結末
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緊急対策本部設立
まずは、国の貴族たちに召集をかける。
謁見の間をしばらく緊急対策本部とし、解放。
貴族が集まったところでザッと概要を説明する。
「以上、虹色の瞳が範囲を見定める。トトス殿説明を加えていただけますか?」
半信半疑の貴族たちの顔が見える。ここで信じてもらうには、トトス殿に説明してもらおう。
トンと作戦会議の大きなテーブルに乗る白い猫。
ペッと落とされるトトス。
「初めまして。妖精のトトスです。みなさん、見えないから嘘だと思っているでしょ? でもね、歴史を調べるとわかるから。信じない人は帰って書物を見てごらん? 魔物の群れが襲ってきた話、波が街を飲み込む話。あれね、おとぎ話じゃないからね? そして、解決してきたのが虹色の瞳の持ち主とその伴侶。あ、僕もね。手伝った」
「妖精だって?」「本当にいるとは……」
ザワザワとなる会議室。間髪入れず僕は指示する。
「はい、聞いてくれ!速やかに魔導士たちは土魔法の使い手を集めてくれ。堤防を作る場所を決めるから、スコット家、スペンサー家の代表者はこちらに来てくれ。財務はキャンベル家に任せる。今回は緊急案件だ。人手に金がかかるだろう。現金が足らなくなったら、倉庫を解放し食べ物を現物支給でもして、人手を集めよ!」
「では、堤防を作る場所を決めよう。グレース、いいかい?」
「はい。よろしいですか? 山のここから噴火が始まります」
地図にあるモス火山を指差し説明を始めるグレース。
「そして、赤い光が、多分マグマだと思うのですが、この辺りから広がります。なので、まずはここに堤防が欲しいです」
森が開けるあたりを指し、両側に堤防が欲しいという。
「もう一つ問題があります。今回、森もマグマは通るので、少し、魔物が出ると思います。そこは、騎士の皆様にお願いしたいのですが」
「わかった。騎士にも連絡を入れておこう」
「では、私は川の西側に魔導士と向かいます」と、ブライアン・スコット公爵。
「では、私めは東側に魔導士と向かいます」と、アルバート・スペンサー侯爵。
大規模な工事が始まる。
騎士たちは森から出てくる魔物を狩り、溶岩が通る場所には挟むように堤防が作られていく。魔法がなかったら、トトスが魔力を発揮しなかったら、進まなかったろう。魔法で補えない土台が緩い所は人海戦術で固めていく。
「急げ! いつ噴火が起こるかわからん! 急げー!」 「おーー!」「おーー!」
いつの間にか、現場の士気も上がり、みんなやる気だ。
国ぐるみでの工事が10日間続き、やっと終わりが見えてきた頃。
「グレース、今はどう見える?」
「はい。赤く広がった光はありません。一本の筋が海に届いています。」
と、その時。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……地の底から響く地鳴り。
「あ、山が」
というグレースの声に見ると。
山肌から煙がモクモクと立ち始め、次の瞬間。
ドッゴーーーーーーーンと小石を撒きながら噴火が始まった。
「始まったわ……どうか、うまくいきますように」
グレースが胸の前で手を合わせる。僕は肩を抱き寄せ。
「うまくいくさ。見てごらん」
溶岩が流れ、次々と海へと流れ出ていくのが見える。
三日三晩溶岩は流れつづけ、海に流れ出ていった。
見ると堤防の上にのり、流れる溶岩を見る者まで現れる。
「うふふ、もう大丈夫ね。誰も噴火を恐れてはいないわ」
「あぁ、そうだね。厄災は終わった。グレースの目のおかげだね」
僕はグレースのまぶたにキスを落とす。
くすぐったそうに僕の肩に顔を埋めるグレース。
すると後ろから王様が声をかける。
「今回の功労者たちに勲章を与えないといかんな。さて、もうひとがんばりだな」
「「はい」」
僕たちは王様の執務室に集まり、あれこれ話し合うのだった。
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あれから時がたち、僕が18歳、グレースが16歳になるのを待ち結婚した。
それまで、やはり横槍はあった。それはもう、グッサグサと。
大変だったのはリトアモ国の第一王子だった。
「我が国の姫ぎみなのだから、私に優先する権利があるのではないか?」
「我が国の姫ぎみなのだから、お茶会に招くのは当然であろう?」
「我が国の姫ぎみなのだから、デビュタントはぜひ、私と!!」
もう、ありとあらゆる事でいちいち突っかかってきた。
だが、僕がグレースを離すわけがない。
驚いたのが、一番横槍を入れそうだったグレースの兄が味方になってくれたことだ。
彼曰く、
「妹が幸せなのが一番なんだ。幸せにしてくれる殿下に誰が反対などしますか」
と、言い、我が国の王子でも口で言ってわからないなら……。とか言っていた。
グレースの実家は軍事力もあるから王子といえど逆らえないんだよね〜。
トトス殿はずっと我々と一緒にいてくれた。我々と、と言うよりホワイティとかな?
「ホワイティ、いくぞ」 「ナーウ」
気が合うのかな? 今日も元気に走り回っている。時々『ヤメレ、ヤメレ』と聞こえてくるが……。
とにかく、僕たちは幸せに暮らしています。
ね?
「はい、愛しています。エリオット」
ふふん。