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Human Error ②



 ※



「〈エクスプロード・フレイム〉!」


 オリビアの持つ杖に赫奕とした炎が宿り、火球となって撃ちだされる。


 逃げ回るゴブリンのすぐ後ろに着弾し、激甚な爆発を上げた。

 近くの木が根元から吹き飛び、森林を冒涜的なまでに焼き払う。

 その未だ吹き荒れる粉塵を杖に風を纏わせて振り払い、オリビアは地面を踏みしめて前進する。


「なんて逃げ足の速い…!」


 門兵の言っていた事は本当だった、とオリビアは唇を噛む。

 明らかに射線を掻い潜り、オリビアとの心理戦を凌駕する逃走経路。

 見た目はどうみてもロー・ゴブリンだが、そこにはアーク・ゴブリンに匹敵する知性があった。


 そもそも、なぜ下等なゴブリンが一匹でいるのか?

 ゴブリンとは群れで生活し、より強力な同種に従う本能を持つ。

 はぐれゴブリンなぞ聞いた事が無かった。


 だからこそ、このゴブリンには何かある。


 そう思って逃げる背中を注視すると、その身体に巻き付かれた包帯や蔓と葉で行った治療の跡が見えた。


「…人間の治療を受けた…?それとも、自分で…?ありえない…!」


 猿と同程度の知能しか持ち得ないゴブリンに、傷の応急手当など出来るはずがない。

 ならば、人間や魔族から手当されたとしか考えられない。


「どういう事なの…!?ええい、もう!」


 オリビアはいよいよ痺れを切らし、両目を見開いた。


「〈鑑定〉!」


 それは魔眼〈鑑定眼〉。

 基礎的なアクティブスキルであり、対象のステータスを閲覧する事が出来る。

 対象の耐魔力とレベル差、さらに幸運値が作用し、相当に格下でなければ成功しない。

 オリビアの鑑定レベルはわずか2であり、ほとんど使いどころのない力であったが、ゴブリン相手であれば容易に成功した。


「なにこれ…まともなスキル何も持ってないじゃない。固有スキルでも持っているのかと思ったのに…」


 固有スキルは、生まれつきや特殊な称号からのみ入手できる、レベルの存在しないアクティブスキルである。

 それに対し、Extraスキルはパッシブであり、条件も少し緩い。

 どちらも一般に生きている人間にはほぼ無縁であるが、例にもれずこのゴブリンも非常に平平凡凡、どころか平均以下の生まれたてのようなステータスだ。


 と、ふと装備している武器に目が留まった。


「え……?」


 そこには、見覚えのある名前があった。


 〈ビアラの杖〉、とだけ表記されたそれは、間違いようもなく。



「お姉ちゃんの、杖……」


 その瞬間、オリビアの中で何かが壊れた。

 理性か、知性か、あるいは善性か。


「なんで……お前が持っているの…?それは、お姉ちゃんの杖だ……お前か?お前が、お姉ちゃんを……ッッ!!」


 オリビアの持つ杖が燃え上がり、オリビアの全身から魔力が解放されて風が吹き荒れる。


「ぶち殺してやる…ッッ!!」



 ※





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