会心の一撃
俺を必死に探す様子は、あの女に魔法で俺を追跡する、みたいなことは出来ないのだと確信を持たせた。
ならば、追うために何を目印にするか?
それは俺の流す血だ。
逆に言えば、この血が流れる以上、俺は逃げきれない。
なればこそ、これは逆手にとれる。
明らかに俺を知性のない矮小なゴブリンとしか認識していないあの女は、まさか俺が策を弄するとは思いもしないだろう。
その思い込みは、一度きりのチャンスを作れる。
そう考え、俺はあえてわかりやすく血で轍をつくり、そして、その轍を全くそのままに引き返した。
足跡も、血の落ちる地点も、全てなぞりながら引き返し、木の上に昇る。
女が来るのを木の上で待ちながら、俺は飛び掛かる覚悟を持って息をひそめる。
そして現れた女は、幸運にも俺のいる木の真下までわずかに後退してくれた。
そのチャンスを逃すことなく、俺は木上から飛び降りて思い切り杖を振り下ろす。
ゴッと鈍い打撃音が鳴り響き、脳天を確実に捉えた。
しかし、
「このっ…!」
ギロリと、女の鋒鋩とした眼差しが俺を捉える。
一瞬頭を押さえただけで、女は血の一滴も流してはいなかった。
硬すぎる。尋常じゃない丈夫さ。
何となく理解してはいたが、やはりステータスがあるこの世界では、物理的なダメージとヘルスポイントの減り方は同じではないのか?
元いた世界なら確実に死んでいるほどの威力だったが、レベル差があるのか、ステータス差があるのか、その両方か、ダメージは全く与えられていなかった。
すぐに女が近距離で魔法を束ねようしているのがわかった。
まずい。逃げられない。
けど、攻撃が効かないのではどうしようも…
くそッ!せめて、一矢報いたい!
ただそれだけの思いで、俺はもう一度、今度は下から横に薙ぐように杖を振り回して、女の顔を殴打した。
「ぎゃっ!?」
すると、手応えが違った。
豆腐でも殴ったみたいに杖が女の顔にめり込み、小気味良い骨の砕く音を携えて、その身体を吹き飛ばしたのだ。
え?
なんでさっきと違うんだ?
頭上から思いっきり殴ったさっきより効くって、どういう事だ?
「ハァ…ヒィ…」
荒い息を整えながら女を見ると、完全にぐったりとしていた。
近づいてよく見ると、呼吸はわずかにしている。
しかし、顔の半分が破壊されているので、どちらにしろ長くは持たなそうだ。
よくわからないが、勝てた、のか?
《㊐ᙓ慧鈰聮弰地縰地弰Ȱ㊐ᙓ䡑鈰碐錰朰估怰唰䐰》
あまり実感もないまま呆けている俺の頭上に、突然大きな音と共にテキストが現れる。
《됰혰0ꨰﰰ줰אּ됰혰0혰ꐰ젰אּ됰혰》
テキストは次々に変わっていき、最後には3つの選択肢が現れて止まった。
全く読めないので正確にはわからないが、どうにもこの中からどれかを選べば良さそうだ。
何かこう、大切な選択肢のようなが気がしたが…
考えてもわからなかったので、俺は適当に一番右の選択肢をタップした。
瞬間、視界が歪む。
「ッ!?」
急激な眠気に襲われて、俺はその場に倒れ込んで意識を失っていた。
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