トトス登場
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シャーとカーテンを開く音がする。
「おはよう、エマ」
「おはようございます、お嬢様」
グーンと伸びをすると、愛猫ホワイティがトンとベッドに登ってきた。
「おはよ。ホワイティ。うふふ、今日もふわふわねー」
朝の身支度をエマに手伝ってもらったら部屋で朝食をとる。朝は、だいたい1人で食べる。
ゆっくり食べて、ジュースを飲んでいる時だった。
「……何かしら、何か聞こえる……」
耳を澄ます。
「ヤメレ、ヤメレ」
?
「ヤメレ、ヤメレ」
どこから?
「ヤメレ、ヤメレ」
ん?ホワイティ、何かと遊んでいる。
「ヤメレ、ヤメレ」
「ホワイティ!!! 何を咥えてるの!?」
すぐに追いかけ、ホワイティを抱っこする。
見ると、小さな小さな人形のようなものを咥えていた。しかも、結構ガッツリと咥えている。
「ホワイティ……。それ、放しなさい?」が、口を開く気が無いみたい。
仕方なく、指を突っ込み引き抜く。
「ヤメレ、イタイ」
「え、イタイの? ……ちょっとだけ我慢してね」
お皿に残っていたパンを見せると、すぐに口を開けるホワイティ。
ッホ。
小さな人形?をテーブルに置く。
「それで、貴方は?」
「エエト、ヒトミヲ アゲタモノ」
「まぁ、貴方が?お名前は?」
「ツケテ」
「私が?いいの?」
「ツケル、スルト、マモル。カメン、トレル、マモル」
「まぁ、でもいいの? 守ってもらう必要があるの?」
「ハンリョ、モ、マモル。メニ、ミエル、モノカラ」
「仮面が外れると、見えるようになったモノたちから守ってくれると言うこと?」
「ハヤク、ツケル、ナマエ」
ええと、ん〜〜。
「トトスで、どう?」するとほわんと光る。
「うん、気に入ったよ。トトスだよ。よろしくね」
「まぁ、お話も上手になるのね。よろしくね、トトス」
「話せるようになるだけじゃないよ、ほら」
と、エマを指差すトトス。エマ、固まっているわ。
「お、お嬢様、それ、なんです?」
「これから私たちを守ってくれるんですって、ね?トトス」
「そうだよ。小さくても魔力はでっかいからね。瞳を授けた責任もあるし」
「ん?どう言うこと?授けた責任って?」
「数百年に一度、両目が虹色の子供が生まれるって聞いたでしょ?」
「えぇ」
「その虹色の両目の子が、今まで厄災を解決してきたんだよ」
厄災……?
「厄災? 厄災……ですって? 何が起こるの?」
「その時によって違うね、間違えると国一個が消滅する」
「そ、そんな……。 例えば?」
「私が覚えているのは、ある時は魔物の群れが発生したり、ある時は波が押し寄せてきたりしたね」
その時、日本にいた頃の記憶が蘇る。
魔物はスタンピードって現象ね……本で読んだ。ゲームでもあったはず。波は津波だわ……。
そっか、なぜ私がここに転生したのかわかったわ。読んだ本やゲーム内で起こったことや、地震を知っているからどう対応したらいいのかわかるからだわ。
「今回は何が起きるの?」
「わからない。ただ、君の目がそれを見極め、伴侶が力を添えるってことぐらいしか言えない。私も魔力で手助けしたりね。魔物の群れが発生した時や、波が押し寄せてきた時は、虹色の目がどこまでそれが届くのか見極めて国民を誘導していたね」
それが私の使命なら、やるしか無いけど……できるのかしら。
不安しかない。
エマも黙って聞いていた。