を全力でサポートする事を約束しようぞ!」



 どうやら、私はこの人の話を全く聞かない王様に、異世界召喚されてしまったらしい。


 元の世界に帰りたいし、あっちで死んだはずの私はどうなっているのか気になるし、私を庇った“彼”の安否も気になるし。


 それでも、簡単には帰してくれそうにない。


 とりあえず、ゲームは得意だ。

 とっとと魔王でも倒して、帰りたいな。




 ※





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